旅行中の通信手段とコンタクトレスカードの普及状況 | BRITISH MADE

極私的イギリス紀行 旅行中の通信手段とコンタクトレスカードの普及状況

2019.07.31

Princes Street Gardens エディンバラ中心部に広がるPrinces Street Gardens
6月にエディンバラを拠点に、ハイランド(スコットランドの北部)とボーダー(スコットランドとイングランドとの境のエリア)、そして、ロンドンを拠点に、南のワイト島まで旅をしてきました。その16日間の様子をお伝えする前に、イギリスでの通信手段や今回の旅で重宝したコンタクトレスカードの普及状況についてお伝えしたいと思います。

ルーターより安くて軽くて便利
イギリスでの通信はSIMでラクラク

旅行中、さまざまな検索をするため、スマホに頼っている方、多いですよね。私もそうです。仕事柄、スマホが壊れたときを想定し、ノートパソコンやタブレットも持っていますが、一般の旅行者だったら、スマホだけでも十分こと足ると思います。

私が旅で最も使うのはグーグルマップです。レンタカーではカーナビ代わり。場所の確認や行先までの距離や時間も一発で確認できます。

そのほか、行き先のオープン時間や列車の時刻表、近くのティールームやカフェ、レストランなどもチェック。そんな頻度ですから、カフェやホテルでのWIFIでは到底こと足りず、旅をスムーズに進めるためにも通信のトラブルは避けないとなりません。

昨年は、日本からルーターを持っていきました。スムーズな使い心地ではあったのですが、ルーターはかさばりますし、充電などの手間も毎晩あります。

一昨年は自分のスマホがSIMフリーになっていると思い込み、SIMカードをヒースロー空港で購入したものの、SIMフリーでなかった、という痛恨のミスでSIMカードが使えず、しかたがないので、現地ロンドンでルーターを借りて対処しました。

今回は、往路はオランダのスキポール経由でスコットランドのエディンバラ空港へ。復路はヒースロー空港からフランスのシャルル・ドゴール空港経由で日本に戻る飛行機であったため、イギリス、オランダ、フランスでも使えるものがあればと探しました。
SIMカード 私が今回利用したSIMカード
SIMカードと一緒に入っていた日本語マニュアル SIMカードと一緒に入っていた日本語マニュアル。英語に不安がある人にもできるよう設定方法を日本語で説明。
すると、友人の1人が、イギリスだけでなくヨーロッパ59ヵ国で使えるSIMカードが便利と教えてくれたのです。しかも、SIMを日本で購入でき、日本語のマニュアルが付いているというではありませんか!

早速アマゾンで購入したのが、「イギリスSIM Three 30日・データ12GB/通話3000分」です。30日間有効で、4G、3Gデータ通信が12GBまで利用でき、コミコミパック+YM SIMピンセット、しかも日本語マニュアル付き!これで2350円は安いと即決で購入。ちなみに、ルーターだと1日1000円ほど。サポートなどは日本語で受けられますが、値段的には16日間で約16000円(保険を入れるともう少し高めに)になります。

SIMカードは実際に使ってみると、最初に簡単な設定はあるものの、機械音痴でスマホも検索と写真、SNSくらいしか使わない私でもそれほど難しくなく、すぐにサクサクと設定を完了。あっというまに通信ができ、電話もできました。

ただ、2回ほど通信が切れ、使えなくなってしまったことがあり、そのたびに、再度設定をし直すという手間がありました。切れてしまったとき、私は友人のルーターを借りたりしたので、トラブルもなくすみましたが、後半1人のときだったら、どうなっていたかと思います。ちなみに、このSIMカードをオランダで使った友人は、旅行中一度もトラブルはなかったそうです。

2回通信が切れた原因はいまだわかりませんが、最終的に、16日間、最後のフランスまで使うことができました。SIMフリースマホを使っている方は、使ってみる価値は十分あると思います。

昨日(7/24)、ロンドンの地下鉄内でも2020年半ばまでに4G,3G通信ができるようになるというニュースが出ていましたので、ネックだったロンドンの地下鉄車内でもやっとスマホを使えるようになるようです(最新ニュースは必ず現地でチェックしてください)。

今回の旅で最も重宝したのは
コンタクトレスカード

オイスターカード 左はロンドン全域の交通機関で使えるオイスターカード(日本のSuicaやIcocaと同様の機能を持つ)。右は今回旅行中に使用したコンタクトレス(非接触)機能付きのVISAカード
コンタクトレスカード(Contactless Card)と言っても、日本ではまだピンとこないかもしれません。日本語だと非接触カード。イギリスでは、このコンタクトレスカードがこの1年で急激に広まっていました。

日本では、現在でもまだクレジットカードを使うと、「サイン」の店が多々ありますが、イギリスでは以前からすでにサインレスは当たり前。PINナンバー4ケタの「暗証番号」による支払いが主流でした。

ところが昨年あたりから、暗証番号もサインも不要な「タッチ決済」がクレジットカードやデビットカードでできるようになりました。最初は2012年のロンドンオリンピックがきっかけで、当初はお店が中心だったこの「タッチ決済」が今は、交通機関も含め、すべての支払いの主流になってきています。

ちなみに、このような「タッチ決済」のできるカードのことを、イギリスでは「コンタクトレスカード」と呼びます。
トラムのチケット販売機 エディンバラ市内を走るトラムのチケット販売機。タッチ(コンタクトレス)で決済とPINナンバー決済のどちらもできるタイプ。
昨年6月のイギリスでは、持っているクレジットカード(AMEX GOLD)がこのコンタクトレスカードであることを知らず、すべてPINナンバーで対応していたのですが、今年は、できるだけコンタクトレス(タッチ)で使ってみようと思い、渡英前に三井住友VISAカードも作ってもっていきました。

日本でも以前からコンタクトレスのデビットカードはいろいろありましたが、デビットカードはその場での引き落としとなるため、私は、クレジットカードでコンタクトレス機能のついたカードが出てくるのを待っていました。

コンタクトレスのクレジットカードは、アメックスやイオンのほか、三井住友銀行が導入したのは2019年4月1日~。つい最近、JALカードVISAにも導入されています。
パディントン駅 ヒースローエクスプレスもコンタクトレスカードがあればチケットレス。

ロンドンの地下鉄やバス
湖水地方のバスやボートでも「ピッ」で決済

支払いは「レジでカードをかざすだけ」ですが、最も重宝したのはロンドンの地下鉄やバス、リバーバス(ボート)です。わざわざオイスターカード(日本のSuicaと同様のカード)やデイトラベルカードを買う必要はなく、コンタクトレスカードのクレジットカードを改札でタッチするだけでOKです。

オイスターカードには、1日の引き落とし金額が設定されているデイリーキャッピング(Daily Capping)システムが導入されているのですが、それと同じように1日の上限金額が、区間設定通りに引き落とされています。
リバーバス乗り場 ロンドンのリバーバス乗り場でも「コンタクトレス」で決済。

湖水地方やエディンバラのバスでも
コンタクトレスカード払いが可能

さらに、湖水地方のバスやボートでも、このコンタクトレストカードが使えたことは驚きでした。昨年7月に湖水地方を訪れたときには、バスでは現金しか使えず、しかも値段きっかりの現金を用意しないとおつりがない状態だったのに、突然コンタクトレスカードで「ピッ」とするだけで支払いが可能になりました。

つい先日(7/24)には、エディンバラ市内を走るバス(Lothian Bus)車内でも、このコンタクトレスカードが使えるようになったというニュースが出ていました。

私がエディンバラを6月に訪れたときには、バスアプリにクレジットカードをつなげる形で支払いをしないと、バス車内では、現金ではおつりなしだったのです。突然、便利になりましたね(笑)。

これはたぶん8月に開催されるエディンバラ国際フェスティバルまでに、なんとしてもコンタクトレスカード導入をしたかったのだと思います。

ちなみに、タクシーでの導入状況ですが、ロンドンのタクシーでは使えましたが、地方ではまだPINナンバーによる決済や現金のみのタクシーが多かったです。今は、Uber(ウーバー)でタクシーを呼ぶ人も多いので、Uberの場合はもちろんキャッシュレスです。
コニストン湖 湖水地方コニストン湖の小さなボート内でも料金は「ピッ」で決済。この1年で地方の公共機関でもコンタクトレス化が急速に進行中。
私が2週間で感じたイギリスの新たなキャッシュレス化は、今後さらに急速に進むと思います。次にイギリスへ行くときには地方もすべてキャッシュレスで動けるようになるのではないでしょうか。

これからイギリス旅行を計画されている方々は、イギリス国内の状況をよく調べ、なるべくイギリス人と同じような方法で支払いをしてみましょう。コンタクトレスカードはスキミングの心配があると心配する人もいるのですが、現金は盗られたらそれっきり。コンタクトレスのクレジットカードの場合、スキミングや盗難などの被害は、クレジットカード会社へ申告すれば戻ってきます。

ただ、このキャッシュレス化がちょっぴり残念なのは、イギリスの新札を使うことが少なくなってしまったことです。今回は、スコットランドで発行されている独自の通貨スコットランド紙幣を一度も見ることなくスコットランドを後にしました。それが残念と言えば、残念。ちょっとは現金を使ってみるべきだったかもしれません(笑)。

Photo&Text by 木谷朋子


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木谷 朋子

木谷 朋子

『留学ジャーナル』の編集者を経て2年間イギリスへ留学。帰国後はさまざまな国の文化や旅をテーマに、幅広い分野で取材・執筆・講演活動を行う。NHK文化センター横浜ランドマーク校で『大人のためのイギリス旅行』講座を通年で開講中。主な編著書:『ハレ旅ロンドン~湖水地方・コッツウォルズ』(朝日新聞出版)、『愛蔵版 パディントンベアの世界』(ジャパンタイムズ)、『I Love ピーターラビット』、『英語で楽しむピーターラビットの世界BOOK1、BOOK2』(ジャパンタイムズ)、『英国で一番美しい風景 湖水地方』(小学館)、『ロンドンと田舎町を訪ねるイギリス』(共著・トラベル・ジャーナル)、『イギリス留学』(三修社)ほか多数。

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