今回ご紹介するブレナム宮殿(Blenheim Palace)は、「隠れた名所」というタイトルには少しそぐわないかもしれません。というのも、イングランド・オックスフォード近郊にあるこの荘厳な宮殿は、1987年に世界遺産として登録され、常に世界中からの観光客が絶えない場所だからです。
訪問時には外装の修復工事が行われていたブレナム宮殿。 「宮殿」とついていますが王室の所有ではなく、ここは代々、モールバラ公爵家の人々が暮らしてきた場所で、現在も第12代モールバラ公爵の私邸として公爵ご家族が実際に住んでいます。
宮殿ができたきっかけは、初代モールバラ公爵がスペイン継承戦争における、ドイツ南部のブレナムの戦いで功績をあげたことです。アン女王はその功績を称え、褒賞として土地と大邸宅建設のための資金をモールバラ公に与えました。そして戦勝地であるドイツの村ブリントハイム(Blindheim)から名前がとられ、ブレナム宮殿(Blenheim Palace)と呼ばれています。ちなみに、ドイツ語の表記・発音の地名ブリントハイムをイギリス人が英語風に読んだため、ブレナムとなったそうです。
建築が始まったのは1705年で、宮殿が完成したのが1733年。つまりこの宮殿は18世紀からずっと、この地で歴史を刻み、多くの人々を迎え入れてきたのです。
この特別プライベートツアーは、公爵ファミリーが実際に生活していらっしゃるアパートメントを案内していただき、その後、オランジェリーでのアフタヌーンティ、そしてステートルームもすべてAkikoさんに日本語でガイドしていただくという贅沢なものでした。
言葉の一つ一つからブレナム宮殿へのあふれる愛が伝わってくるAkikoさんは、日本人としては初めて英語での宮殿ガイドツアーを手掛けていらっしゃるベテラン専属ガイド。英語、日本語でのガイドに加え、現在は英語手話によるガイドも勉強中だそうです。 長く深い歴史をもつ広大なブレナム宮殿について知り尽くされたAkikoさんによるガイドツアーでは、興味深いエピソードをたくさん伺うことができ、時間があっという間でした。何より、長年ガイドをされてきたからこその実体験に基づくお話しは、まるで目の前の建物や景色に、その情景が重なって浮かんでくるようでした。
今回は、Akikoさんの特別ガイドで教えていただいたことを、読者の皆様にもシェアさせていただこうと思います。
ドラマ撮影の舞台となったお屋敷は、17世紀にイギリスのハンプシャーに建てられたハイクレア城というカントリー・ハウス。でも実は、 『ダウントン・アビー』の脚本・制作を手がけたジュリアン ・フェローズは、ブレナム宮殿で半年間にわたってインタビューやリサーチをしたのだそうです。先代公爵へのインタビューも行われ、かつて実際にブレナム宮殿で働いてた人物たちのエピソードなども含め、ドラマ『ダウントン・アビー』のストーリーラインやキャラクターが誕生したのだと、Akikoさんが教えてくださいました。
そう教えてもらったせいか、デュークス・ツアー(The Duke’s Tour)という宮殿東ウィングのプライベート・アパートメントを見て回った時には、王室メンバーやハリウッドスターが宿泊した部屋や、現在も実際に使用されている、豪華で美しい陶磁器が壁一面に飾られた部屋を見ながら、ドラマ『ダウントン・アビー』の中で描かれた貴族たちの暮らしを、ヴィヴィッドに思い浮かべることができました。
なお、これもAkikoさんに教えていただいたのですが、『ダウントン・アビー』のドラマ撮影はハイクレア城で行われ、ブレナム宮殿ではなかったものの(撮影が長期間にわたることや予算的な問題もあったようです)、出演する俳優さんたちの中には撮影前などにわざわざブレナム宮殿まで勉強に来ていた人もいたそうです。
天井が高く、窓から差し込むイギリスの美しい夏の太陽の光が、3段トレーに並んだサンドイッチ、スコーン、スイーツを明るく照らして、見るだけでも眼福のアフタヌーンティー。
メニューには、いかにもイギリスらしいコロネーション・チキンやスモークサーモンが中身のサンドイッチ。これらは、それだけで満足するほどのボリュームでした。
イギリス貴族の気分を味わいながらいただくアフタヌーンティー。
また、スコーンはしっとりとしていて、手にしたときにはまだほんのり温かさが伝わってきました。こちらには、イギリス流にジャムとクロテッドクリームをたっぷり塗っていただきました。
そして、上段トレーにはひとりにつき4つのミニ・スイーツがサーブされました。どれもとてもおいしそうなのにもかかわらず、ヴィクトリア・スポンジをいただいた頃にはお腹がいっぱいに。Akikoさんが「残ったスイーツは箱に入れて持ち帰らせてもらえますよ」と教えてくださり、おかげで家族へのよいお土産にできました。
今や日本でも大人気のアフタヌーンティーについては、7代目ベッドフォード公爵夫人のアンナ・マリアが始めたとされています。その由来として、当時の上流階級での社交を兼ねた晩餐が夜の8時頃だったことが理由といわれ、昼食から夕食までの間の空腹を防ぐため、午後の3時頃から5時頃の間にお茶を飲みながらサンドイッチやお菓子をいただいたのが始まりだそうです。
Akikoさんによれば、モールバラ公のような貴族たちの社会では、現在でもディナーは午後8時頃なのだとか。そのため、今も貴族の人たちの間ではアフタヌーンティーが習慣となっているそうです。イギリスに住んでいても、アフタヌーンティーはお誕生日や何かのお祝い、あるいは大切な友人たちと楽しむ時間といった感じで、少し「特別」な機会というイメージですが、やはり貴族社会では、これが日常なのだと、今回あらためて知りました。
また、イギリスの貴族たちのランチはソーセージロール やスコッチエッグといった軽めのものが主流 ということで、これは庶民とあまり違いはなさそうです。ただし、ディナーはフランス料理、そして、午前11時にはイレブンジズという紅茶をいただく時間があるのが貴族の暮らしなのだそうです。
初代モールバラ公爵が、ブレナムの戦いの作戦図をブリタニアに差し出す場面を描いた天井画。 さて、ランチ代わりのアフタヌーンティーをいただいた後は、ステートルームツアーです。Akikoさんにガイドをしていただいたこの日、ステートルームでは「王室の訪問(Royal Visit)」と呼ばれる1896年のコンスエロ第9代モールバラ公爵夫人のロイヤル晩餐会、そしてエドワード7世とエリザベス2世のコロネーションで重要な役割りを務めたモールバラ公爵家についての展示がされていました。
ブレナム宮殿はウィンストン・チャーチル元首相の生誕地としても知られていて、彼が生まれた部屋も見ることができる。 個人的には1896年11月27日に行われたウェールズ公がブレナム宮殿を訪問した際の晩餐会のディナーテーブルの様子にワクワクしました。ちょうど、ステートダイニングルームのサルーンが、天井と壁のフラスコ画修復中だったため、普段はそこに置かれるディナーのテーブルセッティングが、この時は「緑の書斎」という部屋に置かれていたのですが、こんな部屋でいただくディナーはどんな味がするのだろうと想像するだけで楽しくなるテーブルセッティングです。
晩餐会のテーブル。奥にかかっているのがブレナムの戦いのタペストリー。 また、この緑の書斎にはブレナムの戦いのタペストリーが飾られていたのですが、Akikoさんの解説によると、ブレナム宮殿のタペストリーはスペイン継承戦争の歴史が詳細に描かれている資料としての意味もあるそうです。だからこそ、ブレナム宮殿にとっては最も貴重な存在であり、万が一、火災が発生した時は、なによりもまずタペストリーを救わなければいけないとされているそうです。そして宮殿内にいくつかある貴重なタペストリーは、常に修復作業が行われているということです。
普段、こうした歴史的建造物を訪ねても、かけられているタペストリーにどれほど重要な役割があるのかを考えたことなどありませんでしたが、単なる部屋の装飾品なのではなく、貴重な歴史的資料なのだということを教えていただきました。
ロングライブラリーには、たくさんの書籍とともに大理石で作られたアン女王の像が飾られている。 実は第一次世界大戦開戦直後の1914年9月から翌年5月まで、ブレナム宮殿は負傷兵の回復期病院となっていたそうで、当時このライブラリーには50近いベッドが並べられていたそうです。現在は、もちろんたくさんの本が並べられていたのですが、なんといっても迫力だったのが、長いライブラリーの奥にそびえ立つ、見上げるほどに大きなパイプオルガンでした。
エレガントでありながら、威風堂々とした姿のパイプオルガン。現在でも実際に演奏されているという貴重な存在。 19世紀のヴィクトリア朝イギリスを代表する、歴史上最も著名なパイプオルガン製作者の一人といわれるヘンリー・ウィルスによって作られたこのパイプオルガンは、1891年に設置されたそうです。初めは部屋の真ん中にある出窓にはめ込むように作られたとのことですが、1902年に現在の場所に移動したとのこと。
そして、このパイプオルガンは、個人が所有するオルガンとしては、ヨーロッパで最も大きなものだそうです。イギリスではヴィクトリア時代からのパイプオルガンの姿がどんどん消えて行くという状況にあり、ブレナム宮殿のパイプオルガンのように、現役で演奏されているものを見られるのは大変貴重です。
また、Akikoさんが紹介してくれたのが、第二次世界大戦中、この部屋がマルヴァーン・カレッジの寄宿生たちの寝室として使われていた時のエピソードです。というのも、20年ほど前に、当時の公爵宛に3つの小さなパイプ入りの小包が届いたのだと言います。それは、第二次世界大戦中にここに滞在していた男子学生の一人がこっそり持ち去っていったものだったそうです。本人が亡くなる時に、家族にこれをブレナム宮殿に返却するよう頼んだということで、それ以来、そのパイプは元に戻され、現在はすべてのパイプが揃っているのだそうです。 これだけ広大な宮殿内であれば、誰かが何かを持ち出しても気づくことは難しいのかもしれませんが、なんだかくすっと笑ってしまうエピソードです。
AkikoさんによるVIP プライベートガイドツアーを満喫していたら、あっという間に閉館時間が迫ってきました。それにしても、今回のツアーで、この宮殿がどれほど長い歴史を持ち、どれだけ多くの人たちの人間模様が織りなされてきたかがわかりました。もちろん、この広大で複雑な歴史をもつブレナム宮殿のほんの一部を垣間見させてもらっただけではありますが、この場所が多くの人に愛され、多くの人の暮らしを支えてきたのだということが伝わってきました。
それはやはり、ブレナム宮殿を心から愛し、その素晴らしさを丁寧に伝えてくれたAkikoさんのガイドのおかげだと思います。プライベートガイドツアーは有料で、事前予約が必要となります。Akikoさんによるプライベートガイド(日英どちらも可能)をご希望の方は、ブレナム宮殿にお問い合わせください(宮殿では、毎日無料ガイドツアーが開催されていますが、そちらは英語のみとなります)。
以前、この連載コラムで紹介したイギリスの天才造園家ケイパビリティ・ブラウンによる庭園。この美しい景観は、19世紀の人気風景画家ターナーも描いている。 ブレナム宮殿は、今回紹介していただいた建物内だけでなく、庭園、そして一千年以上前からの自然環境が保護されている世界遺産の森など、見どころがまだまだたくさんあるので、私もぜひまた訪ねたいと思います。
訪問時には外装の修復工事が行われていたブレナム宮殿。宮殿ができたきっかけは、初代モールバラ公爵がスペイン継承戦争における、ドイツ南部のブレナムの戦いで功績をあげたことです。アン女王はその功績を称え、褒賞として土地と大邸宅建設のための資金をモールバラ公に与えました。そして戦勝地であるドイツの村ブリントハイム(Blindheim)から名前がとられ、ブレナム宮殿(Blenheim Palace)と呼ばれています。ちなみに、ドイツ語の表記・発音の地名ブリントハイムをイギリス人が英語風に読んだため、ブレナムとなったそうです。
建築が始まったのは1705年で、宮殿が完成したのが1733年。つまりこの宮殿は18世紀からずっと、この地で歴史を刻み、多くの人々を迎え入れてきたのです。
専属日本人ガイドによるプライベートツアー
さて、こうした歴史を教えてくださったのは、2010年からブレナム宮殿専属ガイドを務めていらっしゃるAkikoさんです。実は幸運にも今回、AkikoさんによるVIP プライベートガイドツアーに参加させていただきました。この特別プライベートツアーは、公爵ファミリーが実際に生活していらっしゃるアパートメントを案内していただき、その後、オランジェリーでのアフタヌーンティ、そしてステートルームもすべてAkikoさんに日本語でガイドしていただくという贅沢なものでした。
言葉の一つ一つからブレナム宮殿へのあふれる愛が伝わってくるAkikoさんは、日本人としては初めて英語での宮殿ガイドツアーを手掛けていらっしゃるベテラン専属ガイド。英語、日本語でのガイドに加え、現在は英語手話によるガイドも勉強中だそうです。今回は、Akikoさんの特別ガイドで教えていただいたことを、読者の皆様にもシェアさせていただこうと思います。
『ダウントン・アビー』の生まれた場所
ところで、皆さんはドラマ、そして映画にもなった『ダウントン・アビー』はご覧になられましたか。イギリスでは「コスチューム・ドラマ」と呼ばれるこの歴史ドラマは、20世紀初頭のイギリスの大邸宅を舞台に、貴族とそこで働く使用人たちの波乱に満ちた人生を描いたもので、世界中で大人気となりました。ドラマ撮影の舞台となったお屋敷は、17世紀にイギリスのハンプシャーに建てられたハイクレア城というカントリー・ハウス。でも実は、 『ダウントン・アビー』の脚本・制作を手がけたジュリアン ・フェローズは、ブレナム宮殿で半年間にわたってインタビューやリサーチをしたのだそうです。先代公爵へのインタビューも行われ、かつて実際にブレナム宮殿で働いてた人物たちのエピソードなども含め、ドラマ『ダウントン・アビー』のストーリーラインやキャラクターが誕生したのだと、Akikoさんが教えてくださいました。
そう教えてもらったせいか、デュークス・ツアー(The Duke’s Tour)という宮殿東ウィングのプライベート・アパートメントを見て回った時には、王室メンバーやハリウッドスターが宿泊した部屋や、現在も実際に使用されている、豪華で美しい陶磁器が壁一面に飾られた部屋を見ながら、ドラマ『ダウントン・アビー』の中で描かれた貴族たちの暮らしを、ヴィヴィッドに思い浮かべることができました。
なお、これもAkikoさんに教えていただいたのですが、『ダウントン・アビー』のドラマ撮影はハイクレア城で行われ、ブレナム宮殿ではなかったものの(撮影が長期間にわたることや予算的な問題もあったようです)、出演する俳優さんたちの中には撮影前などにわざわざブレナム宮殿まで勉強に来ていた人もいたそうです。
現在も続く貴族の習慣、アフタヌーンティー
デュークス・ツアーの後は、オランジェリーにてトラディショナル・アフタヌーンティーをいただきました。天井が高く、窓から差し込むイギリスの美しい夏の太陽の光が、3段トレーに並んだサンドイッチ、スコーン、スイーツを明るく照らして、見るだけでも眼福のアフタヌーンティー。
メニューには、いかにもイギリスらしいコロネーション・チキンやスモークサーモンが中身のサンドイッチ。これらは、それだけで満足するほどのボリュームでした。


また、スコーンはしっとりとしていて、手にしたときにはまだほんのり温かさが伝わってきました。こちらには、イギリス流にジャムとクロテッドクリームをたっぷり塗っていただきました。
そして、上段トレーにはひとりにつき4つのミニ・スイーツがサーブされました。どれもとてもおいしそうなのにもかかわらず、ヴィクトリア・スポンジをいただいた頃にはお腹がいっぱいに。Akikoさんが「残ったスイーツは箱に入れて持ち帰らせてもらえますよ」と教えてくださり、おかげで家族へのよいお土産にできました。
今や日本でも大人気のアフタヌーンティーについては、7代目ベッドフォード公爵夫人のアンナ・マリアが始めたとされています。その由来として、当時の上流階級での社交を兼ねた晩餐が夜の8時頃だったことが理由といわれ、昼食から夕食までの間の空腹を防ぐため、午後の3時頃から5時頃の間にお茶を飲みながらサンドイッチやお菓子をいただいたのが始まりだそうです。
Akikoさんによれば、モールバラ公のような貴族たちの社会では、現在でもディナーは午後8時頃なのだとか。そのため、今も貴族の人たちの間ではアフタヌーンティーが習慣となっているそうです。イギリスに住んでいても、アフタヌーンティーはお誕生日や何かのお祝い、あるいは大切な友人たちと楽しむ時間といった感じで、少し「特別」な機会というイメージですが、やはり貴族社会では、これが日常なのだと、今回あらためて知りました。
また、イギリスの貴族たちのランチはソーセージロール やスコッチエッグといった軽めのものが主流 ということで、これは庶民とあまり違いはなさそうです。ただし、ディナーはフランス料理、そして、午前11時にはイレブンジズという紅茶をいただく時間があるのが貴族の暮らしなのだそうです。
王室訪問の記録をたどる
初代モールバラ公爵が、ブレナムの戦いの作戦図をブリタニアに差し出す場面を描いた天井画。
ブレナム宮殿はウィンストン・チャーチル元首相の生誕地としても知られていて、彼が生まれた部屋も見ることができる。
晩餐会のテーブル。奥にかかっているのがブレナムの戦いのタペストリー。普段、こうした歴史的建造物を訪ねても、かけられているタペストリーにどれほど重要な役割があるのかを考えたことなどありませんでしたが、単なる部屋の装飾品なのではなく、貴重な歴史的資料なのだということを教えていただきました。
図書室から持ち出されたものの行方
最後に見せていただいたのが「ロングライブラリー」と呼ばれる文字通り大きな(長い)図書室です。ここではちょうどロイヤルファミリーの写真展が開催されていました。
ロングライブラリーには、たくさんの書籍とともに大理石で作られたアン女王の像が飾られている。
エレガントでありながら、威風堂々とした姿のパイプオルガン。現在でも実際に演奏されているという貴重な存在。そして、このパイプオルガンは、個人が所有するオルガンとしては、ヨーロッパで最も大きなものだそうです。イギリスではヴィクトリア時代からのパイプオルガンの姿がどんどん消えて行くという状況にあり、ブレナム宮殿のパイプオルガンのように、現役で演奏されているものを見られるのは大変貴重です。
また、Akikoさんが紹介してくれたのが、第二次世界大戦中、この部屋がマルヴァーン・カレッジの寄宿生たちの寝室として使われていた時のエピソードです。というのも、20年ほど前に、当時の公爵宛に3つの小さなパイプ入りの小包が届いたのだと言います。それは、第二次世界大戦中にここに滞在していた男子学生の一人がこっそり持ち去っていったものだったそうです。本人が亡くなる時に、家族にこれをブレナム宮殿に返却するよう頼んだということで、それ以来、そのパイプは元に戻され、現在はすべてのパイプが揃っているのだそうです。 これだけ広大な宮殿内であれば、誰かが何かを持ち出しても気づくことは難しいのかもしれませんが、なんだかくすっと笑ってしまうエピソードです。
AkikoさんによるVIP プライベートガイドツアーを満喫していたら、あっという間に閉館時間が迫ってきました。それにしても、今回のツアーで、この宮殿がどれほど長い歴史を持ち、どれだけ多くの人たちの人間模様が織りなされてきたかがわかりました。もちろん、この広大で複雑な歴史をもつブレナム宮殿のほんの一部を垣間見させてもらっただけではありますが、この場所が多くの人に愛され、多くの人の暮らしを支えてきたのだということが伝わってきました。
それはやはり、ブレナム宮殿を心から愛し、その素晴らしさを丁寧に伝えてくれたAkikoさんのガイドのおかげだと思います。プライベートガイドツアーは有料で、事前予約が必要となります。Akikoさんによるプライベートガイド(日英どちらも可能)をご希望の方は、ブレナム宮殿にお問い合わせください(宮殿では、毎日無料ガイドツアーが開催されていますが、そちらは英語のみとなります)。
以前、この連載コラムで紹介したイギリスの天才造園家ケイパビリティ・ブラウンによる庭園。この美しい景観は、19世紀の人気風景画家ターナーも描いている。Photo&Text by Mami McGuinness*ブレナム宮殿(Blenheim Palace)
ウェブサイト:https://www.blenheimpalace.com/
住所:Oxford Road, Woodstock, Oxfordshire OX20 1UL
入場料:
宮殿・公園・庭園(Palace, Park & Gardens)
大人 £41(オンライン)/£44(現地)
子ども(3~16歳)£24(オンライン)/£27(現地)
ファミリー £110(オンライン)/£116(現地)
※このチケットは追加料金なしで12か月有効のパスです。
開館時間:
宮殿(State Rooms):毎日 10:30~16:45
庭園・パークランド:毎日 10:00~16:45
公園(The Park):毎日 9:00~18:00
※季節や特別イベントによって開館時間が変更されることがあるため、訪問前に必ず公式サイトで確認してください。
マクギネス真美
英国在住23年のエグゼクティブコーチ・ライフコーチ。オンラインのコーチングセッションで、日本をはじめ世界中に住むグローバル日本人が「本当に生きたい人生」を生きることをコーチング&メンタリングでサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物、人物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。ポッドキャスト"The Real You with Mamita"および音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。
ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』ではコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。
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