

でも、ラベンダーは、イギリス人の暮らしに最も身近なハーブのひとつなのです。

「痛かったね。これをつけたらよくなるから。」となだめるルースが手にしていたのが、ラベンダーのエッセンシャル・オイルでした。
「薬じゃなくて、ラベンダーをつけるの?」と私が聞くと、「そう、このくらいのかすり傷なら、これで十分。ラベンダーのオイルはブーツ*で買えるし。」と教えてくれました。一般の家庭で、こんな風にラベンダーが利用されているというのに、ちょっと驚いた出来事でした。

ラベンダーは、イギリス王室とも深いかかわりがあります。というのも、エリザベス一世は、悪臭とペストなどの疫病を避けるために、常にラベンダーを身につけていたそうです。また、偏頭痛の解消にラベンダーのお茶を飲んでいたことが知られています。

こうしてイギリスの人々の生活に浸透していたラベンダーですが、この国でのラベンダー栽培は、生産コストの高騰や、ライバルの生産地であるフランス産ラベンダーの勢いに押され、衰退していきました。
それが、ここ20年前後の間に、再びラベンダー栽培をする農家が現れました。多くは家族経営で、それぞれ規模も違いますが、共通しているのは、訪れた人がくつろぐことのできるカフェがあったり、畑で収穫されたラベンダーを使ったエッセンシャル・オイルやポプリ、ラベンダー・ティーなどのお土産品を売ったりしているところ。まずは地元の人々に知られるようになり、徐々に観光客が訪れるような人気のラベンダー・ファームになってきたのです。

右:ヒッチン・ラベンダーで摘んだラベンダーを使って、サシェを作ってみた。

*ブーツ(Boots)は、イギリス内にあるチェーン系の薬局。かつて日本にも出店していたことがありました。
イギリス国内で人気のラベンダー・ファーム
● ヒッチン・ラベンダー(Hitchin Lavender)
場所:Cadwell Farm, Ickleford, Hitchin, Hertfordshire SG5 3UA
開園期間:5〜9月、毎日 10:00-17:00
入園料:大人6ポンド、14歳以下3ポンド、5歳以下は無料(入場料にはラベンダー摘みが含まれる)
ウェブサイト:www.hitchinlavender.com
● サマセット・ラベンダー(Somerset Lavender)
場所:Horsepond Farm, Faulkland, Somerset BA3 5WA
開園期間:5~9月、水~日曜日 10:00-17:00
入園:無料
ウェブサイト:www.somersetlavender.com
● コッツウォルド・ラベンダー(Cotswold Lavender)
場所:Hill Barn Farm, Snow Hill, Broadway, Worcestershire WR12 7JY
開園期間:6~8月 毎日10:00-17:00
入園料:大人4ポンド、子供2ポンド(15歳以下)、5歳以下は無料
ウェブサイト:www.cotswoldlavender.co.uk
● メイフィールド・ラベンダー・ファーム(Mayfield Lavender Farm)
場所:1 Carshalton Rd, Banstead SM7 3JA
開園期間:6~9月 毎日9:00-18:00
入園料: 大人2ポンド、16歳以下は無料
ウェブサイト:www.mayfieldlavender.com
Photo&Text by Mami McGuinness
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マクギネス真美
イギリス在住18年のライター、ライフコーチ。東京での雑誌編集を経て渡英。 2004年よりイギリスを拠点に多媒体にて企画、編集、取材、執筆、コーディネイト、撮影を手がける。テーマはライフスタイル、ガーデニング、料理、人物インタビューや旅ガイドなど。メディアを問わず、イギリスの素敵なひと、場所、ものごとをひとりでも多くの方に伝えたいと活動している。『英国ニュースダイジェスト』ではイギリスの食に関するコラム「英国の口福を探して」を5年にわたり連載。イギリス料理についてのセミナー講師をしたり、文化放送、NHKラジオ、TOKYO FM等のラジオ番組に出演も。コーチングにより人生再起動ができた経験を経て、現在はライフコーチとして、人生をより良く生きたい方へのサポートも行っている。
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