日本のいちご狩りといえば、制限時間内に好きなだけいちごを食べていい、というものが多いですよね。でも、イギリスのいちご狩りは、いちごを食べてはいけないんです!
正確にいうと、味見として一つ二つをつまむのはいいけれど、お腹いっぱいになるまで食べ続けるというのは禁止。イギリスでのいちご狩りでは「摘む」というアクティビティ自体が楽しみで、摘んだいちごは持って(買って)帰るのです。
さて、このいちご狩り、イギリスでは「ピック・ユア・オウン(pick your own)」と呼ばれます。実はいちごに限らず、ラズベリーやりんごなどの果物、あるいはミニトマトやズッキーニ、玉ねぎやトウモロコシといったさまざまな野菜を、農園に行って自分自身で収穫することをピック・ユア・オウンといいます。
入場料を支払う必要はなく、その代わりに、収穫した作物について、重さを測ってその分の料金だけ支払いをするというのが一般的なシステムです。
広大な農場なので、どこに何の野菜や果物があるかの掲示板を頼りに。 イギリス国内には、このピック・ユア・オウンのできる農園がいくつかあります。青空の下、自分の手で作物を収穫するのは、なんともワクワクするもの。そう思うのは私だけではないらしく、久しぶりに出かけたファームでは、次々と車で乗り入れてくる家族連れやカップルでにぎわっていました。
農場の入り口を入ってすぐに出迎えてくれたのは、ミニトマトの一群です。「高設栽培」などと呼ばれる、腰の高さのところに棚を組んで育てる方法で作られているので、かがまずに摘むことができます。小さな赤い実やまだ緑色のものが鈴なりになって、収穫されるのを待っています。
少し奥に行くと、お目当てのいちご畑が見えてきました。広大な場所に区画を分けて、品種の違ういちごが植えられています。こちらもやはり、立ったまま摘むことができるので、後で腰痛の心配をする必要はなさそう。
少しずつ時期をずらして収穫ができるようにコントロールされているので、行った日にどこの区域で収穫してよいかを確認します。
つやつやと真っ赤に輝くいちごは、ほんとうにおいしそう。ついついその場でパクパク食べてしまいたくなりますが、我慢、我慢。まずは、よく熟れた、でも熟れ過ぎてなさそうな、真っ赤なルージュの色をしたいちごだけをそーっと摘んで、入り口で渡された紙製の手提げにいれます。熟れているだけに、ともすると箱にぶつかって実がつぶれてしまいがちなので、やさしく運ばなくてはいけません。
別のエリアにあるラズベリー畑でもたんまり収穫。そのあとは、なだらかな丘になった場所にすっくと背を伸ばすトウモロコシの一群からも、いくつか実をピックアップしました。
イギリスのベリー類といえば、やっぱりいちごとラズベリー。ついついたくさん摘んでしまう。 最後に、レジで収穫したそれぞれの作物の重さを図り、会計をします。いちごは1Kgで4.99ポンド(約750円)。スーパーで買うよりは、ほんの少し高いかもしれません。でも、新鮮な果物を自由に自分の好きな実を選んで摘むことができるのですから、お値段にも納得。果物や野菜の収穫を楽しむ、というイベント参加料に、おいしい収穫物のお土産つきと考えれば、とてもお得だといえます。
立った姿勢のままでいちごを摘むことができるので腰痛を気にせずに長時間楽しめる。小さな子どもたちはちょっと背伸びをして摘んでいるのが可愛い。 農場のオーナーによれば、イギリスでピック・ユア・オウンが始まったのは1960年代。70~80年代は特に盛んだったそうです。
当時、卸売業者に作物を卸している農家の人々は、「仲介者」を通すことにより、経済的利益が制限されてしまいました。そのため、経営が苦しい状況に追い込まれてしまっていたのです。そうした難局を突破すべく、中間業者なしで、自らの手で一般消費者に商品を売ろうと、多くの農家がピック・ユア・オウンを始めたといいます。
農家にとっては、消費者が直接農場にやってきてくれるということで、運送にかける時間や人手、経費を削減することができます。また、「お客様の顔が見える」というのは、一般の人々がどういった作物を好むのか、自分の農園にいながらにしてマーケット・リサーチができる、ということでもあったのです。
子どもにとっては(大人にも?)、野菜がどんな風に育つのかを知るよい機会にもなっているのがピック・ユア・オウンだ。 私たち消費者側にしてみても、自分の目で納得して作物を選び、その上、それを自分の手で収穫できるというのですから安心です。また、靴を泥だらけにして(雨の翌日などは長靴持参がおすすめです!)、広大な農場で新鮮な空気を吸って野菜を収穫するといった、普段の生活では味わえない体験は格別です。
たいていのピック・ユア・オウンは、イギリスでたくさんの種類の果物や野菜が収穫できる6~10月初旬ごろまでの開園となります。
今年はちょっと間に合わないかもしれませんが、来年の春から夏にかけてイギリス旅行のご予定のある方は、ピック・ユア・オウン体験を計画にいれてみるのも楽しいと思いますよ。
トウモロコシは晩夏から秋の初めにかけてが収穫期。
収穫物を畑で食べないように注意して(!)。 *以下のサイトからピック・ユア・オウンのできる農場の場所を調べることができます。
http://www.pickyourownfarms.org.uk
Photo &Text by Mami McGuinness
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入場料を支払う必要はなく、その代わりに、収穫した作物について、重さを測ってその分の料金だけ支払いをするというのが一般的なシステムです。

農場の入り口を入ってすぐに出迎えてくれたのは、ミニトマトの一群です。「高設栽培」などと呼ばれる、腰の高さのところに棚を組んで育てる方法で作られているので、かがまずに摘むことができます。小さな赤い実やまだ緑色のものが鈴なりになって、収穫されるのを待っています。
少し奥に行くと、お目当てのいちご畑が見えてきました。広大な場所に区画を分けて、品種の違ういちごが植えられています。こちらもやはり、立ったまま摘むことができるので、後で腰痛の心配をする必要はなさそう。
少しずつ時期をずらして収穫ができるようにコントロールされているので、行った日にどこの区域で収穫してよいかを確認します。
つやつやと真っ赤に輝くいちごは、ほんとうにおいしそう。ついついその場でパクパク食べてしまいたくなりますが、我慢、我慢。まずは、よく熟れた、でも熟れ過ぎてなさそうな、真っ赤なルージュの色をしたいちごだけをそーっと摘んで、入り口で渡された紙製の手提げにいれます。熟れているだけに、ともすると箱にぶつかって実がつぶれてしまいがちなので、やさしく運ばなくてはいけません。
別のエリアにあるラズベリー畑でもたんまり収穫。そのあとは、なだらかな丘になった場所にすっくと背を伸ばすトウモロコシの一群からも、いくつか実をピックアップしました。


当時、卸売業者に作物を卸している農家の人々は、「仲介者」を通すことにより、経済的利益が制限されてしまいました。そのため、経営が苦しい状況に追い込まれてしまっていたのです。そうした難局を突破すべく、中間業者なしで、自らの手で一般消費者に商品を売ろうと、多くの農家がピック・ユア・オウンを始めたといいます。
農家にとっては、消費者が直接農場にやってきてくれるということで、運送にかける時間や人手、経費を削減することができます。また、「お客様の顔が見える」というのは、一般の人々がどういった作物を好むのか、自分の農園にいながらにしてマーケット・リサーチができる、ということでもあったのです。

たいていのピック・ユア・オウンは、イギリスでたくさんの種類の果物や野菜が収穫できる6~10月初旬ごろまでの開園となります。
今年はちょっと間に合わないかもしれませんが、来年の春から夏にかけてイギリス旅行のご予定のある方は、ピック・ユア・オウン体験を計画にいれてみるのも楽しいと思いますよ。


http://www.pickyourownfarms.org.uk
Photo &Text by Mami McGuinness
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マクギネス真美
イギリス在住18年のライター、ライフコーチ。東京での雑誌編集を経て渡英。 2004年よりイギリスを拠点に多媒体にて企画、編集、取材、執筆、コーディネイト、撮影を手がける。テーマはライフスタイル、ガーデニング、料理、人物インタビューや旅ガイドなど。メディアを問わず、イギリスの素敵なひと、場所、ものごとをひとりでも多くの方に伝えたいと活動している。『英国ニュースダイジェスト』ではイギリスの食に関するコラム「英国の口福を探して」を5年にわたり連載。イギリス料理についてのセミナー講師をしたり、文化放送、NHKラジオ、TOKYO FM等のラジオ番組に出演も。コーチングにより人生再起動ができた経験を経て、現在はライフコーチとして、人生をより良く生きたい方へのサポートも行っている。
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