English Garden Diary ウィズコロナ期にイギリスの庭園を訪ねてみると

2020.09.17

イギリス国内で新型コロナウィルスの感染者が急増している事態をうけて、政府は9月14日から7人以上で集まることをを禁止すると発表しました。これは屋内、屋外かにかかわらず、全ての集会に適用され、もし従わない場合には、100ポンド(約1万4000円)~3200ポンド(約44万円)の罰金となります。

7月4日にレストランやパブ、映画館などの営業再開が認められて以降、場所によっては、ロックダウン前と変わらないほど人が密集しているところもありました。なので、ウィルス感染者が増えたというのも、ある程度予想されたことかもしれません。BBCニュースによれば、イングランド副主任医務官のジョナサン・ヴァン・タム教授が「夏の間、人々の気が緩み過ぎた」と指摘しています。

とはいえ、営業再開した多くのお店や施設は、新型コロナウィルス対策をして、入場者数の制限などもかなり厳格にしているところがほとんど。8月の夏休み中に出かけたナショナル・トラスト所有のカントリーハウスでも、広大な敷地にある邸宅と庭園とはいえ、ソーシャルディスタンスはしっかり守られていました。

今回は、そのカントリーハウス、ティンツフィールドでのウィズコロナ期における、お出かけ体験をお伝えします。

ティンツフィールドは、このコラムでもこれまで何回かご紹介したナショナル・トラストによって管理されています。ナショナル・トラストは、イギリスの景観や歴史的建築物の保護に尽力しているチャリティ団体。今年で創設125年を迎えます。オクタヴィア・ヒル、ロバート・ハンター卿、キャノン・ハードウィック・ローンズリーという3名によって設立されました。彼らは、「自然、美、そして歴史はすべてのひとのものである」という理念のもとに、イギリス国内の歴史的建造物や海岸線、カントリーサイドの景観を保護することを目指したのです。
ティンツフィールド 広大な敷地には緑が溢れている。
よく知られるところでは、自然保護活動に熱心だった『ピーター・ラビット』の著者、ビアトリクス・ポターがナショナル・トラストの活動を支援していました。湖水地方の景観を守るために広大な土地を買い取った彼女の死後、その土地はナショナル·トラストに寄贈され、現在もその管理下にあります。

今やヨーロッパで最大の自然、環境、歴史保護のチャリティ団体となっていて、560万人の会員、6万5千人のボランティア、1万4千人のスタッフを擁しています。そして、総計25万ヘクタールを超える土地、780マイルの海岸線、500の歴史的建造物、庭園、自然保護区を管理しているといいます。

その管理下にあるティンツフィールド。ここには、ヴィクトリアンゴシックと呼ばれる様式で建てられた邸宅があります。そびえ立つ尖塔が特徴的で、バースストーンと呼ばれる、やや黄色がかった石で作られています。まるで教会のような建物は、スペインや南アメリカとの交易で財産を築いた商人、ウィリアム・ギブス(1790~1875)が作らせたものです。
ティンツフィールド ヴィクトリアンゴシック様式の建物。
今回、入場には、事前にオンラインでの予約が必要でした。入場時間が決められていて、入り口に入る前に、車から予約確認をしてようやく敷地の中に入ることができます。

車を停めて、スタッフのいる案内所へ行くと、前のグループとソーシャルディスタンスをとりながら順番を待ちます。順番がくると、スタッフが地図を見せながら説明をしてくれます。政府のガイドラインに従い、敷地内での移動は、決められた3つのルートに沿って、一方通行を守るように、とのアドバイスです。また、自然の中を歩くときにも、ソーシャルディスタンスをこころがけるよう、いくつも注意書きがありました。
ティンツフィールド 入り口では、敷地内での注意書きをよく読んで。
ティンツフィールド 施設内のいたるところに、ソーシャルディスタンスを促すサインが。
「プレイトレイル」と名付けられた、子供たちのために自然素材で作られた遊具が設置されたエリアが数日前から再開されていました。ただし、遊具に触ったりしたあとは、必ず手を洗うよう、ここにも注意書きがなされています。とはいえ、実際に子供たちが遊んでいる様子を見ていると、どう考えてもソーシャルディスタンスは取られておらず、こういった部分の規制は難しいのが現実だというのを感じました。
ティンツフィールド 「プレイトレイル」で遊ぶ際の注意書き。
ティンツフィールド 自然は子供たちにとっては最高の遊び場。もちろん、大人にとっても。
とはいえ、施設への入場者の人数制限があるのに加えて、広大な敷地ということもあり、林の中を歩いているときには、周囲の人たちとの距離をことさら気にする必要がなかったのは幸いです。おかげで、緑香る風を全身に受けながら、思う存分ウォーキングができました。
ティンツフィールド 木には、18~19世紀に活動した地元出身の宗教作家で慈善家、詩人および劇作家だったハンナ・モアの詩が。
メインの見所の一つとも言える邸宅は、私が訪問したときには公開されておらず、中に入ることはできませんでした。でも、現在は再公開されているようです(ただし、今後、新型ウィルス感染者数の動向によっては、条件が変わるかもしれません)。
ティンツフィールド 邸宅は9月7日から再オープンされた。
カフェもオープンしていましたが、カフェやトイレなどの施設に行くのも一方通行が徹底されていました。カフェで飲食物を購入するにはマスクの着用が義務付けられています。屋外でのマスク着用の必要はないので、皆、お店の入り口で慌ててマスクをつけて、出てきたらすぐにはずす、という感じ。それでも、政府によってフェイスカバー着用が義務付けられる1ヶ月ほど前までは、スーパー内ですらマスクをつけている人は1割にも満たなかったことを考えると、大きな変化です。
ティンツフィールド ウィズコロナ期では、人々が触れ合わないよう、一方通行に。
カフェの隣にはオランジェリーと呼ばれるかつての温室があり、その前にはキッチンガーデンと呼ばれる家庭菜園があります。ほかにもローズガーデンがあったりと、ティンツフィールドはガーデンの美しさでも知られていますが、新型ウィルスの影響で、ガーデナーやボランティアスタッフが減ってしまい、広大な土地の庭の手入れがすべて行き届かなくなっているという現状のようです。
パースニップ キッチンガーデンには、ローストディナーに欠かせない根菜、パースニップも育っていた。
オランジェリーを望んで。
キッチンガーデンにも注意書きの看板が。
この日の体験では、ソーシャルディスタンスに気をつける、建物内ではマスクをつけるといった、今までにはない規則があるという違いだけでなく、ナショナル・トラストのようなチャリティ団体も、他のビジネスと同様に、新型ウィルスによって、その運営存続に大変な影響があるというのを感じました。実際、ナショナル・トラストでは、パンデミックの結果として今年最大2億ポンドの損失がみこまれ、1,200名のスタッフが解雇と発表されました。
ティンツフィールド ガーデナーの数が減っているとはいえ、庭は美しく整備されている。
ダリア 庭園内にはたくさんのダリアが咲いていた。
6月にナショナルトラストが委託したYouGov世論調査の調査結果によると、38%の人が、ロックダウン中に毎日最も楽しみにしていたのは自然の中で過ごす時間だと答えています。 また、回答者の33%は、ロックダウン以降、自然に対する関心が高まったと述べています。もともとガーデニングやウォーキングなど、イギリスの人々は自然に触れるのが好きだと思っていましたが、今はよりその必要性が高まっています。そんな中、こうしたナショナル・トラストの管理にある自然環境や施設が、今後、どのようになっていくのか、気になります。
モンキー・パズル 手前の木は、ヴィクトリアンゴシック様式に合わせたかのような形をした「モンキー・パズル」。
*ティンツフィールド(Tyntesfield)
ウェブサイト:https://www.nationaltrust.org.uk/tyntesfield
住所:Wraxall, Bristol, North Somerset, BS48 1NX
電話番号:+44 1275461900

*ナショナル·トラスト(National Trust)
ウェブサイト:https://www.nationaltrust.org.uk/
Photo&Text by Mami McGuinness


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マクギネス真美

マクギネス真美

イギリス在住17年のライター、ライフコーチ。東京での雑誌編集を経て渡英。 2004年よりイギリスを拠点に多媒体にて企画、編集、取材、執筆、コーディネイト、撮影を手がける。テーマはライフスタイル、ガーデニング、料理、人物インタビューや旅ガイドなど。メディアを問わず、イギリスの素敵なひと、場所、ものごとをひとりでも多くの方に伝えたいと活動している。『英国ニュースダイジェスト』ではイギリスの食に関するコラム「英国の口福を探して」を5年にわたり連載。イギリス料理についてのセミナー講師をしたり、文化放送、NHKラジオ、TOKYO FM等のラジオ番組に出演も。コーチングにより人生再起動ができた経験を経て、現在はライフコーチとして、人生をより良く生きたい方へのサポートも行っている。

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