ロックダウンを乗り切るスローな暮らし? ~スロー・ジンのすすめ~ | BRITISH MADE

English Garden Diary ロックダウンを乗り切るスローな暮らし? ~スロー・ジンのすすめ~

2020.11.19

新型コロナウィルス感染者数の増加を受け、イングランドは再びロックダウンとなりました。政府の発表では、11月5日から12月2日までの予定となっています。

10月末から冬時間になり、つるべ落としのごとく日没時間も日に日に早まって、午後4時頃には暗くなってしまうこの時期。雨も多くジメジメして、寒くて暗くて、その上、またもやロックダウン。さすがに誰もが「いい加減にして。」という気持ちになっているのを感じます。
紅葉 イギリスは霜の降りる季節になり、クリスマスが近づいていることを感じる。
でも、そんな時期を乗り切る楽しみのひとつに、今日ご紹介する「スロー・ジン」作りがあります。スロー(Sloe)は、別名ブラックソーンといい、ブルーベリーによく似た色で、それをやや大ぶりにしたような果物。プラムの一種で、ちょうど10月から11月あたりに実をつけます。果実をそのままかじると、しぶくて口の中がざらざらしてしまうほど。生で食べることはできません。なので、スーパーや青果店などで売られることもありません。でも、イギリスの人々は昔からその実を摘み、砂糖とジンを加えて「スロー・ジン」を作ってきました。
スロー 煮沸した広口の瓶を使用(イギリスでは1842年創業、キルナーのガラス瓶がポピュラー)。
スローの木はイギリスでは生垣などによく生えていて、以前ご紹介したブラックベリーと同様に、「フォラジング(Foraging)」ではおなじみの植物です。枝には鋭いトゲがあるので、実を摘むときには、ひっかかれないように一粒一粒丁寧に枝から取る必要があります。あわてず、ゆっくりひとつひとつを指先でやさしくつまむのがコツです。
スロー スローはヘッジと呼ばれる生垣や、林などに生えている。
実がよく熟すと同時に酸味が和らぐということで、伝統的にはスロー摘みは初霜が降りてから、と言われています。なので、霜が降りる日を待って、ジョギング途中に見つけてあった、スローがなっている場所にでかけてきました。
スロー スローの実。潰した中身の色はデラウェアのようで、種はやや大きめ。
ロックダウン中とはいえ、幸いなことにジョギングやランニング、散歩など、エクササイズのための外出は許されています。なのでロックダウンでも野草摘み(フォラジング)には問題ありません。むしろ、多くの人が自然にふれる時間が増えたことはロックダウンのよい副作用といえるかもしれません。

さて、スロー・ジンの作り方は、煮沸消毒した瓶にスローを入れて砂糖を加え、上からジンをいれるだけ。日本の梅酒などと同様、それほど難しいものではありません。肝心なのは、スロー・ジンを仕込んでから最低でも3ヶ月は待つということ。でも逆に言えば、3ヶ月たてば、美しい紫色に染まったスロー・ジンを楽しむことができるというのですから、それを楽しみに、長い冬、そして新型ウィルス問題の収束を待つことができるとも考えられます。
ジン クラフトジンブームもあって、イギリスではかぞえきれないほどの種類が発売されているジン。好みのものを選んで。
スロー 3ヶ月後の出来上がりが楽しみ。
英語では‘Good things come to those who wait’ということわざがあります。かつてギネスも広告に使ったもので「待つ人には良いことが起こる。」日本でいえば「待てば海路の日和あり。」に近い感じでしょうか。このことわざのように、イギリスに住む人々は寒くて暗くてジメジメした長い冬を、辛抱強く、自然や当たり前の日々の暮らしのなかに楽しみを見つけながらながら乗り越え、春を待つ術を知っています。イギリスの人々の真似をしてスロー・ジンを作りながら、自然と触れ合うこと、時間をかけて待つことの大切さを教えてもらった気がしました。

*スロー・ジンの作り方

材料
スロー:450g
グラニュー糖:225g
ジン:700ml

作り方
1. 摘んできたスローをよく洗って汚れを落とし、キッチンペーパーなどで水気を取る。
2. 1を一晩冷凍庫に入れておく。
3. 煮沸消毒した広口の瓶に2を入れ、グラニュー糖を加える。
4. 3の上からジンを注ぎ、蓋をしたら瓶を振ってかき混ぜる。
5. 3ヶ月ほど冷暗所に置いておく。
6. 5のスローを濾して、ボトルに入れ替えて出来上がり。
Photo&Text by Mami McGuinness


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マクギネス真美

マクギネス真美

英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。

ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。

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