BRITISH MADE

ヴィヴィアン・ウエストウッド、英国カルチャーの心意気に学ぶ。

2018.12.14

ヴィヴィアン・ウエストウッド。伝統の英国ファッションを破壊的なデザインで改革し、それを見事商業ベースに乗せた現役最高齢(77歳)の革命家である。注目のドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス」では、今も闘い続ける彼女自身が過去を振り返りつつ、危険で魅力的なアートワークの歴史を紐解く。まさに、英国カルチャーの真髄が説き明かされるのだ。
「過去の話は退屈だわ」の一言で始まる映画は、1971年、当時の恋人で“セックス・ピストルズ”の仕掛け人であるマルコム・マクラーレンと共に、ロンドンのキングス・ロード430番地にブティック“レット・イット・ロック”をオープンして以降、パンク・ファッションやボンテージ・ファッションで一大旋風を巻き起こしていく彼女の創生期からスタート。面白いのは、当時のメディアが挙ってヴィヴィアンをキワモノ扱いしていたこと。だが、そんなことは全く意に介さず、後に彼女は英国伝統のタータンチェックをオリジナルのタータン柄に作り替え、その柄は普通は200年かかると言われるスコットランド氏族の紋章”クラン”としての認定を異例の早さで受けることに。映画の中でも、ヴィヴィアンによるタータンは時にはタウンウェアのコートとして、また時にはパーティウェアとしても有効な超ミニドレスとして登場。それらは、伝統を打ち破ることで新たな価値観を見出そうとする”パンク”のスピリッツを受け継ぐ、ヴィヴィアンならではの業績だ。結果、彼女の服作りにあれだけ懐疑的だった英国ファッション評議会、ブリティッシュ・ファッション・カウンシルは1990~91年と2年連続でデザイナー・オブ・ジ・イヤーを授与。それは過激が伝統を蹴散らした瞬間だった。
パンキッシュなアートワークがさらに顕著なのがシーズン毎に発表するシューズ類だ。最も有名なのは、1993~94年秋冬コレクション”アングロマニア”でナオミ・キャンベルが履いてランウェイに登場し、ヒールに足を取られて転んでしまったという伝説の“スーパー・エレベイテッド・ギリーシューズ”だ。ナオミはその時履いた靴を「私の歴史よ。今も大事に持ってるわ」とコメントしているが、歩行には危なすぎる極端な上げ底と異常なピンヒールは、反面、美しいフォルムと革張りの光沢が抗い難く、女性の履いてみたい衝動を掻き立てる。「美しさを最高の高みに引き上げるためにも、女性の靴にはとても高いヒールとプラットフォームは欠かせないのよ」とはヴィヴィアンの弁である。
ドキュメンタリーでは、彼女の物作りへの強いこだわりと、ビジネスウーマンとしての素顔にも分け入って行く。ショー開幕直前まで服の仕上がりと見せ方を、モデルにフィッティングさせた上で再チェックし、容赦なくダメ出しする一方で、厳選に厳選を重ねた結果、ショーでは披露できなかった服を別個展示し、バイヤーにアピールしてギリギリまでセールスに繋げようとするしたたかさは、英国人ならではの実利主義の現れ。それが結果として、有名ブランドのほとんどが巨大企業の傘下に収まる中、単独で商売を成り立たせ、現在、世界数十ヶ国、100店舗以上を展開するヴィヴィアン・ウエストウッド社の業績に直結しているのだと思う。
1965年に知り合い、共にムーブメントを巻き起こしたマクラーレンとは1981年に決別。翌年にはイタリア人バイヤーでV.ウエストウッド社の現CEO、カルロ・ダマリオと出会い、さらに業績を拡大。そして、現在、同社のクリエイティブ・ディレクターとして主にコレクションを担っているのは、1993年に結婚した息子ほど歳が離れたオーストリア人、アンドレアス・クロンターラーだ。数々の男性遍歴とキャリアアップを意図的ではないにしろリンクさせ、今に至るヴィヴィアンが、服作りを若い夫に任せて没頭しているのは環境活動だ。2012年には熱帯雨林保護の慈善団体、クール・アースにファッションビジネスの上がり100万ボンド(約1億4000万円)をドンと寄付している。既存の常識を否定し、決して怯まず、己の信じることにのみ突き進むヴィヴィアンの生き方自体が”パンク”。その真髄に迫るドキュメンタリーは、英国カルチャーの心意気を学べる絶好のテキストなのではないだろうか!?
「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス」
12月28日(金)より角川シネマ有楽町、新宿バルト9他全国公開
監督:ローナ・タッカー
2018年 / イギリス / 英語 / 84分 / 原題:WESTWOOD:PUNK, ICON, ACTIVIST /日本語字幕:古田由紀子 / 配給:KADOKAWA
http://westwood-movie.jp
Twitter: @westwood_movie
Facebook: @WestwoodMovieJp
テキスト:清藤秀人(映画ライター・コメンテーター)


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