クリスマスに聴きたいクラプトンの5曲 | BRITISH MADE

BM RECORDS TOKYOへようこそ クリスマスに聴きたいクラプトンの5曲

2018.12.13

映画『エリック・クラプトン 〜12小節の人生〜』公開中!!

現在公開中の映画『エリック・クラプトン 〜12小節の人生〜』が、第61回グラミー賞の最優秀ミュージック映画部門にノミネートされました。授賞式は2019年2月10日(日本時間11日)、アメリカはロサンゼルスのステープルズ・センターにて開催されます。
この映画は「死んでから駄作を作られるくらいなら自分が生きているうちに」というクラプトン自身のリクエストから、彼と親交のあったリリ・フィニー・ザナックが監督を務めた彼の半生を2時間15分にまとめたドキュメンタリーです。

母親から愛されることなく、むしろ拒絶され、祖父母に育てられた幼年期を経て、心の癒しをマディ・ウォーターズやBB.キングや黒人音楽、つまりはブルースへと求めたクラプトンは、やがてイギリスの音楽シーンでめきめきと頭角を表し、その流麗なブルースギターから「クラプトン・イズ・ゴッド」と讃えられるまでの存在となります。
しかしその栄光の裏側では、数々のバンドを転々とし、何人もの女性と関係を持ち、ジョージ・ハリスンの妻だったパティ・ボイドに魅かれてしまい、ドラッグやアルコールに溺れていきます。さらには初めてもうけた最愛の息子の事故死など、クラプトンはまさしく波乱に満ちた生涯を歩んでいきます。映画では、クラプトン本人や関係者たちの証言も交えながら、そんな彼の足跡が生々しく語られていきます。

もちろんヤードバーズ、ジョン・メイオール・アンド・ザ・ブルースブレイカーズ、そしてクリームにブラインド・フェイス、デレク・アンド・ザ・ドミノスと、ソロ活動に至るまでの間に彼が在籍したバンドの映像も観ることができます。またビートルズやストーンズ、先ごろ惜しくもこの世を去ったアレサ・フランクリンの若き日の姿など、音楽ファンにはたまらない面々も登場します。また、映画の2枚組サウンドトラックもリリースされていて、彼が参加したアレサやビートルズ(もちろん「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」です)も収録されています。
そして、最後はクラプトンに多大な影響を及ぼした、ある人物からの感動的なセリフでこの映画は幕を閉じます。そのラストシーンはぜひ劇場でご覧ください。前回ここで紹介して、現在大ヒットを記録している『ボヘミアン・ラプソディ』とはまた違った感動を味わえることでしょう。

そこで今回は、クリスマス目前ということで、いま聴きたいクラプトンの5曲をリコメンドしてみたいと思います。

1.「ワンダフル・トゥナイト」

彼の代表曲のひとつに挙げられるロマンチックなバラードです。歌詞で歌われている“最高の君”とは、前述のジョージ・ハリスンの妻だったパティのこと。意外にも映画ではフィーチャーされていませんでしたが、登場パーティーの季節になると想い出す一曲です。

2.「いとしのレイラ」

これも代表曲ですね。歌詞は12世紀のペルシア文学の詩人、ニザーミー・ギャンジェヴィーによる『ライラとマジュヌーン』からインスパイアされたもの。父親に結婚を禁じられた月の王女ライラと、彼女に恋い焦がれてマジュヌーン(狂人)となってしまう青年カイスの物語に、クラプトンが、パティへの禁断の恋に身を焦がしている自身を重ねたことで生まれた情熱的な曲で、映画のなかでもフィーチャーされています。映像は、昨今『ボヘミアン・ラプソディ』で再び脚光を浴びている1985年ライブエイドからお届けしましょう。ドラムは懐かしのフィル・コリンズです。

3.「ハード・タイムス」

ライブアルバム「24ナイツ」に収録されているレイ・チャールズのカバーです。映画には登場しませんが、「俺より人生のつらさを知っている者はいるのかい?」というブルースに、映画で描かれていた彼の人生がダブります。必ずしも楽しいばかりがクリスマスではないでしょう。一人の時間、時にはこんなブルースも悪くないのでは?

4.「ティアーズ・イン・ヘヴン」

ビルからの転落事故という悲劇によって最愛の息子を失ったクラプトンが、その悲しみの淵で書いた曲です。彼がサントラを担当した映画『ラッシュ』の主題歌でした。1992年全米シングルチャート第2位を記録。また1993年にはグラミー賞最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀ポップ男性歌手賞に選ばれ、この曲を収録したライブ・アルバム『アンプラグド〜アコースティック・クラプトン』も3つのグラミー賞を受賞しました。「いとしのレイラ」のアンプラグドバージョンも含むこのアルバムは、当時、日本でもまあよく売れました。無論、映画のなかでもフィーチャーされています。悲しい出来事があると名曲を生んでしまう。そんな彼の“業(ごう)”であり“性(さが)”に、世界中が涙した一曲でもありました。

5.「ホワイト・クリスマス」

先日リリースされたばかりのクラプトンの最新アルバムはその名も「ハッピー・クリスマス」。彼にとって初のクリスマスアルバムです。
「きよしこの夜」をはじめとするクリスマススタンダードを通して、彼自身の音楽体験の足跡を味わえる一枚です。ちなみに7曲目の「ジングル・ベル(アヴィーチーを偲んで)」は、自身も長年ドラッグとアルコール依存症と戦ってきたクラプトンが、やはり生前アルコールの問題を抱え、今年4月に急逝したDJのアヴィーチーを悼んだ一曲です。映画を鑑賞した後は、本編のエンディングの“その後”とも言える、彼の最新作に触れてみてはいかがでしょうか?

映画『エリック・クラプトン 〜12小節の人生〜』は全国公開中です。メリー・クリスマス。ではまた!


Text by Uchida Masaki

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内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

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