2019.06.27

ブリティッシュ“ライク” ロバート・レッドフォード俳優引退作「さらば愛しきアウトロー」

名優ロバート・レッドフォードは、本作をもって俳優を引退する。初めて彼の出演作を鑑賞したのは20 歳の時だ。当時はオーストラリアに留学中で、暇を持て余していた。そんな中、友人M に勧められて鑑賞したのが、不屈の名作「スティング」だ。レッドフォードが着こなす、茶のチョークストライプのスーツにキャスケット姿は鮮明な印象として残っている。翻って、主演のポール・ニューマンは正統派のグレンチェックの三つ揃いで、その圧倒的にクールな出で立ちにすっかり心を盗まれてしまった。その後、レッドフォードの出演作は一通り鑑賞したが、「華麗なるギャツビー」、「明日に向かって撃て」など、映画史にその名を残す名作は今でも定期的に見直している。

さて、本作「さらば愛しきアウトロー」の主人公フォレスト・タッカーは実在した人物だ。16 回の脱獄と銀行強盗を繰り返して誰一人として傷つけなかった。それどころか、被害にあった人物が「彼は紳士だった」と口を揃えて証言している。

本作を鑑賞後、改めて”紳士”とは何ぞやと考えてみた。僕が思う紳士とは、上品で礼儀正しく、教養の高い男性である。しかしながら、昨今メディアでは、どちらかというと装いにフォーカスされており、伊達男と混同してしまっている部分がある。少々定義が曖昧になっている気がしてならない。無論、装いと教養を兼ね揃えての紳士であることは否めない。実際、本作でのレッドフォードの装いも素敵だが、僕が注目いただきたいのは、彼の品格であり、礼節を重んじる一面だ。
本編をご覧いただければ一目瞭然だが、タッカーは人の法は犯しても、自分の法は絶対に犯さない。自身がイメージする紳士とはこういった唯一無二のスタイルを身につけている。冒頭で、タッカーがスタイルについて言及する場面は刮目に値する。なぜならば、先述した紳士然り、スタイル然り、「それはすなわちこういうものである」と目の当たりにする機会が稀だからだ。

また、スタイルとは一朝一夕に完成するものではない。趣味思考、経験、環境なども各々で異なるため、形成のされ方も千差万別だ。それにより、タッカーのようなオリジナルスタイルを備えている人物はますます魅力的に映る。そのようなことを考えながら、ロバート・レッドフォードが作り上げたフォレスト・タッカーに釘付けにされていた。

俳優ロバート・レッドフォードは、最後にニクい置き土産をしてくれた。本作のタイトルは、まるで彼自身に捧げられたタイトルのように感じられ、なかなか気に入っている。挿入歌であるJackson C. Frank Blues の”Runs The Game”が流れたときは目頭が熱くなった。


『さらば愛しきアウトロー』
7/12(金)、TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー
公式サイト:longride.jp/saraba/
Photo by Eric Zachanowich. © 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
配給:ロングライド
監督:デヴィッド・ロウリー『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』
出演:ロバート・レッドフォード『明日に向って撃て!』『スティング』
ケイシー・アフレック『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『A GHOST STORY/ア・ゴ ースト・ストーリー』
シシー・スペイセク『キャリー』『歌え!ロレッタ愛のために』
ダニー・グローヴァー『リーサル・ウェポン』シリーズ 『ダーティ・グランパ』
トム・ウェイツ『コーヒー&シガレッツ』『Dr.パルナサスの鏡』
チカ・サンプター『サウスサイドであなたと』
原作:「THE OLD MAN &THE GUN」デイヴィッド・グラン
2018 年/アメリカ/英語/93 分/シネマスコープ/カラー/原題:THE OLD MAN & THE GUN/日本語字幕:齋藤敦子 提供:バップ、ロングライド

Text by Shogo Hesaka


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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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