2019.09.12

BM RECORDS TOKYOへようこそ クリス・レアの5作品が2枚組デラックス・エディションでリリース。

初秋に楽しむ「オン・ザ・ビーチ」

クリス・レアのアルバム『オン・ザ・ビーチ』を含む80〜90年代のアルバムが、最新リマスター音源を使用した2枚組デラックス・エディションとして、10月18日にリリースされるそうです。

クリス・レア 『オン・ザ・ビーチ』(1986年)
近年、日本ではSuchmos、Nulbarich、サカナクション、YOGEE NEW WAVEといった卓越したポップセンスとスキルフルな演奏力を持つアーティストが注目を浴びています。さらに、70〜80年代の山下達郎や竹内まりやに代表される“シティ・ポップ”と呼ばれた当時のポップスのアルバムが、海外のリスナーによって新たに楽しまれているという動きもあります。

前述の若手が直接的に影響されているわけではありませんが、長年の音楽ファンのなかには、彼らの音楽の向こうに、源流のひとつとしてAORを思い出す人もいるのではないでしょうか。

AORとはアダルト・オリエンテッド・ロック(和製英語。アルバム・オリエンテッド・ロックはまた別の意味)の略です。基本的にはブラック・コンテンポラリーのグラマーを白人特有のセンスで昇華することで生まれた、ソフトでメロウな曲調のポップスという括りで知られています。大人向けに洗練された、アーバンな雰囲気を醸し出している作品が多いですね。

日本で知られるAORの代表格としては、ボズ・スキャッグス、ボビー・コールドウェル、クリストファー・クロス、ルパート・ホルムズ(イギリス生まれですがアメリカ人)など多くがアメリカ人アーティストですが、クリス・レアは、イングランドのミドルズブラ出身です。

1951年、イタリア移民の父とアイルランド人の母の間に生まれた彼は、ジョー・ウオルシュ、ボブ・ディラン、ストーンズらに影響を受けて音楽を始めます。そしてバンド活動を経て、78年に『何がベニーに起ったか』でソロデビューしました。プロデュースは、最近、映画『ロケットマン』でも人気のエルトン・ジョンを手掛けたガス・ダッジョンでした。

彼の知名度を日本で決定付けた一曲は、やはり「オン・ザ・ビーチ」でしょう。
1986年リリースの同名アルバムに収録されたこの曲は、1987年に自動車のCM(MAZDAのエチュード)に使われたことで一躍有名になりました。幼少時代、テレビで観ながら、「何だかえらく“オトナ”なムードだなあ」と感じたのを今でも覚えています。日本はまだまだ暑い最中ですが、過ぎ行く夏に思いを馳せるのにはうってつけのナンバーではないでしょうか。

ハスキーかつスモーキーなシブい声色のボーカルとスライド・ギターで、彼は『オン・ザ・ビーチ』の他にも、ヨーロッパ全土でヒットした『ロード・トゥ・ヘル』(1989年)、『オーベルジュ』(1991年)などのヒットアルバムを世に送り出しました。

クリス・レア アルバム『ロード・トゥ・ヘル』(1989年) クリス・レア アルバム『オーベルジュ』(1991年)
累計アルバム・セールス3,000万枚を誇るクリス・レアですが、今回の再発では、これら3枚に、1985年の『シャムロック・ダイヤリーズ』、1987年の『ダンシング・ウィズ・ストレンジャーズ』を合わせた計5枚が予定されています。

クリス・レア アルバム 『シャムロック・ダイヤリーズ』 (1985年) クリス・レア アルバム 『ダンシング・ウィズ・ストレンジャーズ』 (1987年)
下記リンクは、クリス・レア本人がインタビューに答えたオフィシャル映像です。

方向性の試行錯誤や膵炎との闘いなどに見舞われ、一度は引退もしましたが後に復帰しています。現在68歳ですが、オフィシャル映像を見る限りでは元気そうで何よりです。今回の再発は、最新リマスターが施されたオリジナル・アルバムのDisc 1に、ライヴ音源やBサイド曲、未発表曲などを多数収録したボーナス・ディスクが追加された2枚組とのこと。また、ブックレットには本人による各アルバム制作秘話を含む最新インタビューや新たなライナーノーツも掲載されるそうです(国内盤は『オン・ザ・ビーチ』のみ。他4作は輸入盤のみ)。

ちなみに、ちょっと気が早いですが、彼のヒット曲にはこんなクリスマスナンバーもあります。

いま聴いても “浸れる”名曲の数々を擁するクリス・レア。シティ・ポップやAORが最注目のなか、この再発を機にあらためて聴いてみては。過去作の多くはすでにサブスクリプションでも楽しめますので、初秋のドライブのBGMにもお薦めです。

それではまた。

Text by Uchida Masaki


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内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

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