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ブリティッシュ“ライク” 英雄か、反逆者か、映画「オフィシャル・シークレット」

2020.08.27

映画 オフィシャル・シークレット
2003年、英国諜報機関GCHQ(政府通信本部)で働くキャサリン・ガンは、米国の諜報機関NSA(国家安全保障局)から転送されたメールを開封した。そこには、イラクへ侵攻するために国連安全保障理事会のメンバーに盗聴を行い、有益な情報を引き出すことが指示されていた。キャサリンは、戦争を強行するための大義なき英米に憤った。意を決した彼女は、NSAからのメールをマスコミにリークし世間を賑わせた。しかし、結局イラク戦争は阻止できず、最高機密情報を故意 に開示した罪で逮捕されてしまう。
本作の主演は、キーラ・ナイトレイ。言わずと知れた抜群の知名度を誇る英国人女優だ。「スター・ウォーズ エピソード1」「パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズ」「ドミノ」「プライドと偏見」「ラヴ・アクチュアリー」「わたしを離さないで」など、彼女のキャリア初期作品はわりに鑑賞したが、「オフィシャル・シークレット」のような社会派作品の主演を担うイメージはなかった。しかし、鑑賞後にそれはすっかり払拭された。迫真の芝居と共に醸す緊張感は終焉まで途切れずに保たれており、マット・スミス、マシュー・グード扮する重要なキャラクターとも呼吸が合っていたからだ。なぜこういった作風の出演が少ないのかが不思議なほどだ。それから、印象深かったのは、血の毛が多い記者エドに扮するリス・エヴァンスだ。リス・エヴァンスといえば「ノッティングヒルの恋人」のスパイク役で強烈な個性を発したウェールズ出身の俳優だ。はや20年も経過しているにもかかわらずあの怠惰なキャラクターは鮮明に覚えている。本作では、粗野ながらも真実に飢えた記者を好演しているので注目していただきたい。
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「オフィシャル・シークレット」のような政治的傾向が強い作品は、往々にしてネガティブキャンペーンに利用されてしまったり、政権批判のプロパガンダのレッテルを貼られてしまう。キャサリン・ガンの起こした行動を断片的に切り取り、コラージュして終わらせるのはあまりにも軽薄だ。なぜそうなったのかという批判的思考を働かせ、全般的に解釈しなければ本質は見えない。それは、与えられた情報を咀嚼せずに鵜呑みにすることの訓戒でもある。

先に触れた通り、内容が内容なだけに思考を働かせればより深みのあるテーマであることは間違いない。一方で、監督のギャヴィン・フッドは「抽象的でも理論的でもないこの物語に夢中になった。ものすごい状況にはまり込んだごく普通の人間の物語を通して、時代をみていくことができる」と見解を述べている。その言葉通り、この映画には人を引き込む筋の通った脚本があり、興奮させられた。少々込み入った話に寄ってしまったが、純粋にストーリーを楽しめるはずだ。
映画 オフィシャル・シークレット
最後に、本作には、チェルトナム、ロンドン、イラク、ワシントン D.C.などさまざまな都市が登場する。じつは、それらはすべてイギリスのマンチェスター、リヴァプール、ヨークシャーで撮影されている。スクリーン・ヨークシャーからの投資を受けているため、ヨークシャー州の広大な地域がロケ地として選ばれたのである。とくに、ロンドンがロケーションで使用されていないことには大いに驚かされた…そういった背景も注目しながら鑑賞いただきたい。
映画 オフィシャル・シークレット
「オフィシャル・シークレット 」
8月28日(金)、TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:ギャヴィン・フッド(『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』)
キャスト:キーラ・ナイトレイ、マット・スミス、マシュー・グード AND レイフ・ファインズ
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
2018年/イギリス/カラー/英語/112 分/シネマスコープ/ 5.1ch//
字幕翻訳:加藤真由美
Photo by: Nick Wall © Official Secrets Holdings, LLC
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Text by Shogo Hesaka


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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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