多様性あるノッティングヒルを舞台にした映画「ノッティングヒルの洋菓子店」

2020.11.27

ノッティングヒルの洋菓子店
イザベラは、親友サラと念願の洋菓子店をノッティングヒルに開店する予定だった。だが、サラは突如亡くなり店が開かれることはなかった。サラの愛娘クラリッサは、母の死に意気消沈し、バレエを辞めて同棲していた恋人とも別れてしまう。行き所のなくなったクラリッサは、疎遠になっていた祖母ミミを頼る。ミミは、サラの開店資金援助を断って以来娘とは関係が途絶えていた。クラリッサは、途方に暮れるイザベラと塞ぎ込んだミミを抱き込んで、母の念願だった店を開店させる準備を進めていく。肝心のシェフにはサラの元恋人であり、イザベラの学友でもあったミシュラン2つ星シェフのマシューが加わり、満を侍して“LOVE SARAH”は開店する。
ノッティングヒルは渾然一体の町だ。たとえば劇中に登場するポートベロー周辺には瀟洒なアンティークショップやブックショップが多数ある。探索で歩き疲れればカフェで一休みすることができる。また、アフリカ、アラブ、アジアなど、さまざまなエスニック料理の屋台も立ち並び、よりどりみどりだ。メインストリートを外れれば、表の喧噪が嘘のように静かな住宅街が広がる。一方、週末には人々が長蛇の列をなし、そこから発生するゴミが溢れている。町にそぐわないファーストフードや、いかがわしい店からの騒音もなかなかのもので、一概に美しいとは言い難い面もある。このような良否を抱えながらも、ノッティングヒルは独特のまとまりとなっている点が魅力の一つなのかもしれない。まるで国際都市ロンドンの縮図のようである。本作には、このノッティングヒルの多様性が色濃く反映されており、じつに奥深さがある。

さて、劇中ではいきいきとした女性3人が中心になって躍動する。だが、彼女たちを支え、勝るとも劣らない存在感を放つ2人の男性が印象的だったのでここで紹介したい。なお、話の筋に関係はないので、安心して耳を傾けていただきたい。1人目は、2つ星を持つ料理人マシューだ。彼がいつも着用しているのは年季の入った英国製ベルスタッフのワックスジャケット(おそらく MCGEE)だ。陽気でタフなように見え、繊細でどこか孤独さが垣間見える彼のキャラクターによく似合っていた。“地味な靴で満足するな、ルブタンを履け”と、イザベラを鼓舞する台詞は、マシューの生き方や哲学がよく表されていて説得力があった。2人目は、ミミと良好な関係を築く奇人フェリックスだ。印象深いのは、発明家の彼がジュール・ヴェルヌの“80日間世界一周”を引き合いに出しミミを魅了するシーンだ。この作品は、僕の大好きな英国人俳優ディヴィッド・ニーヴンで映画化され、このコラムでもすでに紹介している。彼は、旅についてミミにこう諭している。“現代では世界を知るのに旅する必要はない、世界が我々に近づいてくる”。教養ある彼らしい台詞で、ミミ同様に僕もフェリックスに惹かれた。これらには、脚本と監督を兼任したエリザ・シュローダーの趣味嗜好やバックグラウンドが反映されているように感じられた。各々のキャラクターがぼんやりとせず、くっきりと画面に表れいきいきとしている点が素晴らしい。
ノッティングヒルの洋菓子店 ノッティングヒルの洋菓子店
日本や英国をはじめ、世界情勢はまだまだ予断を許さない。現にこの原稿を書いている最中には、英国は再びロックダウンされている。本来ならばこの原稿を書いている時期は遅めの夏休みと称してヨーロッパに逃避行しているはずだった。次に渡航できるのは一体いつになるのかが予想もつかない。そんなタイミングでこの作品を鑑賞し、なんとも言えぬ充足感に満たされた。なぜなら、この映画には実際にノッティングヒルで起きていそうな物語が丁寧に描写されているからだ。まるでその場にいるような感覚を覚え、渡航できないうっぷんを大いに晴らしてくれたのである。小言ばかり言っても暗い気持ちになってしまう。しまいまでご覧いただいた良心的な読者の方々に、この佳作のチケットが当たる早めのクリスマスプレゼントをご用意した。内容をご覧の上奮ってご応募いただきたい。

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*キャンペーン応募期間は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございます。

ノッティングヒルの洋菓子店
公開:12月4日(金)公開予定
劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:エリザ・シュローダー
出演:セリア・イムリー、シャノン・ターベット、シェリー・コン、ルパート・ぺンリー=ジョーンズ
イギリス映画|英語|2020 年|98 分|デジタル5.1ch|ビスタ|原題:Love Sarah|日本語字幕:松浦美奈
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
© FEMME FILMS 2019
nottinghill-movie.com

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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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