ニューカッスルの義賊ここにあらわれる、映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』 | BRITISH MADE

ブリティッシュ“ライク” ニューカッスルの義賊ここにあらわれる、映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』

2022.02.24

映画 ゴヤの名画と優しい泥棒
“ニューカッスル”といえば真っ先に浮かぶのが、ニューカッスル・ユナイテッドのエースストライカーだったアラン・シアラーだ。白と黒の縦縞でお馴染みのユニフォームに袖を通し、ゴール目掛けて一騎駆けする姿は鬼神にしか見えなかった。ゴールを決めたあとの右手を掲げる姿は代名詞といっても過言ではない。

前置きが長くなったが、今回紹介する映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』は1960年代前半のニューカッスルを舞台とし、実際に起きた事件を映画化した作品だ。加えて、『キング・オブ・シーヴス』、『ベロニカとの記憶』、『家族の庭』など、このコラムで何度も紹介している超常連英国人俳優ジム・ブロードベントが主演だ。先述したシアラーがそうであったように、間もなく73歳を迎えても衰えることを知らず第一線で活躍しているジム・ブロードベントの最新作に注目いただきたい。
本作を鑑賞するまで、ケンプトン・バントンはもちろんのこと、英国だけではなく世界をあっと言わせたこの事件について皆目知らなかった。実際のケンプトン・バントンを調べてみたが、劇中でのジム・ブロードベントとよく似ているのには驚かされた。パイプを燻らせ皮肉を言い放つ頑固一徹で、3つボタンジャケットの下一つ掛け、ウエストコートの上からブレイシーズを引っかけるスタイルもユニークだ。また、夕食をディナーではなくティーと言う“ジョーディ”ならではの独特の言葉遣いも楽しめる。
映画 ゴヤの名画と優しい泥棒 映画 ゴヤの名画と優しい泥棒
ケンプトン・バントンは、一昔前ならどの家庭にもいそうな頑固親父だ。口は悪いが筋が通っており、地ならしをせずに正論を投げつけてしまうために煙たがられてしまう。しかし、対局的に物事を見る視点や知性も備えており、それを際立たせる裁判所での台詞は白眉だ。世のため人のために悪事を働いた義賊ロビンフッド、宋江、鼠小僧などを彷彿させる 。

本作は2021年9月22日に亡くなった英国人監督ロジャー・ミッシェル最後の長編映画作品である。代表作は名前を聞いて知らぬ者はいない『ノッティングヒルの恋人』だが、本作や『ブラックバード 家族が家族であるうちに』など、晩年にかけてこれまでと違った作風が増えていく中での訃報は非常に残念で仕方ない。10代のころからビデオが擦り切れるほど鑑賞した『ノッティングヒルの恋人』はDVD、Blu-rayとフォーマットを変えて手元に残っており、年に一度は必ず鑑賞する映画の一つだ。ロジャー・ミッシェルに哀悼の意を表す。
映画 ゴヤの名画と優しい泥棒
『ゴヤの名画と優しい泥棒』
https://happinet-phantom.com/goya-movie/
2022年2月25日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
監督:ロジャー・ミッシェル『ノッティングヒルの恋人』『ウィークエンドはパリで』
出演:ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド、アンナ・マックスウェル・マーティン、マシュー・グード
2020年|イギリス映画|英語|95分|原題:THE DUKE|シネマスコープ|5.1ch
日本語字幕:松浦美奈
後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
©PATHEPRODUCTIONS LIMITED 2020
Photo&Text by Shogo Hesaka


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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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