臆病者の英国貴族が世界を股にかけるドラマ『80日間世界一周』 | BRITISH MADE

ブリティッシュ“ライク” 臆病者の英国貴族が世界を股にかけるドラマ『80日間世界一周』

2022.10.27

臆病者の英国貴族が世界を股にかけるドラマ『80日間世界一周』Photographer: Joe Alblas / Design by TEA Entertain | © Slim 80 Days / Federation Entertainment / Peu Communications / ZDF / Be-FILMS / RTBF (Télévision belge)– 2021
この物語の主人公である英国貴族フィリアス・フォッグは、紳士クラブ“改革クラブ”で同じメンバーと出会い、同じ席に座り、同じランチを食べ日々を過ごしている。冒険はおろか、そもそも困難に直面する状況に身を置きたがらない。ある日、80日で世界を一周できるという話題がクラブで持ち上がり、突如フォッグは旅に出る決意を表明する。それに引き寄せられるかのようにフランス人ジャン・パスパルトゥーが従者として同行することになり、フィリアスと同じ“改革クラブ”のメンバーであり、幼馴染でもあるバーナード・フォーテスキューの娘アビゲイル・フィックスまでもが記者として旅に同行することになる。大旅行は何の前触れもなくはじまっていく。

映画版『80日間世界一周』の魅力については6年前に紹介している。ドラマ版では、映画版やジュール・ヴェルヌの原作とは異なった面白さが随所に見られたため、あらためて紹介にいたった。原作に近い世界観の映画版と比べ、ドラマ版はまったく別物と言っても過言ではないほど手が加えられている。もっとも明確な差が現れているのは主人公フィリアスだ。原作ではサヴィル・ロウに屋敷を構える洒落者で、シャーロック・ホームズを彷彿させるかのような冷静沈着で寡黙な紳士だ。ドラマ版のフィリアスは優柔不断で自信のなさが前面的に表れている。臆病者とも揶揄され、本当に世界を一周できるのか?と訝しみながら共に冒険しなければならないのがとかく心臓に悪い。他には、原作では男性の刑事であるフィックスが、大きく構成が変わりヒロイン、アビゲイル・フィックス嬢として生まれ変わっている点も興味深い。このように、キャラクターの変化やストーリー展開も含めて映画版や原作との差に驚かされ、ときに予想を覆す裏切りに合うのがなかなか面白い。ドラマは全8回で、1話につきひとつの地域が舞台になっている。そのため、映画版や原作では描かれなかった地域にも新たな物語が生まれ、厚みが増しているのも魅力のひとつだ。
臆病者の英国貴族が世界を股にかけるドラマ『80日間世界一周』
臆病者の英国貴族が世界を股にかけるドラマ『80日間世界一周』
臆病者の英国貴族が世界を股にかけるドラマ『80日間世界一周』
ラッキーマンであるフィリアスが、人生経験豊富なパスパルトゥーとお転婆アビゲイルという両翼に支えられる様相はドラクエや水戸黄門を見ているようで微笑ましい。まったくバランスが整っていないようで後半に連れて徐々に連携を見せ始める。そして、各々が背負っている十字架や心のわだかまりが露わになっていく。これが旅と掛けられて浄化されていき、クライマックスを迎えるころにはゲームの終わりのような感覚を覚えどこか寂しい気さえした。

そんな本作の主演御三方は、フィリアス・フォッグを演じたデヴィッド・テナント、ジャン・パスパルトゥーを演じたイブラヒム・コーマ、そして、アビゲイル・ フィックスを演じたレオニー・ベネシュ。残念ながら鑑賞するまではまったく知らない俳優だった。唯一知っていたのがアビゲイルの父であり、フィリアスの親友フォーテスキューを演じたジェイソン・ワトキンスだ。彼が主演のドラマ『マクドナルド&ドッズ』は英国のバースを舞台にした刑事モノで、現代のコロンボと評されている佳作だ。機会があればぜひご覧いただきたい。

コロナウィルスとの共存もはや3年になる。ウクライナ危機を発端に今度は急激な円安ときた。本作は、海外旅行に尻込みする中で、その憂さ晴らしにもってこいだった。旅を契機にみるみる人が変わっていくフィリアス・フォッグを見ていると臆病者は過去のものだ。鑑賞後には、自身も久々に旅の感覚を味わいたいと庶幾わずにはいられなかった。支離滅裂だが、そんな理由から2023年は海外に出ることを私もここに宣言しよう。じつは早くも本作は続編の製作情報が入っている。とどまることを知らないフィリアス・フォッグの新たな冒険が楽しみでならない。
臆病者の英国貴族が世界を股にかけるドラマ『80日間世界一周』
『80日間世界一周』
https://ex.star-ch.jp/special_drama/MRRyk
【製作総指揮・脚本・クリエーター】アシュレイ・ファロア(『時空刑事1973 LIFE ON MARS』)
【監督】スティーヴ・バロン(『コーンヘッズ』)ほか
【原作】ジュール・ヴェルヌ「八十日間世界一周」
【音楽】ハンス・ジマー(『 DUNE/デューン 砂の惑星』)ほか
【出演】デヴィッド・テナント(『ドクター・フー』『ステージド 俺たちの舞台』シリーズ)、イブラヒム・コマ(『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』、 レオニー・ベネシュ(『白いリボン』)、ジェイソン・ワトキンス(『ザ・クラウン』)、ピーター・サリヴァン(『 『ボルジア家 愛と欲望の教皇一族』)ほか <配信・放送表記>
【配信】「スターチャンネルEX」<字幕版>にて配信中
【放送】「BS10 スターチャンネル」
【STAR1 字幕版】 10月6日(木)より 毎週木曜よる 11:00 ほか ※10/2(日)字幕版 第1話 無料放送
Photo&Text by Shogo Hesaka


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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。毎月第三土曜日KRYラジオ「どよーDA!」に出演中。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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