Hitomi Kiltmaker が解説!色鮮やかなタータンの世界 | BRITISH MADE

スコティッシュ・タータンをめぐる旅 Hitomi Kiltmaker が解説!色鮮やかなタータンの世界

2022.10.25

タータンが誕生する織機

スコットランドのタータンに魅了され、本場スコットランドまで伝統衣装のキルトの作り方を学びに行った野村瞳さんへのインタビューシリーズ。前回の記事では、よく間違われる「キルト」と「タータン」の違い、キルトの歴史や作り方など、さまざまな話を聞かせていただきました。最終回は、色鮮やかなタータンの世界へご案内!その種類や織り方についてご紹介し、最後に野村瞳さんのキルトメーカーとしての想いを語っていただきました。

野村 瞳 Hitomi Nomura
スコットランドの首都エディンバラにあるキルトメーカー「Scotclans」でキルトの伝統的な手縫いの縫製を学び、伝統衣装キルトを制作する作家。スコットランドで古来から伝わる「スコティッシュ・タータン」を日本でも多くの人に知ってもらおうと Hitomi Kiltmaker を創立。さらに、タータンやキルトを通じて、スコットランドの魅力も配信している。

主に4種類に分けられるタータン


ータータンにはどんな種類がありますか。

野村:細かく分けていくと8種類ほどありますが、主な4種類をご紹介します。まず1つ目は「ロイヤル・タータン」。イギリス王室が所有するタータンで、主に王室、王族メンバーのために作られたものです。ロイヤル・タータンには、王族の方々のみに着用が許されているタータンと、そうでないタータンがあります。最もポピュラーなこの「ロイヤルスチュアート」タータンは、私たちも使うことのできるロイヤル・タータンとして有名です。
ロイヤルスチュアート
ブラックウォッチ
野村:2つ目が「ミリタリー・タータン」。名前の通り軍隊が着用するタータンです。そのなかでも一番有名なのがこの「ブラック・ウォッチ」。スコットランドの歩兵隊が着用していたことから「黒い見張り番」=ブラック・ウォッチという愛称で親しまれるようになりました。
ースコットランドの兵隊さん、みんなかっこいいですね。

野村:そうなんですよ(笑)ハイランドの軍事施設を訪れた際に、実際にキルトを着た連隊の方をお見かけしましたが、こんなにかっこいい軍服があって良いのか!と興奮しました。ミリタリー・タータンは、このブラック・ウォッチをベースにして、キャメロンやゴードンといった他のミリタリー・タータンが作られています。マッケンジーもですね。スコットランドにはいろんな軍隊があって、各連隊が独自のタータンを持っています。

野村さんが作ったストラスドンのキルトスカート

野村:3つ目が「ディストリクト・タータン」と言って、各地域に伝わるタータンです。

ー野村さんが作ったキルトスカートにもディストリクト・タータンが使われていますよね。

野村:そうです!「ストラスドン」もディストリクト・タータンですね。可愛くて、本当にキレイなタータンなんです。エディンバラ・タータンもありますし、グラスゴー・タータンもあります。イングランド南西部コーンウォール地方のコーニッシュナショナル・タータンもディストリクトタータンの1つです。

コーニッシュ・タータン © tiffany terry

野村:スコットランドの各地域はもちろん、アイルランドにもタータンがあります。アイルランドには全部で32県があるんですが、各県それぞれにタータンがあります。また、コモンウェルス(イギリス連邦)の国々も、地域・国のタータンを持っていることが多いです。
ブリティッシュメイド 青山本店に飾られているクラン・マップのポスター

野村:最後にご紹介するのが、クラン・タータン、氏族が持っているファミリー・タータンです。ブリティッシュメイド 青山本店に「クラン・タータン」の大きなポスターがあったと思います。クラン・タータンはスコットランドの名字を持つ家庭に受け継がれるタータンです。ハイランダーの人々は家族単位よりも氏族での繋がりを大切にする民族でした。その氏族間の絆は、現代にも受け継がれ「クラン・ソサエティ」という、クランで集まるイベントが開催されています。皆、同じクランのタータンを着て集まるそうです。アンダーソン家はアンダーソン・タータンのキルトを着用し、マクファーデン家はマクファーデン・タータンのキルトを着て集まります。

以上が主なタータンの種類です。その他には、教育機関や会社が持っているタータンがあります。スコットランドの大学、スポーツチーム、ファッションブランド、百貨店など、多くの組織や機関が独自のタータンをデザインし、スコットランド・タータン協会に登録しています。


ーそんなにたくさんタータンがあったら、柄が被ったりしないのでしょうか。

野村:これが被らないみたいなんですよね!線が1本違えばオリジナルタータンとしてたぶん登録できるので……。似たタータンっていうのは、すごくたくさんあると思います。

私はエディンバラ城のお土産屋さんで働いていたことがあるのですが、ある時クラン・タータンのキーホルダーが一度に50種類くらい入荷した時がありました。その日のうちに、すべてのキーホルダーをAからZの順番で陳列しなければならなかったのですが、スコットランド・タータンに特に興味のないスタッフの子たちは、マッケイ、マッケンジー、マッキノン……といた音も綴りも似かよったスコットランドの名字を並べていくうちに発狂して、「I’m gonna crazy!(頭がおかしくなりそう!)」と苦しんでいました。私にとってはこの上ない幸せな作業で、おかげでたくさんのクラン・タータンを勉強することができました。でも、タータンを好きじゃない子には苦痛ですよね(笑)


国によって人気のタータンが違う!?


ータータンで人気の色というのはあるんですか。

野村:スコットランド人を祖先に持つアメリカ人、オーストラリア人、カナダ人の方のほとんどは自分のファミリーネームのタータンを買っていきます。ファミリーネームを持たない方は、お好きなタータンを自由に選んで買っていきます。

日本の方は、奇抜な色よりも淡い色を好んで買われていました。中国の方は、縁起がいい色として知られる赤が好きなので、赤いタータンをよく選んでいました。ドイツの方は、そんなに鮮やかなタータンは好きではなく、シックな感じのものを選んでいました。国民性によって人気のカラーに違いはあったかもしれません。

スコティッシュヘザー

ー 野村さんが作ったキルトのなかに「スコティッシュヘザー」という人気のものがありましたよね。

野村:スコティッシュヘザーは去年すごく人気で、一番最初に完売しました。たくさんのお客さまにも「こういう紫のタータンは今までなかった」と言っていただきました。深い落ち着いた色合いの紫色で、アクセントに白いラインが入っていて、上品に着ることができます。


「タータンチェック」とは言わない!?


ーアザミの絵が入っているタータンを見たことがあります。これもタータンとして正式に登録されているのでしょうか。

野村:絵が入っている場合、それはタータンではないと思います。スコットランドタータン協会のルールとしては、「2色以上の色を使用し、直角に交わるタテ糸とヨコ糸の色数が同じもの」と決められています。これらが守られていれば正式に登録することができるとされています。

ーでは、「タータン」と「タータンチェック」について。雑誌などメディアでも、タータンとあったり、タータンチェックとあったりしますが、何が違うでしょうか。

野村:私はイギリスと日本のことしか分からないのですが、おそらく「タータンチェック」と呼んでいるのは、日本だけだと思います。チェックには格子柄という意味はあるんですけど、タータンチェックは和製英語なのかなと。イギリスでは、チェックというと“確認する”という意味で使うことのほうが多いかもしれません。

ー例えば、私たちが「ギンガムチェック」と呼ぶような柄に対して、イギリスでは“チェック”を使わないということですか。

野村:タータンとタータンチェックの違いについて、スコットランドの知人に聞いてみたところ、タータンとは「タータンとしてスコットランドのタータン登記所に登録されているもの」のことであり、チェックとは「登録されていない、何の意味を持たないチェック柄のこと」であることが分かりました。

また、「タータンチェックって言う?」と聞いてみると、「言わない」と。タータンは別もので、チェックシャツとは言っても、タータンチェックシャツとは言わないよ!とのことでした。


タータンの織り方


ータータンは同じ柄がくり返し並んでいますが、どこからどこまでが1つの柄ですか。

野村:この記事のはじめに紹介したロイヤル・スチュアート・タータンで説明します。縦の柄と横の柄がちょうど重なり交差してできる正方形から、斜め右下にある正方形に当たるまでのひと区画を1セットと呼びます。この1セットを続けて織っていくことでタータンの生地ができあがります。ロイヤル・ステュアート・タータンはシンメトリカル・タイプのタータンで、上下左右対称となっています。時々アシンメトリカル・タイプ、非対称のタータンも見ることができます。

織機にセットされる糸

野村:タータン工場に行くと、各タータンを織るための糸の順番を記した指示書があり、その順番に沿って職人さんたちが「ブラックを4本、そのあとブルー4本、ブラック4本、ブルー25本……」といった感じに何百本もの糸を針に通してタテ糸を作ります。次にし織機に作ったタテ糸をを設置して、今度はヨコ糸を織っていきます。簡単にいうと、これがタータンの作り方です。



スコットランドやタータンの「夢中ボタン」を押したい!


ー日本の皆さんのタータンへの反応はいかがですか。

野村:この活動を始めて5年ちょっとですが、いろんな方に出会いました。タータンのことを私よりもよくご存じな方、ちょっとだけ知っている方、全然知らなかったという方などさまざまです。

スコットランドのお土産屋さんで働いていた時、たくさんの日本人観光客の方にお会いしました。皆さんスコットランドに旅行されるぐらいですから、ある程度の基礎知識はお持ちで、私も「じゃあ、もう少し深いお話も……」とタータンについて解説させていただきました。「このクラン・タータンにはこんな歴史があって……」という感じで。楽しそうに聞いてくださる方がほとんどで、とても嬉しかったんですよね。旅行後に日本からイギリスのお店にお礼の手紙を送ってきてくださったお客さまもいらっしゃいました。

スコットランドに2年滞在して、今の私は何ができるんだろうと考えていた時に、タータンの紹介をするお仕事はすごく自分に合っているし、何より私自身が楽しいことに気付きました。皆さんがなんとなく知っているスコットランド・タータンのことを、私がちょっとその扉を開くことで、皆さんが夢中になって聞いてくれる。私が皆の「夢中ボタン」を押していけたらいいなと、使命感のように感じていたのかな。私がきっかけで「スコットランドもタータンも面白い」と、そこからもっと夢中になってくださる方がいれば嬉しいし、旅行の間だけ楽しんでいただいてもいいし。本当にどんな形でもいいから「夢中ボタン」を押せたらいいなと。


ー私もタータンのことをちょっとずつ調べてみたいという気持ちになっています。私の「夢中ボタン」、押されましたね(笑)

野村:ちょっとでもスコットランドやタータンを知ってもらえたら嬉しいですし、ハマってくだされば、仲間が増えた感じがしてすごい嬉しいです。私が嬉しいだけかもですね(笑)

私がタータンの解説をしている時、自分では気づかないんですが、すごくわくわくしているみたいなんです。観光客の方から「お姉さんがすごく楽しそうに話すから、こっちまで楽しくなってきちゃった」とよく言われました。この先も私が楽しい!と思うことを多くの方へ伝染させていけるといいのかなと思っています。


スコットランドと日本の架け橋でありたい


ー最後の質問です。これから野村さんがしたいと思うことを教えてください。

野村:スコットランドにいる時からキルトスカートは作りたいと思っていました。日本の方は、タータンが大好きですよね。2021年に初めて、ブリティッシュメイドのイベントでお客さまと直接お会いできる機会を設けていただき、いろんな方が話しかけてくださって、皆さんタータンがもうすでにお好きなんだなってよく分かりました。「どんな本を買ったらいいですか?」「あの本がおすすめですかね」「あ、それはもう持ってるんですよ」っていう会話もありました(笑)

でも、ヒトミ・キルトメーカーを立ち上げなかったら、こんなにタータンを好きな人たちに出会えなかったのかと思うと、このプロジェクトをスタートさせて良かったと思います。そういうお客さまに私も刺激されながら、いろんな活動ができたらいいなと思っています。

ずっと思っているのは、スコットランドと日本の架け橋になれたら……アンバサダーになりたいんです!アンバサダーの役割を果たし続けたい。

縁あって出会えた方に、タータンの魅力を知っていただき、好きなタータンを見つけていただき、調べるきっかけにしていただいたり、スコットランドに旅行していただくだけでもオッケーです。私に話しかけてくださるだけでもいいですし、いずれも楽しい時間を持っていただけるような“きっかけ作り”ができたらいいなと思います。




3回にわたりお届けした、野村瞳さんへのインタビューシリーズ。いかがでしたでしょうか?本コラムが、皆さんの「夢中ボタン」を押すきっかけになりますと幸いです。

11月末より開催予定の「BRITISH COLLECTORS MARKET POPUP」では、ヒトミ・キルトメーカーのキルトスカートを青山本店、渋谷店、名古屋店、京都店、札幌店の5店舗でお取り扱いいたします。詳細は後日掲載させていただきますので、乞うご期待ください!

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