2019.06.04

Little Tales of British Life 幸せなドライブin UKを求めて その3/3 ー事前に察知するトラブルのニオイー

前回までの「幸せなドライブ in UK を求めて」その1その2では、「最適な交通手段の選び方」 「ヨーロッパは近い」 「イギリスでのドライブ」 「受け取り時の注意点(自動車保険)」などについて述べました。シリーズ最終回の今回は「気を付けたい運転事情の違い」 「当方のレンタカー経験」 「トラブルのニオイ(周囲の雰囲気を嗅ぎ取って事故を抑止)」 について述べます。あくまで当方の経験の範囲内に過ぎませんが、読んで下されば、イギリスでのドライブもイメージし易くなるのではないかと存じます。

気を付けたい運転事情の違いと主体性

さて、エンジンを始動し、ハンドルに手を掛ける段になっても一呼吸おいて、少々お待ちください。イギリスの運転で気を付けたいことを申し上げます。まず、イギリス人の運転のマナーは日本よりもやや紳士的です。歩行者同士のやり取りで“after you”と手を差し伸べるように、車同士でも道を譲ってくれますし、クラクションを鳴らすことはおろか、鳴らされることも稀だし、煽り運転などはほとんど経験していません。ルールや標識に基づいて走っていれば、イギリスのドライブは日本よりも格段に快適です。

しかし、日本との違いもあるので、あえて述べるとすれば、次の4点を挙げたいと思います。①踏切の一時停止が不要、②ラウンドアバウト、③地面の文字の指示に従えば安全、そして④道路の真ん中にアイランドがあります。まず①について、踏切で一時停止すると後続車に追突されることがあります。実際、当方の知人(日本人)は5年間のイギリス滞在期間中で最初の1年間に、踏切で二度追突されました。ぶつかってしまった理由は、「日英の交通行政の違い」から、と考えられます。イギリスの踏切では、ほとんどの場合一停止の義務はありません。慎重過ぎるルールの順守に依存した日本式の交通行政の影響を受け、日本での習性そのままにイギリスで運転していると事故の原因になりかねないという話です。イギリスでは運転者の主体的な判断を尊重しているので、無駄なルールを作らないのですね。Give wayとかYieldという標識の無いところで、一時停止するとかえって危険です。 
この画像からイギリスの交通事情を説明して下さい。と、質問するのはイジワルでしょうか? 白抜きの文字Cを赤い丸で囲った印がコンジェスチョン・チャージ(混雑税)の課せられる域内であることを示します。イギリスの信号は赤から青に変わる前に黄色が1~2秒間点灯します。この間にクラッチを繋いで始動準備します。黄色のあみ目模様でペイントされた交差点内では絶対に駐停車をしてはなりません。違反横断など歩行者の違反が証明されない限り、後ろから追突されても、ほぼ100%が停止車輛の責任です。また、もし、車道で横断する歩行者をはねてしまったり、歩行者に道を譲らなければならない状況で追突などの事故が発生したりすれば、その責任は判断を誤った歩行者に振りかかる可能性があります。
交差点内も赤の二重線でしたが、この線は駐停車が絶対禁止区間を表わします。路側に寄って少しの時間でも停めようものなら、どこからともなくトラフィック・ウォードン(交通監視人)が現れて「即移動、もしくは罰金」の警告を受けます。CCTV(防犯カメラ)に証拠が残るため、数分間停車しただけで、警告も無しに数日後に罰金のレターを貰ったという知人もいます。ご存知の方も多いと思いますが、イギリスの行政はプライバシーよりも監視システムを優先しています。そして、ルール作りの背景が明確で、理論的です。ルールは取り締まるための基準と言うよりも、責任範囲を明確にするための目安になっています。

②のラウンドアバウトも同様に運転者の主体性に委ねられた判断が求められます。ちょっとした油断や躊躇が最悪の事態を招くことがあるので、High Way Codeを良く読んで頂き、且つyoutube映像などでラウンドアバウトの実際の運用を確かめた上で、現地でご対応されることをお薦めします。出口の方向が判らない場合は、行き先が判るまで右側の方向指示器(indicator)を点滅させながら、ぐるぐる回れるところはラウンドアバウトが、アバウト(和製英語の「おおざっぱ」)で好ましい点です。ちなみに、ラウンドアバウトから出る方向を時計の文字盤でガイドするナビゲーターもあります。 “Take the exit to 2 o’clock(2nd/3rd Exit)”など。 余談ですが、ガイドする音声を有名人などに替えられる機能を持ったナビもあります。当方は、エリザベス二世女王の御声を好んで利用しております。
How to drive on roundabouts in UK(英語)

また、③地面に “SLOW” とか、制限スピード “⑳” などと白ペンキの文字で表示されていたら、減速して下さい。もちろん、急な減速は禁物です。ポンピングブレーキで後続車に減速を伝えながら、カーブ、横断歩道、幅員減少など前方の変化に備えるのです。イギリスの道路行政では「先に起こる変化を運転者に前もって示唆している」のです。

自己責任、裁量、主体的思考で道路の孤島アイランドも使いこなす

④横断歩道が無くても、中央分離帯には歩行者が一時的に安全を確保するために、縁石で囲まれたスペース、アイランドが設けられています。このアイランドのシステムは旧イギリス租界の香港以外んも、ニュージーランド、オーストラリアなどのイギリス連邦諸国に行くと見られます。道路の中央に設置されたアイランドの機能は、双方向の道路を分離するだけでなく、歩行者の避難所にもなります。横断歩道が無くても、このアイランドで通行する車をやり過ごしては、安全を確認して自己責任で道路を横断します。ただし、アイランドで横断者を見つけた時に運転者として気を付けたいことがあります。ゼブラクロッシング(横断歩道)が無い限り、アイランドに立つ歩行者に道を譲ろうとして停車すると、かえって事故のリスクを伴うことになることりかねません。アイランドの歩行者は車優先路を走るアナタの車をやり過ごす義務があるのです。しかし、停車するはずのないアナタの車が停まれば、後続車は追突してしまう可能性があります。もちろん、緊急停車は例外ですし、後続車がまったく見えない場合は自己責任の範囲でご判断下さい。
歩行者の安全地帯、アイランドです。ゼブラクロッシング(横断歩道)が無いので、車道を渡る歩行者は車を優先しなければなりません。歩行者と車の接触事故が起きても歩行者の責任の方が重くなることがあります

一方、必ず停車しなくてはならない状況もお伝えします。横断歩道の両脇に丸い白熱灯(ベリーシャ・ビーコン)が点滅していることがあります。そこで歩行者が渡ろうとしていたら、歩行者が優先です。もし、歩行者を無視してゼブラクロッシングを通過したら、当局に通報されて、罰金刑に処せられることがあります。ベリーシャ・ビーコンの設置されていないゼブラクロッシングでも歩行者を優先すべきです。
横断歩道の左側に黄色の丸いボール(ベリーシャ・ビーコン)が置かれた支柱が見えますね。このベリーシャ・ビーコンが横断歩道の両脇にある場合、横断する歩行者を見つけたら車は停止線で停車し横断者を優先しないと、通報されることがあります。やたらと通報する愉快犯罪も発生しているので、ドライブレコーダーは必須です。

また、イギリスのドライバーの大半はルールに忠実で、厳しく守っているつもりです。しかし、ルールの守り方が日本とはいくぶん異なることを念頭に置いて下さい。たとえば、イギリスでは監視カメラのある道路では制限速度をかなり厳密に守る一方で、取り締まりの無い限り、制限速度を越えてかなりの高速で走っています。なぜなら、イギリスの道交法では車道と歩道とのすみ分けが明白なので、不用意に車道に飛び出す歩行者などほとんどいないからです。法的な制限はあっても、運転にはある程度の裁量が与えられているひとつの例と言えます。もちろん、速度超過(speeding)が予告なく取り締まられることも付け加えておきます。
SLOWと書かれていたら、素直に減速して下さい。右カーブ沿いの長家(ながや)は元来小作農の時代に建てられた古建築です。この道路が車道になる以前に建てられたものでしょう。2つも標識があるので、この車道では歩行者の権利の方が優先されます。玄関から誰かが突然道路に飛び出してきても停車できるように備える必要があります。街中や集落の速度制限は時速30マイルか、20マイルが一般的です。

また、歩行者の場合に限られますが、横断歩道では進行方向の信号が赤でも、安全を確認して交通が無ければ、自己責任で道路を横断しています。イギリスの歩行者の場合、主体的な判断が一般化されているわけです。日本では、乗り物の往来がまったく無くても赤信号を守って横断しない歩行者が大勢ですね。ルールや法に対して、たとえそれらが同じ文言で整備されていても、それぞれの国で裁量の範囲が異なっていたり、実際の運用も異なっていたりする、ということです。
ビッグベン、国会議事堂の前に設置されたひっそりと目立たぬプラーク。世界初の交通信号を発明した人物の名前が刻まれています。日本には「必要かな?」と思われるほど信号の数が多く感じられますが、イギリスに設置されている信号の数は適度に感じられます。
日本の場合は、その道路の狭さも関係して、車道と歩道との区分けが曖昧です。おまけに、歩行者という物理的弱者が法的強者となる一方、車という物理的強者は法的弱者になってしまうので、日本ではどんな事故であっても車側が不利な立場になることはご存知の通り。当方にとって日本での運転は、イギリスでのそれよりも高い緊張感を伴います。

他にもまだ述べるべきことがあるような気がしますが、当方が皆さまにもっとも申し上げたいことは、イギリスでは、運転者にも歩行者にも自己責任の範囲で「自分で判断していいよ」というある程度の裁量が不文律として与えられている、ということです。イギリスではルールの運用、罰則、責任範囲が明白なので、歩行者自らが安全確認をして保身を心掛けるために、個々の交通安全の意識は日本人よりも高く感じられます。

当方のドライブ経験、トラブルのニオイ(裁判沙汰等々)

イギリスでのドライブでは、日本では味わえない意外な経験をすることがあるかもしれません。以下の記事は2005年にリンゴを食べながら、運転していた女性が罰金を払わされたケースです。

リンゴを食べる女性ドライバーが罰金(英文)
https://www.dailymail.co.uk/news/article-335291/Pipped-Woman-driver-fined-eating-apple.html

この記事の論点は違反者を見つけるためにイギリスの警察がヘリコプターを使ったことで、警察はコスト意識が足らないという批判を世論から受けたものでした。違反者に対してヘリコプター代金まで罰金として請求すれば、むしろ批判は避けられたのではないだろうかという意見もありました。ともあれ、意外なところに監視の目があることを知っておくのも悪くなかろうと思い、ご紹介しておきます。道路の雰囲気で、ここは取り締まりが厳しそうだなとか、事故が起こりやすいかもしれないとか、トラブルのニオイを感じて頂きたいものです。CCTVカメラの設置数はその目安です。
対面駐車も可です。イギリスが寛容な国なのか、いい加減な国なのか、どちらでもいいのですが、無駄に厳し過ぎる故国のルール運用にも少しは寛容さがあるとカワイイのではないかと思います。ちなみに、このタウンハウスの街並みがThe Salvation Army(救世軍)のところで奥に凹んでいるのは、第二次大戦中ドイツ空軍による空襲でこの一画が焼け落ちた後に、限られた予算で再建したからだそうです。

また、意外な盲点となるのが、モーターウェイ(高速道路)などでのSoft Vergesという標識です。日本でしたら「路肩注意」という看板に当たります。英語標識の言外の意味は「路肩が柔らかいので駐停車に注意」です。当方はドイツから来た40トン大型ローリーがモーターウェイの路肩にゆっくりと停車した途端に、道路わきの畑に横転していく瞬間を見たことがあります。ローリーの運転者は英語の標識に気付かなったのかもしれません。さらに、同じモーターウェイでも、制限速度が変わることがあります。Variable speed control area(VSCA:可変速度制限区間)と書かれていると思いますので、今運転している地域の速度制限を逐一チェックされることをお薦めします。今どきのSat nav(Satellite navigation:カーナビ)は、速度制限を知らせてくれることもありますね。

35年分のトラブルをご紹介

ご参考ながら、当方がレンタカーや自車で被ったトラブルの一部をご紹介します。まず、駐車中にイタズラされた線傷(キーなどで引っ掛かれたキズ)の件でレンタカー会社と裁判沙汰になったこと(レンタカー会社が裁判直前に訴訟を撤回しました。当方の粘り勝ちです)。次に、ローカルな町の小さなレンタカー会社にオートマチックの故障車をつかまされて、「オートマチック車がノッキングするのは普通だ」と非を認めない社長とケンカになったけど、「警察や消費者センターに連絡するぞ」と通告したら、最終的には同じ料金で高級マニュアル車(記憶ではメルセデス)を貸与されたこと。さらに、右折のために急停止した先行車両に続いて急停止した途端に、後ろから追突されて、裁判沙汰になったこと(裁判所から呼び出された時にイギリスには住んでいませんでしたので、訴訟は取り下げられました)。もうひとつついでに、後続車に煽られたと思って、左に車線変更して先行車両を追い越したら、その後続車は警察の覆面車両だったことなどがあります。

その警察車両は、当方を左側から追い越しざまに窓を開けて警察手帳を見せて、「停止しろ」と叫んでいたので、その指示に従いました。「左車線から追い越しをしてはいけない。おまけにスピードの出し過ぎだ」と、190㎝の私服警官2名にもの凄い剣幕で詰め寄られましたが、当方も負けていません。「君らが煽ったから、左車線から逃げてやり過ごそうとしたんだよ。私の前に先行車が居るのに、なぜ煽るんだ。緊急車両なら左車線から追い抜けばいいじゃないか!私は君らが警察だとは気づかなったし、君らの運転の方が暴走だと思ったんで、危険を避ける手段を取ったんだ」と主張しました。すると、警官は語気を荒げて言います。「煽ったんじゃない。我々のルールに則(のっと)って出動中のライトをサイレンの代わりに点滅させていただけだ。急いでいたんだ」当方は笑いました。「急いでいるだと!じゃあ、なぜここで止まって、今ここで私と議論しているんだ?さっさと仕事しろ。公務のプライオリティを考えろ!」と言い放つと、警官たちは「今度はタダじゃ済まさないからな」と捨て台詞を吐いて、その場を離れました。当方が「それはこっちの台詞だ」と叫びましたら、警官はピクリと苛立ちを見せましたが、「プライオリティだろ!」と、当方が繰り返したことで、そのまま行ってしまいました。当時の当方は34歳でしたが、彼らはさらに若かったうえに、たぶん、正義感の強い、マジメな警官だったのでしょうね。この出来事を妻に話すと、「それは言い過ぎでしょ」と、むしろたしなめられました。でも、果たして、言い過ぎだったでしょうか?
囲い込みの進んだイングランドではあまり見かけない光景。羊たちは人間を怖がりますが、車を怖がりません。車で近づいても全然逃げませんし、猛スピードで走る車の前でも平然と道の真ん中に飛び出します。接触事故でけがをさせると厄介なことになりますので、羊を見たら減速です。

ルールを守れば安全という神話

当方はルール以上に安全の確認と確保が大切と考えています。実際の運転社会では安全よりも規範(法、ルール、マナー全般)の方に重きを置いていると見受けることも少なくありません。中東、東南アジア、中国、南半球、北米などで運転を経験して思うことは、どこの国でも交通法と実際の運用との相違は矛盾をはらんだ課題なのかな、ということです。日本では「ルールは守らなければなりませ~ん」という従順さを平等に強制されます。では、守っていれば安全が保障されるのでしょうか? もし保証されるとしたら、日本で歩行者事故など起こらないはずですから、それは神話に過ぎません。イギリスでは「何かが起きたとき、該当者たちそれぞれの利益を公正に守るためのモノ。それがルール」なのであって、安全は保障されるものではなくて、自分の頭で考えて安全を確保するものなのです。

ともあれ、安全運転を遂行するには、苛立ちとパニックは禁物です。イギリスの美しい景色に囲まれながら、安全で快適なドライブを楽しまれることを祈念しております。
もし、何か起きたら、まず深呼吸です。

Text&Photo by M.Kinoshita

関連リンク
幸せなドライブin UKを求めて その2/3 ー最悪の事態に備えて、優雅に最善を施すー
幸せなドライブin UKを求めて その1/3 ーイギリスで運転すると幸せになれるんでしょ?ー


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マック 木下

マック木下

ロンドンを拠点にするライター。96年に在英企業の課長職を辞し、子育てのために「主夫」に転身し、イクメン生活に突入。英人妻の仕事を優先して世界各国に転住しながら明るいオタク系執筆生活。趣味は創作料理とスポーツ(プレイと観戦)。ややマニアックな歴史家でもあり「駐日英国大使館の歴史」と「ロンドン の歴史散歩」などが得意分野。主な寄稿先は「英国政府観光庁刊ブログBritain Park(筆名はブリ吉)」など英国の産品や文化の紹介誌。

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