2018.02.20

川合亮平、僕のUK観光道 ブルースくんと、ファティマちゃん

こんにちは。川合亮平です。

今回は、パンの概念を完全に覆すパンを食べた、という話題。

去年の夏、VisitBritainさんのプレストリップに参加させてもらって、1週間ほどスコットランドを取材していました。

プレストリップって、ありがたいことに、連日かなり綿密な旅程が組まれてるんですね。
そんなある日、今日の夕食は何かな、と旅程表を見ると、
“マスターシェフの優勝者が最近オープンした話題のレストラン”とのこと。

MasterChef(マスターシェフ)ってご存知ですか?英国で長年大人気の料理番組なんです(番組フォーマットは50か国以上でリメークもされているようです)。

僕は観たことないので詳しくはわかりませんが、とにかく、英国全土の腕に覚えのあるシェフが参加して、様々な難関をかいくぐり(たぶん)、最終的に優勝者を一人決める、という料理番組。

そんな国民的人気番組で優勝するということは、かなり名誉なことのようで、一夜にして“セレブ・シェフ”になる、と言っても過言ではないほどの影響力のようです。

The NewPortへ

まあ、とにかく、そのMasterChefの優勝者、ジェイミー・スコット氏が彼の地元スコットランドにオープンしたレストラン、The NewPortに行ってまいりました。
20180220_newport_1 エディンバラから北上して、車でも電車・バスを乗り継いでも、だいたい1時間半くらい。
20180220_newport_2 目の前は、テイ川がゆったりと。
20180220_newport_3 風光明媚で食べ物がものすごく美味しい、スコットランドのFife(ファイフ)というエリアにあります。
20180220_newport_4 抜群の環境。
20180220_newport_5 中に入ってみましょう。
20180220_newport_6 我々はグループ(12名ほど)だったので、上階のお部屋へ。景色がパーフェクトすぎて言葉がないです。
こちら、The NewPortのお料理の特徴は、まず、地元の厳選素材にとことんこだわっているところ。
そして、その最高の素材を使って、シェフ(とスタッフ)がとにかく愛情と誇りを持って調理しているということ。

だから、最強なんです。
それだけあれば、他に何にもいらないでしょ?
20180220_newport_7 地元の人気ポッタリーの器を使用するこだわりも。
ぼく、ジェイミーさんの料理を頂きながら、“マジック・ハンド”というキーワードが頭に浮かんで仕方なかったんですよね。
特別に才能があるシェフというのは、料理をするその手から何か特別なハンドパワーのようなものが出てるのではないかと。でないと、説明のつかない美味しさなんですよ。
20180220_newport_DSC_0784-2 20180220_newport_DSC_0796-2 20180220_newport_DSC_0828-2 20180220_newport_DSC_0837 20180220_newport_DSC_0844
例えば、ぼくが、ジェイミーさんと全く同じ素材で全く同じ手順で料理したとしても、絶対(本当に、絶対)、目の前に並んでいる彼が手がけた料理の味にはならない、と確信が持てるんです。
普通の人と、本当に才能があるシェフを決定的に隔てるのは、クッキング・ハンドパワーの有無にあるのではないかと、真剣に思うわけです。
20180220_newport_8 夕暮れ時の景色。
20180220_newport_9 景色の美しさに思わずバルコニーに飛び出す一行。

さて、僕が心底感動したのは、パン

パンがとにかく美味しすぎたんです。

いや、もう、一口食べて目を剥きました。
「え?」って。

よく、料理漫画なんかで、一口食べて、「ガーン!!」って感じに、周りに雷が落ちるようなコマの演出がありますよね、 あれ、僕は漫画の一つの演出で、料理でそんな衝撃を受けることなんかあれへんあれへん、と思っていたんですが、 ジェイミーさんのパンを食べた瞬間、雷が落ちて、時が止まりました。
20180220_newport_10 このパン!!
グループでの食事なんで、真ん中にポン・ポンと配置されるパンなんかは、
当然、シェアするわけで、他の人々の出方を伺いながら、遠慮がちに食べるのが常識だと思います。

でも、このパンに関しては、旅の仲間との人間関係が、その後ギクシャクしようが、壊れようが、僕が一つ残らず全部食べたい、という強い衝動に襲われました。
(なんとか理性が勝ったようで、そういう事態は起こりませんでしたが。でも、僕のあの時の目のギラつきは多分周りの人々に怖がられていたかも)

それで、とにかくそのパンが衝撃的すぎて、食事が全部済んだ後、ジェイミーさんに直接聞いてみたんですよ。

一体全体、あのパンはどういうつもりなんでしょうか!?、と。
20180220_newport_11 オーナーシェフ:ジェイミーさん登場
パンの話題をすると、ジェイミーさんの態度がそれまでのセレブ・シェフ然としたシュッとしたものから、一気に打ち解けた感じになりました。
パンと聞いた瞬間、彼の心が開いたような。

「それ聞く?おれ、話しちゃうよ?」って感じで、急に人懐っこい笑顔になったんです。

「パンって、普通、コースの最初に出てくるよね?申し訳程度にさ。おれから言わせると、あんなやり方全く納得できないんだ、邪道だよ。パンには無限の可能性があるんだ。コース料理の一品として立派にその役目を果たせるのがパンなんだよ。だから、うちでは、パンはコースの間に出している。最初に出すなんて、もってのほかだ。」

うわ〜、すごいこだわりだ。でも、おっしゃる通り、他のコース料理に負けるとも劣らない美味しさでした。(いや、むしろ、僕はパンが一番美味しかったかも・・・)

単刀直入に、なんであんなに美味しんでしょうか?

「うちのパンは、特別愛情をかけて育てているんだよ。まずね、スターター(starter)と呼ばれる発酵種(生きてるイースト)、これがパンのMother(素)なんだけどね。リンゴジュース、小麦粉、ヨーグルトを加えたMotherは、生き物なんだよ。だから毎日餌をやらなければならない(feed the starter)。餌をやるのは、何よりも大切な仕事さ。オレは毎日、朝、まず厨房に入って餌をやる、そして、夜、厨房を出る前も必ず餌をやる。これは絶対欠かせない。今、うちの発酵種は、2歳なんだよね。2年間愛情を込めて育てている。白(パン)の発酵種の名前がブルース、そして、ブラウン(パン)の発酵種の名前がファティマ、ってんだよ。」

え!?発酵種に名前があるんですか?

「あたりまえだよ。それだけ愛情を込めて毎日手入れしているんだ。フッフッフ」

この愛情、生半可なものじゃない・・・!
そりゃ、桁違いに美味しいはずや・・・。

ファイフ・ダンディーは注目のエリアです

さてさて、The Newportのあるファイフというエリアは、あんまり知られていないかもしれませんが、本当に自然が豊かで、食べ物も美味しいし、僕は大好きになりました。

例えば、ファイフの中の、セント・アンドリュースはとても気持ちの良い場所だし、穴場の漁村クレイルも素敵だしね。
(クレイルは記事に書きました:[秘密にしておきたいけど] 花咲くラブリーな漁村「Crail(クレイル)」)

あと、レストランの対岸にあるのは、ダンディーという街。
レストランからは車で橋を渡って30分ほどで行けるとのことなんですが、今年の9月15日、V&A Museum of Designという新しいギャラリーがオープンします。今年、何かと話題になる街だと思いますよ。

では、またアナザー観光地でお会いしましょう。
川合亮平でした。

取材協力:
英国政府観光庁(Visit Britain)
Visit Scotland
Visit Fife

♦ 使える英会話!

『意味わかりますか?気の利いた広告』

英国の街を彩る、気の利いた広告を紹介します〜。
20180220_newport_IMG_0289 ロンドンのオーバーグラウンド電車の中で見かけた広告。

Mining the gap won’t hurt you.
注意喚起の広告ですね。

この文章、どこが気が利いているかというと、
“won‘t hurt you”というフレーズに秘密が。

このフレーズ(否定文+hurt+人)、日常的によく使う慣用句で、意味は、

『別に大したことじゃない。やってもやらなくても特に実害はないよ。だから、やればいいじゃない』
っていう感じ。

例文:
A: I’m wondering whether I should join the Othello club or not.
(オセロ部に入ろうかどうか、悩んでんねん)
B:Why not? It won’t hurt you.
(入ったらええやんか。別に害のあるもんでもないしさ)

それで、この広告を普通に訳すと、
『電車の隙間に気をつけるだけやんか。損するわけでもなし、別にそれくらいしたらええやんか』
という意味なんです。

だけど、その慣用句が、文字通りの意味でも通用するので、ダブルミーニングになっている、という所にこの広告の面白さがあるんですよ。

文字通り、つまり、hurt you:(=怪我をする)という意味ですね。

そっちの方の意味で訳すと、
『電車の隙間に気をつけてたら、怪我することないよ』
という意味になるんです。

1つの文章だけど、2通りの意味がある。
気が利いてるでしょ?

Text&Photo by R.Kawai

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川合 亮平

川合 亮平

(かわいりょうへい)

大阪市出身・東京在住のフリーランサー。

SNSを中心に大きな話題となった『なんでやねんを英語で言えますか?』
(KADOKAWA)をはじめ、著書・翻訳書・関連書は現在9冊。

通訳者・翻訳者、トラベルジャーナリストとしての活動の他、ベネディクト・カンバーバッチ、マーティン・フリーマンをはじめ、歌手のエド・シーランなど、イギリス出身の俳優・ミュージシャンへの英語インタビューも多数手がけている。

イギリス英語と大阪弁を話すのが特徴。

出版物
著書 「なんでやねんを英語で言えますか?」「本場のイギリス英語を聞く」「つながる英会話」

翻訳書「世界名作”ひとこと”劇場」
監修「自分つっこみクマの のんびりシンプル英会話」など

共著 「イギリス英語を聞くThe Red Book」「イギリス英語を聞くThe Blue Book」

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