2018.07.20

イギリス建築を愉しむ。 ダウントン・アビーのロケ地めぐりPart.2

バイオレット様の邸宅

前回に引き続き、イギリスの人気ドラマ「ダウントン・アビー」のロケ地となった建築をご紹介したいと思います。今回ご紹介するのは、同じくダウントン・アビーで、先代グランサム伯爵夫人バイオレット・クローリー(女優:マギー・スミス)の家として使われた「Byfleet Manor(バイフリート・マナー)」です。 ロンドン・ウォータールー駅から列車で40分のWeybridge駅で降り、そこから車で10分ほどの場所に静かに佇んでいます。
バイオレット様の邸宅「Byfleet Manor(バイフリート・マナー)」。
ゲートを入り、芝生に囲まれた小道を進んでいくと、立派な2本の門柱の奥に、荘厳な建物が見えてきます。
ドラマの中では17世紀から18世紀前半に活躍したイギリスの建築家クリストファー・レンによる建物とバイオレット様が話していますが、実際は中世から存在しています。
着きました!あのバイオレット様の邸宅です!感激のあまりしばらくその外観に見惚れてしまいました。外観・インテリアは17世紀~19世紀のミックス・スタイルです。赤レンガ、窓周りやコーナーの石使い、寄棟のドーマー(屋根の上の小窓)など、主として残っている出で立ちはクイーン・アン・スタイルと言えるでしょう。この建物は個人邸のため、完全予約制でオーナーの都合次第でしか見学することはできません。私も2015年4月、運良く予約が取れ、訪れることが出来ました。(この日も数名の観光客が訪れていて、敷地内に入ろうとしていたところをオーナーにお断りされていました。)
オーナーのハットン夫人が笑顔で出迎えて下さり、重厚な木製ドアを開けると、歴史を重ねたオークパネリングの壁で覆われた玄関ホールがあります。その先の通路には2連のアーチの開口があるのですが、この空間の天井も同じくアーチ状のトンネルになっています。早速、いかに凝った内装かが良くわかります。
続いて案内されたのは「ダウントン・ルーム」と呼ばれている、ドラマの中で何度も登場するドローイング・ルームです。ハットン夫人の話では、2013年にこの建物内で隠し部屋が見つかり、100年以上前から使われていた美しいシルクのカーテンが保存されていたそうです。この生地でカーテンを作り、カーテンに合わせて塗装されたピスタチオ・グリーン色の壁によって、上品で美しい部屋へと生まれ変わったのです。
部屋の角には曲面にくぼんだニッチがあり、飾り棚となっています。その手前に置かれたテーブルは小さなお土産コーナーになっていました。
「ダウントン・アビー」出演者たちのサイン色紙です。
ここでしか手に入らないバイオレット様の名セリフ「What is a weekend?」のオリジナル・マグカップ。

アフタヌーン・ティー

さて、このバイフリート・マナーでは、なんとオーナーのハットン夫人のお手製アフタヌーン・ティーを戴くことが出来ます。ハットン夫人はウェールズ出身の方だそうで、ウェルシュ・スタイルのお菓子をご用意下さいました。このダウントン・ルームで、少し緊張しながらもどれもとても美味しく戴きました。

ダイニングルームから裏庭へ

アフタヌーン・ティーを戴いた後、他の部屋や裏庭を案内して下さいました。
こちらはダイニングルーム。腰上は淡いイエローグリーン色のダマスク柄の壁紙、腰下はクリームイエローのペンキで仕上げられた明るいお部屋です。ストーブの置かれた炉の周りは白い大理石が施されており、クラシックで高貴な印象に仕上がっています。この部屋から裏庭へ出られます。
裏庭へ出るドアも素敵です。アーチ型のパティオドアが可愛らしく、奥に見えるお庭にもワクワクします!
広大な裏庭から見る外観も正面に負けない魅力をもった「顔」になっていて、ハットン夫人も「裏の外観もお気に入りなの。」と話していました。左右対称の正面の顔とはまた違い、裏面は自由なデザインのアーツアンドクラフツ・スタイルの特徴を持った外観です。緑に囲まれ、のびのびして見えますね。庭には小川も流れていて、どこまでが敷地なのだろうと思うほど広く、緑豊かな景色が居心地の良さを物語っていました。

Visitor’s Book

残念なことに、私が訪れた2か月後にこの家は売りに出されてしまいました。私が日本人として最初で最後の来訪者となってしまったのです。ハットン夫人はこの時すでに売ることを考えていたのかもしれません。なぜなら前述のように個人宅がロケ地として使われると、頻繁に知らない人が来るようになり、プライベートの維持が大変と言っていたからです。ハットン夫人は日本から来た建築家の私に、建築に関する本を2冊プレゼントしてくれました。そして、「バイフリート・マナーのVisitor’s Book (訪問帳)に是非名前を残して。」と言って下さいました。
下から三番目は、エセル役のエイミー・ナットルのサイン、下から二番目はローズ役のリリー・ジェームズのサイン
一番下はイーディス役のローラ・カーマイケルのサイン。その他マギースミスのサインもどこかにあると言っていましたがなかなか見つかりませんでした。
そして訪問帳の最後の欄に光栄にも記帳させて戴きました!
その後バイフリート・マナーは2015年9月に次のイギリス人オーナーに引き継がれたそうです。現在は見学可とはなっていないようですが、この建物は、「ダウントン・アビー」だけでなく、イギリスのドラマ「クランフォード」や映画「Into The Woods」の撮影にも使用されていたとのことで、今後もロケ地として是非登場してほしい建物です。「ダウントン・アビー」の映画も決定したようなので、期待したいと思います。

次回もお楽しみに。

Photo & Text by Koichi Obi

関連リンク
ダウントン・アビーのロケ地めぐりPart.1
コッツウォルズに魅せられて


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小尾 光一

小尾 光一

工学院大学工学部建築学科卒業後、輸入住宅会社、リフォーム会社勤務を経て、「地面から生えたような」と形容されるイギリスの家に魅了されて渡英を繰り返し、デザイン・知識の習得とともにイギリス建材の開拓を重ね、2000年にコッツワールドを設立。イギリスであれば何処のエリアの建物も、そしてインテリアも実現するイギリス住宅専門の建築家として活動中。日英協会、イギリスを知る会所属。
著書「英国住宅に魅せられて」

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