Newby Hall and Gardens
イングランド北部ヨークシャーの村Ripon(リポン)。ここに、新古典主義建築の巨匠ロバート・アダムが手掛けたカントリー・ハウスの傑作のひとつ、「Newby Hall(ニュービー・ホール)」が建っています。駅からはニュービー・ホールの近くまで行くバスが出ており、およそ1時間でSkelton-on-Ureというバス停に着きます。
リポンの街並みを眺めながらのバス乗車も楽しい時間です。


ただ、この写真を見てもわかりますが、このゲートからは建物は全く見えず‥
広大な敷地であることがわかります。

赤いブリックとコーナーストーン、そして左右対称の外観が美しいです。

時間制で、ガイドによる丁寧な館内の説明を聞きながらじっくりと見学ができるシステムになっています。まずはチケット売り場へ。チケット売り場には、この館のほとんどのインテリアを手掛けたロバート・アダムの絵が飾られています。

写真上部は日本のNHKでも放映されていた「女王ヴィクトリア 愛に生きる」で撮影された時の写真です。


ニュービー・ホールは、1690年代に建築家クリストファー・レンによって建てられました。
クリストファー・レンは、イングリッシュ・バロック建築を広めた有名な建築家です。
その後、1762年に館主となったWilliam Weddell(ウィリアム・ウェデル)が1766年にグランド・ツアー(17世紀末~18世紀に裕福な若者がフランス、イタリアなどのヨーロッパ大陸を巡って歴史的な場所を見学・研究・習得する大旅行が流行しました。)から帰国すると、新古典主義建築(ネオ・クラシカル様式)をニュービー・ホールに取り入れようと決意し、当時ネオ・クラシカル様式を確立していたスコットランドの建築家ロバート・アダムとヨークの建築家ジョン・カーに依頼しました。ジョン・カーは主に増改築に携わり、建物の南北を拡張しました。インテリアはロバート・アダムがメインで、アダム・スタイルと呼ばれるパステルカラーの石膏装飾の部屋をいくつも作っています。

こちらは玄関ホール。ロバート・アダムの弟子William Belwood(ウィリアム・ベルウッド)が師匠の装飾デザインを見事に実現しています。ペイントの色も上品かつ爽やかで美しいです。

石膏装飾はアダムの右腕とも言われる凄腕職人Joseph Rose(ジョセフ・ローズ)が仕上げています。

階段を上がったホールには、3連のアーチを付けることで、より奥行き感と高さを感じられる技を使っています。ホールの奥の壁には、アダムと同じ時代に活躍した家具デザイナーThomas Chippendale(トーマス・チッペンデール)のミラーと、アダムがデザインしたキャビネットを左右対称に配置し、対面の大きな窓からの光を多く採り入れています。


写真は6月に撮影したものです。

ロバート・アダムが手掛けた貴族の館「ニュービー・ホール」、是非訪れてみてはいかがでしょうか。
NEWBY HALL AND GARDENS
住所: Newby Hall, Ripon, North Yorkshire, HG4 5AE
URL:www.newbyhall.com/
Photo & Text by Koichi Obi


小尾 光一
工学院大学工学部建築学科卒業後、輸入住宅会社、リフォーム会社勤務を経て、「地面から生えたような」と形容されるイギリスの家に魅了されて渡英を繰り返し、デザイン・知識の習得とともにイギリス建材の開拓を重ね、2000年にコッツワールドを設立。イギリスであれば何処のエリアの建物も、そしてインテリアも実現するイギリス住宅専門の建築家として活動中。日英協会、イギリスを知る会所属。
著書「英国住宅に魅せられて」
ホームページ:
www.cotsworld.com
ブログ:
cotsworld.blog136.fc2.com
Facebook:
www.facebook.com/cotsworldltd