2019.04.19

ブリティッシュ“ライク” 三大喜劇王と同時代に活躍した名コンビ“ローレル&ハーディ”を題材とした映画「僕たちのラストステージ」

世界三大喜劇王といえばチャールズ・チャップリン、バスター・キートン、ハロルド・ロイドの三名だ。中でも徹底した無表情な道化と度胆を抜くアクションを披露するバスター・キートンはたまらなく好きだ。また、チャップリンは山高帽、ロイドはロイド眼鏡など、各々ファッションアイコンとなっていることでも名高い。さて、そんな彼らと同時代に活躍したのが、コメディアン“ローレル&ハーディ”だ。今回紹介する映画「僕たちのラストステージ」は、彼らの人生に焦点を当てる物語だ。

1937 年、スタン・ローレルとオリバー・ハーディは、コメディアンとしてハリウッドの頂点に君臨していた。しかし、スタンはプロデューサーのハル・ローチとソリが合わず、金銭面でも揉めてしまう。時は流れて1953 年、一世を風靡した二人であったが、人気は衰え過去の人になりつつあった。英国に活動の場を求めた彼らであったが、待ち受けていたのはまるで新人のような過酷な扱いを受けながらのドサまわりである。彼らは、ノーザンプトン、リヴァプール、シェフィールド、ブラッドフォード、ヨーク、サンダーランド、カーライル、グラスゴーなど英国中を訪れ、閑古鳥が鳴く劇場でも地道に活動し続けた。その甲斐あって、ローレル&ハーディは再度脚光を浴びる。しかし、彼らの復活をかけた新作映画製作の資金は集まらず頓挫した上に、ひょんなことから始まった口論が火種になり、互いに蓄積していた長年の不満が爆発して仲違いしてしまう。追い討ちをかけるようにオリバーは体調を崩してしまい、ローレル&ハーディはコンビ解消の危機を迎える…
冒頭から次のカット変わりまでの5 分間、映像はまったく編集されずに一連で進んでいく。主人公達が、日常会話をしながら楽屋からスタジオへ入っていく何気ないシーンだ。まるで以前から彼らを知っていたようかのような親近感を覚えた。のっけから魅了された場面だ。監督のジョン・S・ベアードは、映画の世界へ引き込むためにこの手法を用いたと証言している。同様に、コントのシーンにおいても、カメラが固定されたままの長回しのカットがある。要所で同様の手法が使われており、臨場感溢れる場面を演出している。映画では、実際の舞台とは異なり、場合によっては何度も同じ芝居をやらなければならない。恐らく本作においてもそういったケースはあったに違いないが、主演のスティーグ・クーガンとジョン・ C・ライリーは、鮮度を保ったままの瑞々しい芝居を映像に吹き込んでいる。裏を返せば、二人の芝居が優れているからこそ、映像を編集する必要がなく素材を活かせたのかもしれない。

次に、実際の“ローレル&ハーディ”に寄せるために施された特殊メイクアップにも注目いただきたい。担当はジェレミー・ウッドヘッドとマーク・クーリエだ。前者は最も多忙なヘア&メイクアップデザイナーの一人と言われ「クラウド アトラス」、「ドクター・ストレンジ」、後者は「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」、「グランド・ブタベスト・ホテル」、「ボヘミアン・ラプソディ」など、数多の作品でメイクアップ賞を受賞している。例えば、クーガンには顎と歯を作り、両耳を目立たせるようなメイクを施し、ライリーには膨よかな体格を表すために毎度4時間もの特殊メイクが施されている。スタンの寝癖が目立つ髪型も忠実に再現されており実にラヴリーだ。
長年連れ添った友人やパートナーはかけがえのないものだ。月日が経過すると当たり前にあるものが余りにも当たり前過ぎて、ついそのありがたさを忘れてしまう。軽薄に聞こえてしまうと不本意だが、この映画を鑑賞して蒙を啓かれた。ただし、本作はマッチョで汗臭いものではなく、軽妙でソフトなタッチなのが心地良い。僕がイメージするイギリスらしいエッセンスが散りばめられている作品だ。

「僕たちのラストステージ」
4月19日(金) 新宿ピカデリーほか全国順次公開
© eOne Features (S&O) Limited, British Broadcasting Corporation 2018
配給:HIGH BROW CINEMA
監督:ジョン・S・ベアード
出演:スティーヴ・クーガン、ジョン・C・ライリー
laststage-movie.com
Text by Shogo Hesaka


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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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