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ブリティッシュ“ライク” 映画「 リトル・ジョー 」 コロナウイルスを 示唆する サイエンススリラー

2020.06.25

映画リトル・ジョー
「リトル・ジョー」ほど時宜にかなった映画は他にないだろう。まるでコロナウイルスが蔓延する今現在を示唆するかのようなサイエンススリラーだ。純粋に映画として楽しむ一方、人工的に生み出された植物の恐ろしさと、それを可能にする科学技術に戦慄した。
本作は、主演のエミリー・ビーチャムをはじめ、ベン・ウィショー、ケリー・フォックスなど、英国に所縁のある俳優が多い。エミリー・ビーチャムは、“リトル・ジョー”のもたらす幸福感と、その副作用に潜む危険性に葛藤する研究者を演じ、カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞している。さらに、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍するベン・ウィショーは、“リトル・ジョー”に傾倒し、あべこべに取り込まれてしまうマッドサイエンティストを演じている。「007シリーズ」の“Q”もすっかり板についた彼だが、最も記憶に新しいのは、僕の大好きな俳優ヒュー・グラントと共演したドラマ「英国スキャンダル 〜セックスと陰謀のソープ事件」だ。ヒュー・グラントに負けない存在感を示しゴールデングローブ賞を受賞している。
映画リトル・ジョー 映画リトル・ジョー
劇中において国や場所が明確にされることがないため推測に過ぎないが、キャストのみならずロケーションも英国を連想させる場所が多々見受けられる。しかしながら、興味深いのは、街並み、建物、室内がまったく別の国を思わせるかのように分断されている点だ。複数の要素が点在し混沌としている。それがスリリングな脚本や緊張感のある芝居と混ざり合いおどろおどろしい空気を醸すのだ。

本作の監督はジェシカ・ハウスナー。かのミヒャエル・ハネケに師事したオーストリア人だ。テーマをダイレクトに訴えかける演出は見事にハネケイズムを踏襲している。他にも、対象物を通過する個性的なカメラのズームイン、暖色にも関わらずどこか冷淡な印象を与える照明、その照明と共鳴するかのような豊かな色彩の衣装とヘアメイク、雅楽を連想させる音楽など、強烈な個性を放つ各部署を空中分解させることなく見事にまとめあげている。

ビジュアルが個性的な映画は、そればかりが先行し得てして鑑賞後に何が伝えたかったのかがわからないことが多い傾向にある。しかし、冒頭で述べた通り、映画「リトル・ジョー」にはぶれない軸と強力なメッセージ性が付帯する。オリジナリティ溢れる世界観に誘い、緊張感を保ったまま幕を閉じる佳作だ。
リトル・ジョー
出演:エミリー・ビーチャム、ベン・ウィショー、ケリー・フォックス、キット・コナー他
監督:ジェシカ・ハウスナー『ルルドの泉で』
公開:7/17(金)アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー
配給:ツイン
©COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019
Text by Shogo Hesaka


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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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