BM RECORDS TOKYOへようこそ マイケル・ケインという男

2020.10.13

話題作「TENETテネット」にも出演。英国が誇る87歳の名優

現在公開中の映画「TENET テネット」が話題です。
“時間”をテーマに、クリストファー・ノーラン監督独自のストーリー展開と映像マジックが冴え渡る本作は、一度の鑑賞では全てを理解することが困難とリピーターも続出。現在、世界興収3億2330万ドル、国内興行はおよそ20億2930万に届いています。

新型コロナの影響による劇場営業の関係で北米市場では制作側の目算に届いていないようですが、それでも十分なヒットと言えるのでは。自分も見ましたが、なるほど、無茶苦茶面白かったです。

何より多くの大作が延期を強いられているこの時期、多くの観客に“映画”を見る喜びを与えてくれています。

劇中、短いシーンですが、主人公の“名も無き男”を援助する(*そしてこのシーンのやりとり、洋服好きをニヤリとさせますよね)クロスビー役で出演しているのがマイケル・ケインです。
マイケル・ケイン
彼はノーラン監督のお気に入りで、2005年の「バットマン・ビギンズ」でブルース・ウェイン(=バットマン)の執事アルフレッド役を演じて以降、声のみの出演となった「ダンケルグ」も合わせて全8作のノーラン監督作に立て続けに出演しています。
「TENET テネット」で彼は自身のシーンの脚本のみを渡され、完成するまで映画の全貌を知らなかったが構わず出演したそう。両者の性格と信頼関係が読み取れるエピソードです。

マイケル・ケインは南ロンドンのロザーハイド生まれキャンバーウェル育ち。第二次大戦後に兵役を務め、その後、舞台監督の助手などを務めながらロンドンの演劇学校で演技を学び、舞台俳優となりました。

当初、芸名はマイケル・スコットでしたが、先に同名の俳優が存在していたため、偶然、オデオンで上映されていた「ケイン号の叛乱」から姓を取ってマイケル・ケインと名乗ると、1956年、「韓国の丘」でスクリーンデビュー。1964年の「ズール戦争」で注目され、1965年にはレン・デイトンのスパイ小説を原作とした「国際諜報部」シリーズに主演します。

彼が演じるハリー・パーマーは眼鏡を掛けたシニカルで悲哀に満ちたサラリーマンスパイ。つまり『007』のジェームズ・ボンドのアンチテーゼなのです。このシリーズでケインは一躍人気を獲得します。ちなみに本作の音楽は「ジェームズ・ボンドのテーマ」で知られるジョン・バリー。DVDはAmazonでも入手できます。「007」に比べたら淡々としていますがとても味わい深いですよ。

マイケル・ケイン
またボンド役を演じたショーン・コネリー、ロジャー・ムーアと共演歴があり、89年のオスカー授賞式ではこんなお茶目なやりとりも残しています。

66年の「アルフィー」におけるプレイボーイなアルフィー役も有名ですね。2004年にはリメイクされ、ジュード・ロウがアルフィーを演じています。

その演技はシリアスプレイからコメディまで幅広いのですが、自身はスケジュールと出演料の都合さえあえば作品を選ばない主義だそうで出演作品は膨大です。日本俳優との縁としては1970年の「燃える戦場」における高倉健との共演でしょうか。

1993年には王室からCBE勲章を受け、2000年には長年の活動を称えられてナイトに叙され、サーの称号を受けています。

2002年には「オースティン・パワーズ ゴールドメンバー」に出演、2014年にはスパイ組織のリーダー、アーサー役で「キングスマン」にも出演しています。スパイ映画風味の強い「TENETテネット」然り、その手の作品からのラブコールが多い俳優とも言えますね。

また彼は60年代のスウィンギン・ロンドンを伝えるプレゼンターとして、こんな作品を制作総指揮しています。2018年に公開された「マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!」。

そんなマイケル・ケイン、来年1月には主演作「キング・オブ・シーヴズ」の日本公開が控えています。

こちらは平均年齢60歳以上のオールド集団が巻き起こす、実話を基にした史上空前の窃盗劇。海外では2008年公開なので「TENETテネット」よりも前の作品に当たりますが、彼の勇姿を存分に楽しめそうです。

御歳87歳、気難しそうでいて、しかし多作なサー・マイケル・ケインはまだまだバリバリ現役です。いつの時代も飄々とした佇まいと確かな演技力が魅力的な名優の今後に是非とも注目してください。それではまた。


Text by Uchida Masaki


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内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

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