アイルランド出身のインディーロックバンドCardinalsのデビューアルバム『Masquerade』をレビュー。ゴシック風味とフォーキーなムードが同居するサウンド、そして親しみやすいキャッチーさが印象的です。サマーソニック2026への出演を果たした注目株、今のうちに要チェックです。
アイルランドから隣の英国へ渡り、やがて世界へと羽ばたいていったアーティストは数知れません。その筆頭格と言えば、やはりU2でしょう。UKロックの代表格として語られることも多い彼らですが、言うまでもなく出身はアイルランド。生い立ちから考えればブリティッシュロックではなく、“アイリッシュロック”に分類されます。ただ、彼らが吸収し、再解釈した英国エッセンスが現代のUKロックシーンへ与えた影響は計り知れず、もはやUKシーンを語るうえで外せない存在です。
2026年2月の来日公演も記憶に新しいMy Bloody Valentineから、昨今のインディーロックシーンを賑わせるFountains D.C.に至るまで。UKシーンに名を刻んだアイルランド出身アーティストは枚挙に暇がありません。
今回紹介するCardinalsは、そんな隣国・アイルランド南部コーク出身の新人バンドです。このたびリリースしたデビューアルバム『Masquerade』では、抒情的でキャッチーなメロディと、どこかダークでゴシックな味付けが同居したインディーロックサウンドを披露。湿っぽく後ろ向きな内省と、大衆的なポップネスが共存する様からは、UKロックの影響が色濃く感じられます。一方で大胆にフィーチャーされたアコーディオンや、アイルランドのフォーク/トラッドのムードも匂わせる、独自性の強い音像も印象的です。
まず特筆したいのは、先行シングル“I Like You”。ギターとアコーディオンの物悲しい重奏から、ダイナミックなサビへと雪崩れ込む展開は、少々大仰なくらいがむしろ痛快です。タイトでパワフル、緩急の効いた構成は、パブやライブハウス、そして野外フェスティバルを熱狂させる光景が鮮やかに浮かび上がります。そしてキャッチーでありながら、決して明るく爽快な大合唱にはならない。それでも思わず身体が動いてしまう。“まっすぐな捻くれ者”と呼びたくなる、憎めない一曲です。
アコーディオンがフィーチャーされた楽曲はこの曲以外にも多く、アイリッシュムードを感じさせる本作の大きな特徴と言えるでしょう。ただ、そこには戦略的に出身地であるアイルランドのエッセンスを取り入れたような、わざとらしさがありません。物悲しくもどこかキャッチーで、基本的にはややダークながらポップで親しみやすい彼らの世界観と、自然に噛み合っています。自らの世界観を表現するうえで、そこに“はまった”身近な音——そんな印象です。
また、全体として抑えめなテンションの楽曲が並ぶ中、パンキッシュなロックアンセム“Anhedonia”は際立って荒々しい仕上がり。冒頭から轟音が鳴り響き、ぐちゃぐちゃとサイケデリックにかき回すのかと思いきや、持ち前のキャッチーなメロディが顔を出します。狂気と牧歌性が入り混じる混沌としたサウンドは、インパクト充分かつ中毒性も抜群です。
郷愁を誘うようなアイリッシュフォークと、厭世・耽美的なゴシック。2つの相反する要素が均衡を保つことで生まれる独自性は、すでに完成度が高く、アルバム1枚を通して“迷い”が一切見えません。筆者個人の見解として、彼らの音楽から連想されるのは、英国を代表するカルトバンドThe Cureです。妖しげなメークを施したRobert Smithの佇まいも相まって、暗いゴシックバンドとしての印象が強い彼らですが、その楽曲は一貫してどこか親しみやすさを併せ持っています。たとえば、ハッピーなメロディで陰惨な題材を歌い、どこか誇大妄想のような世界観が立ち上がる“Just Like Heaven”。明るくも暗くもなり切れない、内省的なポップミュージックを数多く生み出してきました。The Cureの煌びやかなシンセサウンドはCardinalsのそれとは大きく異なる一方で、世界に対する眼差しや、聴き手が音楽から得る“効能”は、どこか似通っています。
仕事のこと、恋愛のこと、その日のちょっと嫌な出来事、先延ばしにしてきた悩みごと。本人にとっては実に重たい話だけれど、致命傷でもない。Cardinalsの音楽は、そうした(傍から見れば)小さな憂鬱への処方箋。現実逃避の音楽でも、世界を呪う音楽でもありません。どうにもならない気分と一緒に座り込み、静かに寄り添ってくれる、そんな音楽です。
アイルランドという、海を隔てた英国のすぐ隣。Cardinalsのメンバーが若き日に、UKの先達が鳴らしてきた“明るくも暗くもない内省”を聴いてきたことは想像に難くありません。そのうえで、彼らが故郷で見聞きしたものがフィルターとなり、再解釈された結果が、このアルバムなのかもしれません。
早くも本国やUKでは注目を集めており、前述のFountains D.C.もお気に入りの若手として名を挙げているというCardinals。初来日も控え、夏の大型フェス『SUMMER SONIC 2026』への出演も決定しました。おおよそ炎天下が似合うとは言い難い音楽性ですが、夏特有の憂鬱や日々のストレスを抱えたまま、ビール片手に身体をゆだねてみるのも、なかなか味わい深いひと時になりそうです。


2026年2月の来日公演も記憶に新しいMy Bloody Valentineから、昨今のインディーロックシーンを賑わせるFountains D.C.に至るまで。UKシーンに名を刻んだアイルランド出身アーティストは枚挙に暇がありません。
今回紹介するCardinalsは、そんな隣国・アイルランド南部コーク出身の新人バンドです。このたびリリースしたデビューアルバム『Masquerade』では、抒情的でキャッチーなメロディと、どこかダークでゴシックな味付けが同居したインディーロックサウンドを披露。湿っぽく後ろ向きな内省と、大衆的なポップネスが共存する様からは、UKロックの影響が色濃く感じられます。一方で大胆にフィーチャーされたアコーディオンや、アイルランドのフォーク/トラッドのムードも匂わせる、独自性の強い音像も印象的です。
まず特筆したいのは、先行シングル“I Like You”。ギターとアコーディオンの物悲しい重奏から、ダイナミックなサビへと雪崩れ込む展開は、少々大仰なくらいがむしろ痛快です。タイトでパワフル、緩急の効いた構成は、パブやライブハウス、そして野外フェスティバルを熱狂させる光景が鮮やかに浮かび上がります。そしてキャッチーでありながら、決して明るく爽快な大合唱にはならない。それでも思わず身体が動いてしまう。“まっすぐな捻くれ者”と呼びたくなる、憎めない一曲です。
アコーディオンがフィーチャーされた楽曲はこの曲以外にも多く、アイリッシュムードを感じさせる本作の大きな特徴と言えるでしょう。ただ、そこには戦略的に出身地であるアイルランドのエッセンスを取り入れたような、わざとらしさがありません。物悲しくもどこかキャッチーで、基本的にはややダークながらポップで親しみやすい彼らの世界観と、自然に噛み合っています。自らの世界観を表現するうえで、そこに“はまった”身近な音——そんな印象です。
また、全体として抑えめなテンションの楽曲が並ぶ中、パンキッシュなロックアンセム“Anhedonia”は際立って荒々しい仕上がり。冒頭から轟音が鳴り響き、ぐちゃぐちゃとサイケデリックにかき回すのかと思いきや、持ち前のキャッチーなメロディが顔を出します。狂気と牧歌性が入り混じる混沌としたサウンドは、インパクト充分かつ中毒性も抜群です。
郷愁を誘うようなアイリッシュフォークと、厭世・耽美的なゴシック。2つの相反する要素が均衡を保つことで生まれる独自性は、すでに完成度が高く、アルバム1枚を通して“迷い”が一切見えません。筆者個人の見解として、彼らの音楽から連想されるのは、英国を代表するカルトバンドThe Cureです。妖しげなメークを施したRobert Smithの佇まいも相まって、暗いゴシックバンドとしての印象が強い彼らですが、その楽曲は一貫してどこか親しみやすさを併せ持っています。たとえば、ハッピーなメロディで陰惨な題材を歌い、どこか誇大妄想のような世界観が立ち上がる“Just Like Heaven”。明るくも暗くもなり切れない、内省的なポップミュージックを数多く生み出してきました。The Cureの煌びやかなシンセサウンドはCardinalsのそれとは大きく異なる一方で、世界に対する眼差しや、聴き手が音楽から得る“効能”は、どこか似通っています。
仕事のこと、恋愛のこと、その日のちょっと嫌な出来事、先延ばしにしてきた悩みごと。本人にとっては実に重たい話だけれど、致命傷でもない。Cardinalsの音楽は、そうした(傍から見れば)小さな憂鬱への処方箋。現実逃避の音楽でも、世界を呪う音楽でもありません。どうにもならない気分と一緒に座り込み、静かに寄り添ってくれる、そんな音楽です。
アイルランドという、海を隔てた英国のすぐ隣。Cardinalsのメンバーが若き日に、UKの先達が鳴らしてきた“明るくも暗くもない内省”を聴いてきたことは想像に難くありません。そのうえで、彼らが故郷で見聞きしたものがフィルターとなり、再解釈された結果が、このアルバムなのかもしれません。
早くも本国やUKでは注目を集めており、前述のFountains D.C.もお気に入りの若手として名を挙げているというCardinals。初来日も控え、夏の大型フェス『SUMMER SONIC 2026』への出演も決定しました。おおよそ炎天下が似合うとは言い難い音楽性ですが、夏特有の憂鬱や日々のストレスを抱えたまま、ビール片手に身体をゆだねてみるのも、なかなか味わい深いひと時になりそうです。

『Masquerade』
Cardinals
リリース日:2026年2月13日(金)
レーベル:So Young Records
配信リンク:https://cardinals.lnk.to/Masquerade
情報提供:The Orchard Japan
ivy
1997年、東京都出身。BRITISH MADEエディターとしてWEBコンテンツ制作やイベント企画を担当する傍ら、ライター / DJとしても活動する。トレードマークは長髪と伊達眼鏡。趣味は神輿、散歩、剣道。
Instagram:@ivy.bayside