BRITISH MADE

ブリティッシュ“ライク” ヨーロッパ満喫日記 「オックスフォード篇」

2019.10.16

2 年ぶりのイギリスだ。両親の還暦祝いと、遅めの夏休みを兼ねての旅行である。今回はロンドン、オックスフォード、コッツウォルズ、ウェールズと、主に4 つのエリアに分かれる述べ2週間の旅程。両親の還暦祝いとあり、彼らの所望するコッツウォルズとオックスフォードを軸に、自身が訪れたかったウェールズを加えた。

旅の前半であるオックスフォード、コッツウォルズ、そしてウェールズは、車による周回だ。以前スコットランドのエディンバラからロンドンまでを車で旅した際にすっかり魅了されたからである。パーティは、両親、妻、息子の5人。人数と荷物が増えたせいもあり、車輌のサイズが前回と比べて格段に大きくなってしまった。不慣れなバンでの出発の際、クラッチに戸惑い誤ってサード発進。暴音、悪臭、煙が地下の駐車場に充満してしまった。レンタカー会社のスタッフ達が、無様な後ろ姿をそれはそれは不安そうな顔で見送ってくれたのをバックミラー越しに見た。ロケバスのドライバーになった気分で一行を引き連れてオックスフォードへ向かうのである。

さて、ロンドンからオックスフォードまでは車でおおよそ2時間。休憩を挟みながらの車輌による気ままな旅である。順調な滑り出しに安堵するも束の間、オックスフォードの町に入ってから雲行きが怪しくなった。酷い渋滞に巻き込まれて車が動かなくなってしまったからだ。のちに住民の方から聞かされることになるが、町には駐車場が少なく、駐車待ちで慢性的な渋滞になるらしい。特に土曜日は最悪らしく、この現象は日常的なようだ。1時間以上もの間駐車場を求めて彷徨った結果、ついに駐車場は発見できなかった。僕自身は、さほどオックスフォードに関心があった訳ではないので付近に停車して車で待機。その他のメンバーは、目標であるクライストチャーチへ散策に出かけた。

オックスフォードと聞いてすぐに思い浮かぶのはやはり名門オックスフォード大学だ。同じく名門ケンブリッジ大学と共に”オックスブリッジ”で名高い両校は、万国から数多の秀才を抱え傑人を世に排出している。ゆえに、町には大学と彼らが居住する寮くらいしかないのだろうと決めつけていたら大間違い。町には大型のショッピングセンターまであり、観光客を乗せたバスが頻繁に行き交っている。カメラ片手の観光客から愛犬の散歩をする地元の人まで往来は絶えない。喧騒という程ではなく適度な賑わいがある歴史ある町オックスフォードを車からぼんやりと眺めていて心地良かった。
オックスフォード オックスフォード
オックスフォードの町を後にした我々が向かったのは、世界遺産ブレナム宮殿。かのウインストン・チャーチルの生家としても名高い。最近は、黄金の便器が盗まれてしまったことでも世間の話題となってしまった。目を見張るほどの広大な敷地で、ユニオンジャックのカーペットを歩いて屋敷に入る。屋敷内には膨大な美術品のコレクションが並び、まるで美術館のようだ。一番のお目当てはチャーチルの展示室。彼にまつわる品がいくつも飾られてあり、中でも軍服、時計、ガウン、シューズなど、彼が実用していた品々に目を奪われた。さらに、宮殿内には庭園や湖があり、周囲一面が豊かな自然に囲まれている。英国を代表する香水ブランドPenhaligon’s には“ブレナムブーケ”という香水がある。チャーチルも愛用したと言われるこの名香。ブレナム宮殿を直接肌で感じた後に再びその香りを嗅ぐと、伝統ある荘厳な宮殿、可憐な花々が咲き誇り木々が生い茂る庭園、静寂な湖畔など、眼に映るすべてが集約されたような芳しい香りだと改めて気付かされる。
チャーチル チャーチル チャーチル チャーチル チャーチル
日が暮れるまでじっくりと宮殿を堪能し、名残惜しくも次の移動を始めようとしたとき、何十台ものランドローバーが次々に宮殿へ乗り入れてきた。降りてきたのは、オイルドコート、ツイードジャケット、ハンチング、長靴などに身を纏い、猟銃を手にした男女と猟犬たち。何の会合なのかはわからなかったが、その姿は余りにもセンセーショナルだった。
オイルドコート、ツ イードジャケット オイルドコート、ツ イードジャケット
この日の最終目的はコッツウォルズの北部ミックルトン。ブレナム宮殿からはさらに北西に進む。宮殿を出発したときにはすでに辺りは暗くなっていた。僕は走り出してすぐにある異変に気付いた。道端に何かが、それもおびただしい数の何かが横たわっていたからだ。しかもさほど小さくはない。よくよく見るとそれらは何と無数の雉だった。僕はとっさに先ほどの集団が撃ちまくって撃墜したに違いないと疑った。しかし、それはすぐに間違いだと解る。雉が車の前を駆け抜けていくからだ。恐々と標識以下の30マイルで走行していたが、対向車は臆することもなく猛スピードで駆け抜けていく。その瞬間…まるで、サム・ペキンパーの映画を見ているような気分だった。パニックになりながらコッツウォルズへ入ったのだった。

Text by Shogo Hesaka


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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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