カメラを片手にイギリスへ。 英国紳士と時を刻むミュージアム(続編) 〜おじいさんとの約束〜

2020.02.06

こんにちは。イギリス在住大学生のあかねです。

前回の記事では、フォトプロジェクトで密着していたおじいさんとの出会いについて綴りました。

このおじいさんをモデルにしたこのプロジェクト、わたしのクラスメイトからなかなか好評で彼はすっかりクラスの人気者となりました。
英国紳士 彼はきっと今頃くしゃみしてますね。笑
彼がボランティアとして活動しているこのミュージアムは、地元の人々にさえあまり知られておらず知名度が高いとは決して言えません。

ミュージアムの運営チームは、コベントリーで生まれ育った人々のグループで構成されていて、彼らは全員ボランティアとしてこの活動に尽力しています。

彼らの1番の目標は、コベントリーの歴史を保存する“常設ミュージアム”を設立すること。

現在のミュージアムの名前が“Coventry Watch Museum Project Limited”、つまりコベントリー時計ミュージアム“プロジェクト”となっているのは、しっかり設備の整った「ミュージアムを設立する」という本来の目的がまだ達成されていないことを意味します。

現状、ミュージアムとは思えないほどの小さなコテージがエントランスと展示室を備えた建物になっており、後に簡易で建てられたプレハブの建物、また第1次世界大戦中にRotherham&Sons Clock&Watchのメーカーが防空シェルターとして使用した建物を使用して、一時的な博物館として設置されています。
コテージ なんとコテージの展示室となっている部屋に入れるのは3、4人ほどという規模感です。
200年も前に建てられたこのコテージには暖房設備などはもちろんなく、冬になるとボランティアのおじいさんたちは「さあミュージアムへようこそ。」と白い息を吐きながらゲストを迎え入れるのです。

ミュージアムの見どころ

なんと言っても素晴らしいのは、アンティーク品の時計や貴重な製造道具の展示。
腕時計から壁掛け時計まで、部屋中に所狭しと並べられています。光輝くキャビネットにはアンティーク好きにはたまらない品々が飾られて眩しいほど。
懐中時計
ポケットウォッチの複雑さ、その部品の細かさ、迷路のような内部の構造、ボランティアの話に耳を傾けているとただただ興味深いことばかりです。
懐中時計 虫眼鏡 細かな装飾
このような細かな装飾の施された部品などが引き出しいっぱいに入っています。
時計の展示だけでなく、建物自体も歴史的に非常に価値の高いものです。コテージの壁に斜めに走る亀裂は、世界大戦中の爆撃によりできたもの。計り知れない衝撃の大きさを物語っています。
ミュージアムの外壁 文字通り歴史が刻まれているこの場所。

時を刻み、先人たちの想いを繋ぐ。

コベントリーウォッチミュージアムは、この街の歴史を人々に伝えるだけでなく、人々を繋ぐ役割も果たしています。

このミュージアムに飾られているほとんどの時計が寄贈品として集められたものなのですが、その一つ一つの時計には過去の持ち主のストーリーも刻まれています。

先日、有名な英国コベントリーのウォッチ&ダイヤルメーカー「プレイヤー」ファミリーから新しく時計が寄付されたそう。ある父と息子が大事そうに抱えるその時計は、彼らの有名な先祖が何年も前に作ったものなのだそう。

貴重なアンティークの時計は家宝であり、代々子孫に受け継がれるものでそう簡単に手放したりはしないはず。しかし彼らは先祖の輝かしい功績を後世に受け継ぐため、ミュージアムのボランティアに託したのだと言います。

物語の語り手たちの情熱

ミュージアムのボランティアは全員定年を超えた高齢の方々です。コベントリーの時計産業でなく戦争の歴史についてもかなり詳しく、どんなマニアックの質問にも答えることができるもはやプロの語り部。

「たくさんの人に会って歴史について語り合ったり、情報交換をするのが楽しくて全員ボランティアを続けているんだよ。」とおじいさんは言います。

あまりにボランティア活動に捧げる思いが強く、休館日でもこの場所に集まって時計の管理や作業をするおじいさんたち。夏には冷房もなく、冬には暖をとる場所もなく、決して身体にとって心地よい環境とは言えないこの場所に籠ってでも、歴史を守るために尽力する彼らの熱意には心が動かされます。
英国紳士

おじいさんとの約束

現在プロジェクトに携わる人々は、コテージと土地の博物館への転換に取り組んでいます。そのためには主要な修繕作業ができるようにするための多額の資金を確保することが不可欠。

しかし地元の資金が削減されているため、博物館をこのまま保存するための寄付を募っていますが、それだけでは修繕費を賄うことが難しい状況にあります。
ドアの張り替え 古くなって錆びついたドアの取り替え作業、穴の空いてしまった壁の補修作業などは全てボランティアによって行われています。
大学のフォトプロジェクトを通し、時には一緒にティータイムをしたりするほど仲を深めていきました。最初はカメラ越しにおじいさんと対話をしていたのが、いつの間にかカメラを横に置いて語り合う時間が楽しみになっていたほどです。
英国紳士と記念写真
でも心のどこかで、言葉にできないもどかしさがありました。

このミュージアムに足を運ぶたび彼らがいかに苦しい状況で運営しているかを目の当たりにしたからです。

そこでわたしができることは、この場所をより多くの人に知ってもらうこと。

時計製造の歴史においてこのミュージアムがどれほど重要であるか、写真という目に見える記録として残すこと。

大きな歴史と人々の思いが詰まった小さな博物館と、魅力的なボランティアを紹介すること。

その想いをおじいさんに伝えた時の、あの柔らかな笑顔と心のこもった「ありがとう。」の一言は写真に残らずとも心に大切にしまってあります。

コベントリーまで足を伸ばした時は、ぜひ彼に会いに行ってみてください。 きっとあなたとの出会いを楽しみに待っていますよ。
英国紳士
Coventry Watch Museum
営業時間: 火曜・土曜 11時〜15時
住所: Spon St, Coventry CV1 3BA
www.coventrywatchmuseum.co.uk
〜フォトグラフィー作品はこちらのInstagramから〜
写真を通してまるでイギリスに旅行しているかのような感覚をお届けしています。こちらのチェックもぜひ。
(ストーリーからはイギリス大学生の日常が垣間見れるかも?)

それでは、次回もお楽しみに!Have a lovely weekend

Text&Photo by Akane Ban


plofile
伴あかね

伴あかね

現役大学生、フォトグラファー。
日本の高校を卒業後、 19歳の時に単身渡英。カメラを片手に英国と日本を行き来し、ノマドフリーランスのフォトグラファーとして活動している。普段は英国大学で写真を専攻しながら、“ヨーロッパの空気を纏う瞬間”をテーマに日常のワンシーンを切り撮る日々。日本食、イギリス英語、ハリーポッターが大好き。

www.akaneban-creative.com

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