イギリスのサンタは蒸気機関車に乗ってやってくる!? | BRITISH MADE

English Garden Diary イギリスのサンタは蒸気機関車に乗ってやってくる!?

2021.12.16

12月になると毎年書いているような気がしますが、この時期のイギリスは、街中がクリスマスのデコレーションであふれ、誰もがクリスマスを心待ちにし、ウキウキしています。今回はそんな中でも特に子どもはもちろん大人にも大人気のイベントをご紹介します。

それは、昔懐かしい蒸気機関車に乗ってサンタクロースに会うという、エイボン・バレー・レイルウェイによる「サンタ・スペシャルズ」というイベントです。
サンタ・スペシャルズ クリスマス飾りをつけた蒸気機関車は、車体もクリスマスカラーの赤と緑。
もともとミッドランド鉄道(Midland Railway)という鉄道会社が、1869年にイングランド南西部、世界遺産の街バースとマンゴツフィールドというエリアを結ぶ路線を開通したのがエイボン・バレー・レイルウェイの始まりです。以来、この鉄道には150年を超える歴史があります。とはいっても、1960年代の鉄道近代化計画により、イギリス国内では多くの不採算鉄道路線が廃止となり、1966年にはこの路線も旅客サービスが停止。貨物輸送については1971年に停止されてしまいました。

ところがその後、この鉄道を保存したいという熱心な有志が集まり、1974年に保存鉄道としての営業を再開。現在では年間8万人もの人が訪れる人気の場所となっています。
サンタ・スペシャルズ 客車は新型ウィルス対策のため、コンパートメントの車両に。
エイボン・バレー・レイルウェイでは、列車内でのアフタヌーンティーや1940年代の戦中イングランドをテーマにしたものなど、多くのイベントを開催していますが、中でも最も人気なのがクリスマス時期の「サンタ・スペシャルズ」です。

サンタ・スペシャルズでは、クリスマスの飾りつけをした蒸気機関車が、ビトン・ステーション(Bitton Station)とオールドランド・コモン(Oldland Common)の間、約3マイル(約4.8キロメートル)を走ります。機関車が走り出してしばらくすると、どこからともなくサンタクロースが現れ、子どもたちひとりひとりに「今年は良い子にしていたかな?」などと声をかけながら、プレゼントを渡してくれるのです。もちろん、子どもたちは大はしゃぎ。サンタさんに握手をねだったり、一緒に記念写真を撮ったり。中にはクリスマスソングを歌い出す家族もいて(私たちです!)、列車の中は大にぎわいとなります。
サンタ・スペシャルズ サンタクロースには車両内で会えるのと、列車を降りてから写真撮影の時間もある。
エイボン・バレー・レイルウェイのマネージャー、マーク・シモンズさんにお話を伺ったところ、今年のサンタ・スペシャルズは13回開催の予定。毎年このイベントには約1万2000人の参加者がいるそうで、今年も同様の集客を予定しているといいます。

そして、「ここでは年間で総勢150人のボランティアが活動してくれていますが、クリスマスシーズンは約60人が交代でこの特別イベントを盛り上げてくれます。」とマークさん。この保存鉄道の存続については、ボランティアの存在が欠かせないと言います。確かに、プラットフォームで車両案内をしてくれる人も、サンタさんについてプレゼントを運んでくれる人たちも、皆さんボランティアだと言っていました。こうした貴重な保存鉄道、そしてそのイベントがボランティアスタッフの力で成り立っているというのは、なんともイギリスらしい素敵なところです。
サンタ・スペシャルズ サンタ・スペシャルズ乗客全員に、ミンスパイかクリスマスビスケットのプレゼント
さて、鉄道ファンにとって気になるのは、どんな列車に乗ることができるのかということかもしれませんね。エイボン・バレー・レイルウェイには数種類の機関車と車両が保存されています。(種類について、詳しくはこちらを )
マークさんいわく「どの機関車も常にメインテナンスが必要です。そして、機関車も車両もイベント時にコンディションが整っているものを使用するので、お客様がイベント当日、どの列車に乗ることができるかを事前にお知らせすることはできないのです。」とのこと。つまり、サンタ・スペシャルズでどの機関車が登場するかは、その日のお楽しみということになるようです。
サンタ・スペシャルズが出発するビトン駅。© Avon Valley Railway
長年人気を誇ってきたサンタ・スペシャルズ。パンデミックの影響により、客車はコンパートメントのみで、一つのコンパートメントには同じ家族しか乗車できないといったことをはじめ、いくつかの変更を余儀なくされました。また、子どもたちへのプレゼントは、毎年、年齢に合わせ、一人ずつ違ったものを贈っていましたが、ブレクジットの影響でサンタの住むラップランドまで物資の供給が行き届かず、今年はどの子どもにも同じティディベアがプレゼントされることになったそうです。そうしたマイナーチェンジを余儀なくされたとはいえ、サンタ・スペシャルズの人気は変わることなく、今年も発売早々にチケットは売り切れ。蒸気機関車でサンタクロースに会いたいと思った方は、来年のチケット発売を待ちながら、まずは動画で雰囲気を楽しんでみてください。

エイボン・バレー・レイルウェイ(Avon Valley Railway)
住所:Bitton Station, Bath Road, Bitton, Bristol, BS30 6HD
電話番号:+44 117 932 5538
ウェブサイト:https://www.avonvalleyrailway.org

Photo&Text by Mami McGuinness


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マクギネス真美

マクギネス真美

英国在住20年のライフコーチ、ライター。オンラインのコーチングセッションで、人生の転換期にある方が「本当に生きたい人生」を生きることを日本語でサポート。イギリスの暮らし、文化、食べ物などについて書籍、雑誌、ウェブマガジン等への寄稿、ラジオ番組への出演多数。
音声メディアVoicy「英国からの手紙『本当の自分で生きる ~ 明日はもっとやさしく、あたたかく』」にてイギリス情報発信中。

ロンドンで発行の情報誌『ニュースダイジェスト』にてコラム「英国の愛しきギャップを求めて」を連載中。

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