次のイギリス旅行で訪ねたいイングランドの隠れた名所、ウェルズ大聖堂 | BRITISH MADE

English Garden Diary 次のイギリス旅行で訪ねたいイングランドの隠れた名所、ウェルズ大聖堂

2022.02.17

日本に住むイギリス好きの友人たちから「早くまたイギリスに行きたい。」というメッセージが度々送られてきます。日本からイギリスへの渡航は禁止されているわけではありませんが、面倒な手続きなく、自由きままに旅をできるようになるには、まだ少し時間がかかりそうですよね。

友人は「それまでの間は、オンラインでイギリスの景色を見ては気分を盛り上げておく。」と言っていました。読者の皆さんの中にも、同じように、本やオンラインで、次のイギリス旅行で訪ねたい場所をピックアップするのが楽しみ、という方もいるのではないでしょうか。

そんな皆さんに、今日は、次のイギリス旅行でぜひ訪ねてほしい美しい場所をご紹介します。
ウェルズ大聖堂ゴシック様式の威風堂々としたウェルズ大聖堂外観。現在約300体といわれる彫刻は、かつては400あったといわれる。
それは、“隠れた美しい名所(Beautiful Hidden Gems)”という形容がぴったりな、ウェルズ大聖堂(Wells Cathedral)です。

大聖堂があるのは、イングランドのサマセット州、ウェルズ。「Well」は、英語で泉、井戸という意味で、このWellが三つあったことがウェルズ(Wells)という名前の由来とされ、実際にその泉は現在も市内に残っています。ここは、ロンドンから車で約3時間ほど南西の場所あり、人口約11,000人。イングランドに51あるシティ(City)の中では最も小さい都市です。(「シティ」というステータスがどういう条件で与えられるかは明確ではないようですが、主教座聖堂つまり大聖堂がある地区に与えられ、その地位は国王から授与されるものとなっています。)
ウェルズ大聖堂光が差し込んだ大聖堂内は外観にあった威圧感よりは、おだやかな雰囲気。
ウェルズ大聖堂ジェシー窓の手前、クワイヤと呼ばれるエリアの天井は梁のつなぎ目に施された“ボス”と呼ばれる突起の装飾が美しい模様を描いている。
ウェルズ大聖堂について、1970~80年代の発掘研究によると、この建物の最も初期の遺跡はローマ時代後期の霊廟(mausoleum)だったことが発見されています。その後、705 年頃にウェセックス王国のイネ王(King Ine of Wessex)が、領地だったこの場所に教会を作ったことが、この大聖堂の始まりといわれます。

街の中心地から大聖堂に向かって歩き、建物の前に立つと、その雰囲気に圧倒されます。イングランド内では、初めてフランスから取り入れたゴシック様式で建てられた大聖堂。現在の形のものは1175年頃に建設が始まりました。

さまざまな特徴がある大聖堂の中でも、建物の西側は、西洋において最も印象的な(だといわれている)中世彫刻のコレクションのひとつ。地元で産出される石灰岩で作られ、当時は鮮やかな色彩で彩られていたといわれる中世の彫刻が約300体あるそうです(残念ながら全部を数えることはできませんでしたが)。
ウェルズ大聖堂ネイブと呼ばれる大聖堂の中央部分の天井にはペルシャの「生命の樹」をモチーフにした美しい模様が描かれている。宗教改革時代に白い石灰岩で覆われてしまっていたものが、1840年代に再発見されました。
中に入ると、その圧倒される美しさに、天井を見上げたまましばらく立ち尽くしてしまいました。イングランドにある大聖堂の中で、「最も美しいものの 1 つ」で、かつ「最も詩的(ポエティック)」と評される意味は、この建物に足を踏み入れた途端に理解できます。

「生命の樹」と呼ばれる図をモチーフにした、繊細でどこかマジカルな雰囲気が漂う身廊(聖堂入口から主祭壇までの建物中央の部分)の天井の模様や、1335年頃から設置されていたというオルガンなど、どこを見ても“Wow”と声をあげてしまう建物ですが、今回は特に絶対に見ていただきたい3つの見所をご紹介しますね。

1. ジェシー窓(The Jesse Window)

ウェルズ大聖堂 ジェシー窓
1340年頃の制作といわれるこのステンドグラスは、14世紀のステンドグラスとしてはヨーロッパで最も素晴らしい例のひとつだと称されています。図柄は聖書に出てくる「ジェシーの木」が描かれ、それによって、キリストの家系図とともに、祖先であるジェシーがダビデ王の父であることが示されています。

文字を読めない人々に、聖書の内容をわかりやすく伝える役目であったステンドグラス。金、赤、緑、青…差し込む光とともに輝く、中世のガラス職人が制作した鮮やかな情景を見ていると、まるで、自分の立っている場所が現実世界から切り離されたかのような、幻影を見ているような気持ちになります。
ウェルズ大聖堂ジェシー窓のあるレディー・チャペルの天井。
イングランド内の聖堂は、宗教革命によって破壊されたものも多く、中世のステンドグラスがこのように当時の姿をとどめて残っているのは大変貴重です。ただし、中世時代の鮮やかさを現代まで維持するには努力を要します。というのも、結露の影響でカビが塗装を傷つけ、ガラスを腐食させてしまうからです。一時はステンドグラスの維持も難しくなるほどでした。そのため、一般からも寄付を募り、3年をかけた大規模な修復作業が行われました。2014年に現在のような形で再現されたおかげで、600年以上前の人々が見上げたのと同じように、私たちもこの美しいステンドグラスを目にすることができるのです。

2. ウェルズ大聖堂時計(The Wells Cathedral Clock)

ウェルズ大聖堂 時計
イギリス国内のみならず、ヨーロッパ内でも、2番目に古いといわれるウェルズ大聖堂時計は、1390年頃に大聖堂内に設置されました。

24時間を示す時計は、ローマ数字で表され、15分ごとに時計の上部から、馬に乗った騎士が飛び出してくる仕掛時計です。また、よく見ると、地球の周りを太陽が回っていて、当時の人々の天体についての考え方がわかります。

3. シザー・アーチズ(Scissor Arches)

ウェルズ大聖堂 シザー・アーチズ
「シザー・アーチズ=鋏型のアーチ」という名前の通り、鋏のような形をした支柱は大変モダンなデザインに見えますが、これもまた14世紀に作られたものです。

1313年頃に大聖堂の塔を高くした際、塔の西側の支柱が約10cmほど沈んでしまい、建物の石組みに大きな裂け目ができてしまいました。そこで、大聖堂が壊れてしまわないように、橋脚を支えるためにシザー・アーチを支えとして挿入し、重量をより均等に分散させることに成功して、現在までこの巨大な聖堂が壊れずに済んだといわれているそうです。大聖堂の身廊の真ん中にあるこのアーチをくぐり抜けた先に別世界が広がるようにも感じられる、静謐でありながら、力強い、そんな印象を与える場所です。
ウェルズ大聖堂シザー・アーチズの後にあるオルガンは、1335年頃からこの場所に設置されています。まるで天使が羽を広げた姿のよう。
カンタベリー大聖堂をはじめとして、イギリス国内には観光名所として知られる大聖堂がいくつかありますが、ウェルズ大聖堂は日本の方にはまだあまり知られていないかもしれません。公共交通機関を利用する場合には、ロンドンからは電車とバスを乗り継いで3時間ほどかかりますが、中世の人々が見上げたステンドグラスの光の中にたたずむひとときは格別なもの。今度、イギリスを旅するときには、ぜひこの場所も旅程に加えてみてください。
ウェルズ・マーケット・クロス市の中心地には18世紀に作られた「ウェルズ・マーケット・クロス&ファウンテン(Wells Market Cross & Fountain)」があり、この辺りで毎週水曜、土曜にマーケットが開催される。

*ウェルズ大聖堂(Wells Cathedral)
住所:Cathedral Green, Wells, Somerset, BA5 2UE
オープン時間:毎日7~18時
入場料金:無料(できるだけ寄付をするのが好ましい)
ウェブサイト:https://www.wellscathedral.org.uk/

Photo&Text by Mami McGuinness


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マクギネス真美

マクギネス真美

イギリス在住18年のライター、ライフコーチ。東京での雑誌編集を経て渡英。 2004年よりイギリスを拠点に多媒体にて企画、編集、取材、執筆、コーディネイト、撮影を手がける。テーマはライフスタイル、ガーデニング、料理、人物インタビューや旅ガイドなど。メディアを問わず、イギリスの素敵なひと、場所、ものごとをひとりでも多くの方に伝えたいと活動している。『英国ニュースダイジェスト』ではイギリスの食に関するコラム「英国の口福を探して」を5年にわたり連載。イギリス料理についてのセミナー講師をしたり、文化放送、NHKラジオ、TOKYO FM等のラジオ番組に出演も。コーチングにより人生再起動ができた経験を経て、現在はライフコーチとして、人生をより良く生きたい方へのサポートも行っている。

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