最も偉大な英国人が作り上げた世界初の鋼製の蒸気船 SSグレート・ブリテン号 | BRITISH MADE

English Garden Diary 最も偉大な英国人が作り上げた世界初の鋼製の蒸気船 SSグレート・ブリテン号

2022.03.17

みなさんは、イザムバード・キングダム・ブルネルをご存知でしょうか?
日本ではあまり知られていない人物ですが、実はイギリスの歴史において大変重要な存在で、2002年にBBCが実施した「100名の最も偉大な英国人」投票では、ウィンストン・チャーチルに次いで2位にランクインするほどの人気を誇る人物です。

設計技師として、ロンドンとブリストルをつなぐグレート・ウェスタン鉄道の建設に尽力し、美しいガラス天井で知られるロンドンのパディントン駅の設計も手がけたのがブルネル。そのブルネルが作り上げたものの中でも最高傑作のひとつといわれるのが、鋼鉄の蒸気船では初の大西洋横断に成功したSSグレート·ブリテン号です。
SSグレート・ブリテン号ビクトリア時代に建造された場所に帰還したSSグレート·ブリテン号。
実はこれ以前に、ブルネルは当時では世界最大となる全長72mの蒸気船グレート・ウェスタン号を設計していました。この船は木造でしたが、1838年にブリストルからニューヨークまでの大西洋航路横断を果たしました。そして、次にブルネルが手がけたのが鋼鉄の蒸気船SSグレート・ブリテン号だったのです。

現在、このSSグレート・ブリテン号が博物館として一般公開されています。当時のイギリスには世界へ旅立つ玄関口としていくつかの主要港がありました。そのひとつであったイングランド南西部のブリストルが、SSグレート・ブリテン号の故郷。
SSグレート・ブリテン号リバプールなどと並び、ブリストルは当時の英国の主要港のひとつだった。
当時世界最大の客船だったSSグレート・ブリテン号は1843年に進水。1845年には初めてニューヨークへと人々を運びました。全長98メートルに及ぶ巨大客船は、1852~1881年の間、イギリスからオーストラリアへの移民を運ぶのに利用され、その後はフォークランド諸島で倉庫や検疫所の役割を果たす船として使用されるという歴史を経て、1937年にはフォークランド諸島のスパロー湾に放置されたままになっていました。

それが33年後の1970年に、事業家で慈善家でもあったジャック・アーノルド・ヘイワード卿が資金を提供し、生まれ故郷であるブリストルの造船所に戻ってきたのです。

そして、現在ではブリストルの観光アトラクションの中でも一位の人気を誇る施設として、毎年15~17万人の観光客が訪ねています。なんといってもその魅力は、ビクトリア時代の船旅の様子を想像できることです。

では、世界初の鋼製の蒸気船をのぞいてみましょう。
世界初 鋼製 蒸気船 SSグレート・ブリテン号威風堂々とした世界初の鋼製の蒸気船。
SSグレート・ブリテン号 ドライ・ドック船体の鉄が朽ちるのをさけるために、湿度を20%以下に抑えた特別なコンディションで保存されている。「ドライ・ドック」と呼ばれるここは、19世紀に造船されたまったく同じ場所。 SSグレート・ブリテン号 プロペラブルネルが開発したテクノロジーのひとつが、プロペラを使って船を動かすことだった。 SSグレート・ブリテン号 デッキ船のデッキ。 SSグレート・ブリテン号 デッキ客室だけでなく、デッキのスペースもファーストクラスの人々のみが入れるエリアに分けられていた。 SSグレート・ブリテン号 デッキデッキには食料となる動物たちのスペースも。 SSグレート・ブリテン号 船内 ベッド船内のベッド。階級によってデザインやインテリアに違いがある。 SSグレート・ブリテン号 船内 キッチン船内キッチンの様子。船内ではパイ料理やステーキなども供されていたことがうかがえる。 SSグレート・ブリテン号 ファーストクラス ダイニングスペースファーストクラス乗客のためのダイニングスペース。 SSグレート・ブリテン号 医務室の様子医務室の様子も再現されている。
47回に及ぶ航海で、六大陸24カ国を旅した客船内を見て回ると、ビクトリア時代の人々が、この船に乗ってイギリスからニューヨークへ、オーストラリアへと旅立っていったときの気持ちを想像せずにはいられません。行き着く先が見えない航海に出るのは不安もあったかもしれませんが、それ以上に、まだ見ぬ大地を思い、期待に胸を膨らませていたに違いありません。そんなことを考えながら船内をめぐっていると、あっという間に1~2時間が経ってしまいます。

なお、SSグレート・ブリテン号を見た後に見逃せないのが、船に隣接して建てられた「ビーイング・ブルネル博物館」です。この博物館には、SSグレート・ブリテン号以外に世界初の吊り橋クリフトン・サスペンション・ブリッジなど、ブルネルが手がけた多くのプロジェクトに関する資料が展示されているだけでなく、ブルネルの仕事部屋が再現されていて、ブルネルの人物像を垣間見ることができます。
ビーイング・ブルネル博物館 巨大胸像ビーイング・ブルネル博物館内にある巨大な胸像。パディントン駅にもブルネルの銅像が設置されている。
ここで紹介されているブルネルは、革新者であり、リーダーであり、夢に向かって進み続けた人であり、ワーカーホリックであり、芸術家でもあった、たくさんの顔をもつ存在。いくつもの偉大なプロジェクトの裏には多くの失敗や挫折があったことがわかります。でも、あきらめることなく、自分の信念をつらぬいた姿勢が多くの人を魅了したことは間違いありません。

英国の地に現在も残るブルネルのレガシー。ぜひ一度、訪ねてみてください。
クリフトン・サスペンション・ブリッジブルネルの死後、1864年に開通したクリフトン・サスペンション・ブリッジも彼の代表作のひとつ。
*SSグレート・ブリテン(BRUNEL’S SS Great Britain)
ウェブサイト:http://www.ssgreatbritain.org/
住所:Great Western Dockyard, Gas Ferry Road, Bristol BS1 6TY
電話番号:+44 117 926 0680
オープン時間:10~18時(火曜~日曜:冬季は16時30分まで)

Photo&Text by Mami McGuinness


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マクギネス真美

マクギネス真美

イギリス在住18年のライター、ライフコーチ。東京での雑誌編集を経て渡英。 2004年よりイギリスを拠点に多媒体にて企画、編集、取材、執筆、コーディネイト、撮影を手がける。テーマはライフスタイル、ガーデニング、料理、人物インタビューや旅ガイドなど。メディアを問わず、イギリスの素敵なひと、場所、ものごとをひとりでも多くの方に伝えたいと活動している。『英国ニュースダイジェスト』ではイギリスの食に関するコラム「英国の口福を探して」を5年にわたり連載。イギリス料理についてのセミナー講師をしたり、文化放送、NHKラジオ、TOKYO FM等のラジオ番組に出演も。コーチングにより人生再起動ができた経験を経て、現在はライフコーチとして、人生をより良く生きたい方へのサポートも行っている。

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