英国で今いちばん熱い街!︎バーミンガムの魅力を読み解く | BRITISH MADE

Absolutely British 英国で今いちばん熱い街!︎バーミンガムの魅力を読み解く

2022.04.12

エリザベス女王の即位70周年に沸くイギリスは、今年はでっかい当たり年 。このプラチナ・ジュビリーだけでも世界中から大脚光を浴びること間違いなしなのだが、実はそれだけではない。

2022年は「コモンウェルス・ゲームズ」の開催年でもあるのだ。このスポーツの祭典は毎回イギリス連邦(コモンウェルス)を構成する各国の都市が持ち回りでホストするのだが、今年は元宗主国であるイギリスでの開催。注目が集まらないはずがない。

上記2つのビッグ・イベントだけでも「今年のイギリスはちょっとキラキラしてるね」となるわけだが、もう一つ、大規模な文化フェスティバルがこの春から秋にかけて開催される。

フェスティバルの名前は「Unboxed / アンボックスト」。「クリエイティビティとは?」と言う究極の問いに、イギリスが国をあげて広範囲に取り組むと言う壮大な文化企画で、創造性に富む10個の大規模プロジェクトが、全国津々浦々ですでに開催中なのである。このUnboxedについては、また別の機会に書くこともあろうかと思う。

つまり、2022年のイギリスは、この3本柱でバシッと決まっているのだ。

●エリザベス女王の戴冠70周年「プラチナ・ジュビリー」で国をあげて大騒ぎ
https://platinumjubilee.gov.uk

●4年に一度のコモンウェルス・ゲームズ、第22回の開催で華やかにスポーツざんまい(7月28日〜8月8日)
https://www.birmingham2022.com

● 全国各地で繰り広げられる大規模プロジェクトで魅せるクリエイティビティの祭典「Unboxed」(10月まで)
https://unboxed2022.uk


これを書いているだけで熱い歓声が聞こえてきそうである。

ちなみにコモンウェルス・ゲームズの開催地となっている都市は、バーミンガムだ。

バーミンガム!

今回はそのロケーションから「イングランドのへそ」とも呼ばれるロンドンに次ぐ英国第2の都市、バーミンガムの魅力について、ちょっと掘り下げてみようと思う。

実はこの3月、初めてバーミンガムを訪れた。街を一言で表現するなら、「思い思いの街歩きを楽しめる、多面的な文化都市」だろうか。

Birmingham New Street駅 ロンドンからバーミンガムまで電車で2時間。到着するのはこちら、Birmingham New Street駅。美しい!
そこは豊かな水をたたえた運河が張り巡らされ、一貫して水辺の景色を楽しめる美しい街だった。市街地は中世から近代にかけて建てられた歴史的な建築遺産と、すらりとしたモダンなビルが混じり合うユニークな顔を持つ。街ゆく人々を見ていると、住んでいる人の年齢層が若いと感じる。バーには若者があふれ、目貫き通りは行き交う人々で活気に満ちている。主な住人は、春先の寒い中でも薄着で歩きまわる典型的なホワイト・ブリティッシュたちだ。
バーミンガムの通りの様子 バーミンガムの通りの様子
バーミンガムと言えばつい先日、テレビシリーズが完結したBBCの人気ドラマ「ピーキー・ブラインダーズ」の舞台として近年、都市としての株が急上昇中だ。鉄鋼業が盛んだった時代を彷彿させるドラマだが、大気汚染を促した工業煤煙が立ち上る様子から「ブラック・カントリー」とも呼ばれた重工業時代の面影も残る。
バーミンガム ピーキー・ブラインダーズ
今回バーミンガムを初訪問してみて、英国で訪れるべき都市はロンドンやエディンバラだけではないことを思い知らされた。長年住んでいる私でさえ! まさに知られざる英国。

たくさんの見どころがあるバーミンガムだが、今回は私のように初めて訪れる旅人に街の輪郭をお届けしたい。

バーミンガムの楽しみ方!


1. 運河沿いを歩き尽くす

バーミンガムはもともと鉄や石炭が豊富に産出される土地だったことから、イングランドでも優秀な工業都市として発展。産業革命期には鉄鋼業などを中心にイギリス経済を牽引する存在となった。そして、その運搬の要としての運河があったのだ。バーミンガム圏には全長約500キロに渡る豊かな運河網がゆき渡り、ときに細くうねり、ときに広々とした表情を見せながら市民生活を彩っている。運河沿いを歩けば楽しく観光できるほか、街の輪郭を掴むのにはもってこい。ナローボートで遊覧するツアーもあるので、ぜひ試してみてほしい。

カナル・ツアー
https://visitbirmingham.com/things-to-see-and-do/tours-and-sightseeing/by-canal

バーミンガム 運河沿いを歩き尽くす バーミンガム 運河沿いを歩き尽くす バーミンガム 運河沿いを歩き尽くす バーミンガム 運河沿いを歩き尽くす

2. 新旧の建築を味わう

壮麗な古典様式のコンサート・ホールなどが並ぶヴィクトリア広場は、街の中心的なエリアだ。周辺ではちょっとした近世ヨーロッパ気分を味わうことができるだろう。それとは対照的なモダンな広場が、大通りを隔てて西隣にあるセンテナリー広場だ。ここはバーミンガム私立中央図書館が圧巻で必見! なにせヨーロッパで最大の図書館で、幾何学模様を組み合わせたようなキラキラのデザインも秀逸。インテリアも図書館とは思えない独特のデザインなので、必ず中に入って見学してみることをお勧めする。上階の展示室では折に触れて興味深い展示会も開かれているので、のぞいてみると良いだろう。私が訪れた時にはバーミンガムでどのように移民たちが市民権を得ていったのかについて、わかりやすく展示されていた。バーミンガムはインドやパキスタンからの移民が他都市に比べて多く、人口の2割を占めるのでインド料理のクオリティが高いことでも有名だ。
バーミンガム ヴィクトリア広場 ヴィクトリア広場。
センテナリー広場からバーミンガム美術館を望む センテナリー広場からバーミンガム美術館を望む。新旧の対照も見どころ。
バーミンガム私立中央図書館 バーミンガム私立中央図書館。なかなか見ごたえがあります。
バーミンガム私立中央図書館の中 図書館の中! 書物の魔法にかかる場所。

3. 英国トップクラスのインド料理を食べる

食事に迷ったらインド料理を! レスターに次いでインド系移民が多く、インド料理の故郷とも言われるバーミンガムでは鉄則なのだ。無数にあるレストランの中でもオススメは15年に渡って愛されている「Asha’s」。市街地にあるランドマーク的なレストランで、オーナーは有名なインド女優のAshaさん。人気の理由はもちろん受賞歴もある料理の美味しさにもあるのだが、昨年「ミッション・インポッシブル」の撮影でトム・クルーズが当店を訪れ、あまりの美味しさに同じ料理を2皿続けて食べたという話が広まって、そのクオリティがますます輝きを増すことになった。またバーミンガム圏はミシュランの星を持つレストランがロンドンに次いで多いこと(11軒!)でも知られるグルメ都市であることも忘れてはならない。

Asha’s
https://ashasbirmingham.co.uk
Asha’s のロブスターのタンドーリ ロブスターのタンドーリ!
Asha’s のカレー カレー類は一つ一つ丁寧に作られる。

4. グランド・ホテルに泊まる

20年に渡ってクローズしていたバーミンガムのアイコン的ホテル、グランド・ホテルが、昨年5月に5000万ポンドをかけた改装を終えて華々しく再オープン! 今回2泊してみてしみじみ素晴らしいと思ったのは、その格式を感じさせる建築の麗しさ、古典の中ににじむコンテンポラリーな快適さはもちろん、大変センスが良いラウンジの美しさだった。1897年に創業して以来、王族や著名人を数多く泊めてきたというホテルだけに、この空間にいるだけで豪華ホリデー気分を味わえるのが良い。ラウンジの奥にあるボール・ルームではよく結婚式が行われている。

The Grand Hotel Birmingham
https://www.thegrandhotelbirmingham.co.uk
グランド・ホテル・バーミンガム ラウンジのマドレーヌ・バー ラウンジのマドレーヌ・バー。ゴージャス! ここでアフタヌーン・ティーをしたい。
グランド・ホテル・バーミンガム 食事はよく考えられたメニューで、現代的。美味しかったです!

5. テーマを持って歩く(グラフィティ+ジュエリー)

今回の2泊の旅で、個人的にバーミンガム観光として一番楽しんだのが、テーマを決めた街歩きだった。街の北西にジュエリー・クオーターと呼ばれるエリアがあり、そこはさながらバーミンガム版のハットン・ガーデン(ロンドンのジュエリー街)。いや、ハットン・ガーデンよりも広いのかもしれない。貴金属以外にもネイルや美容に関するショップ、ミュージアムなどが並び、昔ながらの風情を漂わせているのがなんとも味がある。またディグベス(Digbeth)は倉庫街風のクールなエリアで、ストリート・アートがいっぱい! バーミンガムで一番クリエイティブなエリアとしても知られている。アプリを見ながらセルフガイドで歩けるので注目のグラフィティを見逃すことはないが、ストリート上のアートはどんどん入れ替わっていくので毎回新鮮な作品に出くわす楽しみもある。

ジュエリー・クオーター
https://www.birmingham-jewellery-quarter.net

グラフィティ
https://visitbirmingham.com/inspire-me/areas/digbeth
バーミンガム ジュエリー・クオーター ジュエリー・クオーターの端っこ。
バーミンガム ストリート・アート バーミンガム ストリート・アート バーミンガム ストリート・アート バーミンガム ストリート・アート 飽きないストリート・アート! ここに載せた作品以外にも無数にありました。エキサイティング。

6. カヤックで運河を探検する

英国の運河はカヤックで探検することも可能! バーミンガムの運河も例外ではない。 おすすめは街の中心部にあるナショナル・トラスト管理の歴史的な建造物をベースにしているThe Roundhouse主宰のカヤック・ツアー。初心者でも楽しめるとっておきのアクティビティだ。ウェットスーツを含めて装備は全てThe Roundhouseが用意してくれる。ライセンスを持ったガイドがカヤックの初歩について簡単に説明した後、いざ出発! 全く異なる目線で街の様子を眺められるのもさることながら、要所要所で運河にまつわるカルチャートークもあって興味が尽きない。またThe Roundhouseそのものもヴィクトリア朝時代の古い蹄鉄型をした元厩舎兼倉庫を再利用したもので、つい最近再オープンしたばかり。街の歴史や文化についての展示室、カフェもあって満喫できる。

The Roundhouse
https://roundhousebirmingham.org.uk

カヤック・ツアー
https://roundhousebirmingham.org.uk/explore-birmingham/
バーミンガム ナショナル・トラスト ラウンドハウス 丸い形をしたラウンドハウス。
バーミンガム カヤック・ツアー 初心者歓迎のツアー!

7. ピーキー・ブラインダーズのロケ地を訪れる

バーミンガムが舞台とはいえ、実は大半がリバプール、そしてマンチェスターなどで撮影されている「ピーキー・ブラインダーズ」だが、バーミンガム郊外のダドリーという街に、ドラマの要となる運河シーンのロケ地である「ブラック・カンントリー・リビング・ミュージアム」がある。バーミンガム中心部から車で30分程度の距離で、電車でもアクセス可能。ミュージアムとはいえ、どちらかというと1930年代の工業の町を再現したテーマパークという表現がぴったりくる作り。この時代の町を生き生きと再現しようという取り組みらしく、ピーキー・ファッションの紳士洋品店あり、フィッシュ&チップス店あり、製鉄の様子を再現している工房あり。この時代のコスチュームに身を包んだスタッフさんが要所要所に配されていて1日ゆっくり楽しめるアトラクションだ。ピーキーの世界にタイムトリップできること請け合い。(ドラマは完結したけど、映画製作の情報があり、そちらも楽しみ!)

Black Country Living Museum
https://bclm.com
バーミンガム ピーキー・ブラインダーズのロケ地 バーミンガム ピーキー・ブラインダーズのロケ地
さて、バーミンガムの魅力、いかがだっただろうか。このほかにもアートに力を入れており、ギャラリー・トレイルなども楽しめるだろう。

バーミンガムは行ってみなければその良さがわからない文化都市の典型だ。他の人の旅の感想を聞くよりも、自分の足で歩き、目で確かめるためにある場所。私の目には、数々の歴史ある壮麗な建築から街に個性を与える運河の風景、そして刹那的なグラフィティが書き殴られた廃墟のような佇まいまで、幾つもの顔がある魅力的な街に映った。都市文化を愛するあなたには、一度は訪れてほしい街だ。


協力:
英国政府観光庁
https://www.visitbritain.com/jp/

バーミンガム観光局:
https://visitbirmingham.com



Photo&Text by Mayu Ekuni


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江國まゆ

江國まゆ

ロンドンを拠点にするライター、編集者。東京の出版社勤務を経て1998年渡英。英系広告代理店にて主に日本語翻訳媒体の編集・コピーライティングに9年携わった後、2009年からフリーランス。趣味の食べ歩きブログが人気となり『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)を出版。2014年にロンドン・イギリス情報を発信するウェブマガジン「あぶそる〜とロンドン」を創刊し、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活について模索する日々。

http://www.absolute-london.co.uk

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