Museumの楽しみ 第5回 中世の騎士と美女に会いに Wallace Collection | BRITISH MADE

London Yarns Museumの楽しみ 第5回 中世の騎士と美女に会いに Wallace Collection

2015.09.23

数年前の大雪の日に、あまりの寒さにとりあえず飛び込んだ美術館があまりにも素晴らしかったので、もう一度じっくり見たいと思い、行ってきました。

数年前の大雪の日に、あまりの寒さにとりあえず飛び込んだ美術館があまりにも素晴らしかったので、もう一度じっくり見たいと思い、行ってきました。
その美術館とは「Wallace Collection (ウォレスコレクション)」です。

Wallace Collectionは第一代ハートフォード伯爵から第四代伯爵と第四代伯爵の息子のリチャード=ウォレス卿が1760年から1880年までに収集した美術品や絵画を、リチャード卿と夫人のロンドンでの住まいだった建物に展示しているというユニークな美術館です。
リチャード卿が亡くなった後、婦人が建物を含め全てを国に寄付し、1900年に美術館として一般公開されました。

外観はそれほど大きく見えないのですが、中に入るといくつもの部屋が並んでいて(25部屋あるそうです)、迷子になってしまいそうです。こんな家での暮らしとはどんなものだったのでしょうね。

 

Wallace Collectionの建物の外観。
各部屋の入り口には、住まいとして使われていた当時の各部屋の用途とその様子の写真が貼ってあります。

見どころはここには書ききれないほどですが、一番の特徴は膨大な数の鎧や武器のコレクションです。ひとつひとつじっくり見ていると1日では足りないほどの鎧や銃、刀などが展示されています。そのそれぞれに手の込んだ装飾が施され、職人技のすごさに思わず見とれてしまいます。実際に戦いで使われたものもあるのだと思うと、少し怖い気もしますが…。

鎧や武器の数々。
近くで見ると美しい装飾が施されているのがわかります。

その他には息をのむほど美しい陶磁器や数えきれないほどの絵画のコレクションが所狭しと展示されています。金箔で飾られた額縁が美しい色の壁紙に映えて、部屋に入るだけで豪華さの波にのまれてしまいそうになります。

豪華な装飾で飾られた陶磁器の数々。
こんな部屋がいくつも続きます。
私が気に入った絵の一部。肖像画や風景画も良いですが、今で言うスナップ写真風な作品に親しみが湧きます。
ソファの真ん中にさりげなく飾られている壺も、実は1700年代製の美術品です。
有名なこの絵、実物は想像よりずっと小さくて、少しびっくり。

もうひとつ、この美術館での私のお勧めは、建物の中庭にあるレストランです。天井はガラス張りで、屋内でありながらも明るく、とても居心地のいい空間です。以前の雪の日は4時ごろだというのにすでに外は真っ暗で、このレストランのろうそくの光がとても美しかったのを覚えています。

中庭のレストラン。時間がゆったり流れそうな空間です。

こんなにたくさんの美しいものを収集したこともそうですが、それを建物ごと寄付してしまうなんて、と、脱帽するととともに、本物に触れる機会を与えてくれたことに感謝したくなりました。

なんとも贅沢な気分で美術館を出て、前から行ってみたかったいくつかのスポットに寄り道をしながら帰りのバス停まで向かうことにしました。
Wallace Collectionからシャーロックホームズで有名なベーカーストリート駅にかけての地域は、Marylebone village(マリルボーンと読んでしまいそうになりますが、イギリス人の発音をカタカナするとマーリボンとなります。イギリスには綴りとは少し違う発音の地名がたくさんあります。)と呼ばれ、素敵なお店やレストランが並んでいます。

最初に訪れたのは、ものすごい数のジャムの瓶が並ぶ小さなカフェ「Paul Rothe & Son」。もともとはドイツのデリだったところで、今は創設者のお孫さんが経営しているそうです。昔ながらの家族経営の香りがそのままの素敵な場所です。

デリ・カフェの外観と店内。

同じ道沿いにあるのが、ビンテージボタンやユニークなボタンを売っている「The Button Queen」です。ビンテージボタンで作ったカフリンクスも売っています。

シンプルな外観ですが、中に入ると…。
壁に貼られた面白いボタンの数々。店の奥にも膨大な数のコレクションが。

そこからもう一軒のお目当ての場所に着くまでに、リボン屋さんを見つけました。お友達からパーティー用の髪飾りを作って欲しいと言われているので、ここにリボンを買いに来ようと思っています。

リボン屋さん。何時間もここで過ごしてしまいそうなので、今日は入らずウィンドウで我慢。

最後のお目当ては、エドワード時代から続く本屋さん「Daunt Books」です。今では支店があちこちにあるのですが、ここにしかないアーチ型のステンドグラスの窓とオークのインテリアは一見の価値ありです。本の品揃えも良く、もともとの得意分野だった旅関連の本は他の書店では見ないほどの充実ぶりです。

Daunt Booksの外観と店内。本屋さんというより古い図書館にいるような気分になります。
旅の本だけではなく、地図の柄の包装紙も充実。ポスターのように壁に飾っても素敵です。

ロンドンの魅力のひとつは、まだまだこういった歴史やストーリーのあるユニークな場所が残っていて、いつもと違う道を歩くだけで新たな発見があることです。

インターネットで何でも手に入る時代ですが、そこへ行かないと感じられない空気を味わう喜びを知っているお客さんと、そんな場所を守り続けている人たちの誇りがこれらのお店の伝統を支えているのだと思います。日々変わっていくロンドンの街ですが、いつまでも残っていて欲しいもののひとつです。



2015.9.23
Text&Photo by Amesbury Kae

plofile
アムスベリー 加恵

アムスベリー加恵

ロンドン留学中にヴィンテージウエアを販売する「Old Hat」ロンドン店でアルバイトをしたことをきっかけに、紳士服に興味を持ち始める。職人の技を身近に見る機会にも恵まれ、英国のクラフツマンシップにも刺激を受ける。カレッジを卒業後、いったん帰国。結婚を機に2012年10月に再渡英、現在ロンドン在住。
夫に作ったニットタイが好評で、夫の友人たちから注文が相次ぎ、2013年11月にオーダーメイドの手編みニットタイを販売する「Bee’s Knees Ties」を立ち上げる。

Bee’s Knees Ties
ロンドンを拠点に、オーダーメイドの手編みのニットタイを制作、販売しています。
色はもちろん、ステッチや結び目の大きさ、長さや太さなど、お客様のお好みをおうかがいお伺いしてから、1本1本、手で編みあげます。素材にもこだわり、大量生産の糸にはない魅力を持つ糸を探し求め、何度も試作を繰り返した後に、品質が良く、ユニークで、長く愛用していただける糸だけを採用しています。手編みならではの親しみやすい風合いが、スーツだけではなく、ニットウエアやツイードにもよく合い、日常の色々なシーンでお使いいただけます。
ロンドンではサヴィル・ロウのテーラー「L G Wilkinson」にてお取り扱いいただいております。
facebook.com/bees.knees.ties

現在、BRITISH MADE青山本店にてオーダーを承っております。また実際にいくつかお手にとって店頭にてご覧頂けます。詳細はお気軽に店頭スタッフまでお訪ね下さい。

アムスベリー加恵さんの
記事一覧はこちら

同じカテゴリの最新記事