BRITISH MADE

BM RECORDS TOKYOへようこそ 再発見、ミック・ジャガーのソロワークス。

2019.11.14

ソロ4作がLPで再発売。稀代のソロボーカリストの軌跡を味わう。

ザ・ローリング・ストーンズのフロントマンといえばミック・ジャガー。12月18日、彼のソロ・アルバム4作品が直輸入仕様国内盤アナログLPレコードで再発売されます。リイシューされるのは『シーズ・ザ・ボス』から、『プリミティヴ・クール』『ワンダーリング・スピリット』、『ゴッデス・イン・ザ・ドアウェイ』です。

『ゴッデス・イン・ザ・ドアウェイ』以外の3枚のアルバムは、かのアビイ・ロード・スタジオのハーフ・スピート・マスタリング・システムによって、アナログ・テープ・トランスファーから新たにリマスターされ、『ゴッデス・イン・ザ・ドアウェイ』はデジタル・オリジナル・マスターからリマスターされているそうです。

そこで今回はこの4枚を駆け足で振り返ってみます。

『シーズ・ザ・ボス』
1985年にリリースされたミックの初のソロアルバムです。
mick jagger
プロデュースはミック自身とビル・ラズウェル、シックのナイル・ロジャースが担当しました。ゲストも、ジェフ・ベック、ザ・フーのピート・タウンゼント、スライ・ダンパー、ハービー・ハンコック、ヤン・ハマーなど豪華でした。バッキング・ボーカルのバーナード・ファウラーとオルガンのチャック・リーヴェルは、のちにストーンズのレコーディングやライブでお馴染みとなります。
この「ジャスト・アナザー・ナイト」当時の時代感もぷんぷんと匂うダンサブルなサウンドです。個人的には終盤のズビズビダンダンというパートが好きです(笑)。メイクといい、パフォーマンスといい、ルックスにまだ中性的な魅力が漂っています。ミックが主演した「ランニン・アウト・オブ・ラック」(監督:ジュリアン・テンプル)の映像が使われています。
この映画、ミックが本人役で出演していて、リオでトラブルに巻き込まれるという。なかなかはちゃめちゃな作品でした。邦題は「ミック・ジャガーのおかしな逃避行」(苦笑)。デニス・ホッパーがチョイ役出演しています。残念ながら現在はソフト化されていないようですが、私は昔、観ました。こうして書いていると、ちょっと観直したくなりました(笑)。
こちらは「ハード・ウーマン」。ネオン調のグラフィックがやはり時代を感じさせます。
そして「ラッキー・イン・ラブ」。途中、ショートカットに60年代ジャケット姿のミックが見られます。

ちなみに本作をリリース後、気をよくしたのか、ミックはデヴィッド・ボウイとデュエットシングルをリリースします。それが名曲「ダンシング・イン・ザ・ストリート」です。
今回のLPリイシューとは関係ないですが、ぜひご覧ください。
タイトル通り、ストリートで腰をブンブン。いやはや二人ともすげえ色気です。

『プリミティヴ・クール』
1987年リリースのセカンドアルバムです。
ミック・ジャガー
ユーリズミックスのデイヴ・スチュワートとキース・ダイアモンドを共同プロデューサーに迎えた本作では、硬軟起伏に富んだ楽曲が出揃いました。ゲストは前作に引き続いてのジェフ・ベックの他、有名どころでは、サイモン・フィリップス、オマー・ハキム、リヴィング・カラーのヴァーノン・リード、デイヴィッド・サンボーンらが参加しています。
この「スローアウェイ」はちょっとストーンズっぽさの残るロックナンバーで、ジェフ・ベックも参加しています。
そして「レッツ・ワーク」です。合成感バリバリの映像と珍妙な演出が笑えるビデオです。でも、いま聴いても良い曲だと思いますし、ああ、本当にミックはストーンズと違うことがしたかったんだなあとよく分かります。

ちなみにリリース後には初のオーストラリアと日本で初のソロツアーを行いました。日本は当時オープンしたばかりの東京ドーム(当時はBIG EGG)で、たしか海外アーティストの来日公演ではこけら落としという名目でした。私も必死にチケットを取って観に行きました。
来日メンバーのジョー・サトリアーニやサイモン・フィリップスの演奏が抜群に上手くて、ストーンズとは随分と違うんだなあと(まだ生では観たことなかったけど)思ったものでした。セットリストは大半がストーンズの曲で、「ブラウン・シュガー」ではティナ・ターナーが登場してステージを盛り上げました。

『ワンダーリング・スピリット』
1993年リリースの3作目です。
ミック・ジャガー
共同プロデューサーにはリック・ルービンを迎え、ゲストにはレッチリのフリーやジム・ケルトナー、ビリー・プレストン、コートニー・パインらが参加しています。またビル・ウィザーズのカバー曲である「ユーズ・ミー」では、レニー・クラヴィッツとデュエットを披露しています。
この「スウィート・シング」のビデオでは、コートニー・パインがサックスを吹いています。このサックスから煙が吹き出す演出、当時、かっこいいなあと鳥肌が立ちました。曲も、ミックのパフォーマンスも彼特有のダンディズムが感じられて好きです。
そして「ドント・テアー・ミー・アップ」。ミドルテンポのバラートです。

「スウィート・シング」や「ユーズ・ミー」、そして畳み掛けるようなテンポで歌われたジェームズ・ブラウンの「シンク」と、良い曲が揃った一枚だと思います。私は彼のアルバムの中で一番好きです。前述の通り、ミックのダンディズムで作られた一枚と言ってもいいのかもしれません。

『ゴッデス・イン・ア・ドアウェイ』
2001年リリースの4作目。2000年代唯一のソロ作。つまりアルバムとしては現時点での最新作です。
ミック・ジャガー
ジャケット写真は、今年2月に惜しくも他界したカール・ラガーフェルドが撮影。共同プロデューサーにはワイクリフ・ジョンやレニークラヴィッツら7人が名を連ね、ゲストもU2のボノ、ピート・タウンゼント、エアロスミスのジョー・ペリーなど豪華でした。
こちらの「ゴッデス・イン・ア・ドアウェイ」は、レニーとのデュエットです。このビデオはロックしていてカッコいいです。

このアルバム、評論家の採点は悪くなかったようなのですが、全体としてはミックらしい色気と派手さがやや欠けていたのか、日英米ではセールス的にもあまり振いませんでした。統一感もやや散漫だったのかもしれませんが、丁寧に作られた佳作が並んでいます。ミックの実直な一面が垣間見られる一枚でもあるような気がします。

今回の4枚の他にも、彼のソロ楽曲は正式ソロデビュー前の楽曲や映画のサントラなどが幾つか存在します。
ちなみにこちらは2004年のジュード・ロウ主演作『アルフィー』のテーマソング「オールド・ハビッツ・ダイ・ハード」です。この曲も私は大好きです。また、2007年には『ヴェリー・ベスト・オブ・ミック・ジャガー』もリリースされています。
ミック・ジャガー
そもそもストーンズとは、ロックンロールスタイルの守護神というか鬼の門番がキース・リチャーズで、時代の流行を取り入れるポップな役回りがミックの担当という図式で構成されていると広く知られています。思えば、キースなんて、ミックがソロを始めた当時は、「裏切り者。あんな浮かれた音楽やりやがって。殺してやる」という勢いでしたが、後から自分もソロを始めて「やってみたらあいつの気持ちもちょっとは分かったかな」なんてころっと変わっていた記憶もあります(苦笑)。

不動のベテランでありながらも、マドンナやプリンス、マイケル・ジャクソンといった面々を、おそらくは常にライバル視していた(いや、いまでもしているのかな?)。この孤高のプライドこそがミック・ジャガーなのですが、ストーンズのファンからはどうもソロが過小評価されがち。まあそれだけストーンズが支持を受けているわけですが、私は長年に渡って「何だかかわいそうだなあ」と思っていました。

ミックは今年、心臓の手術を受けましたが、現在は無事完治して、ストーンズのツアーで76歳とは思えぬパワフルさを見せつけています。ストーンズが今日も現役で第一線を走り続けていられる理由は、ミックのプライドと商魂たくましいアンテナとバランス精神、何よりその天才的なパフォーマンスにこそあると私は思います。こうしてあらためて聴くと良い曲や楽しい曲が多いし、ぜひこの機会に彼のソロ作品を楽しんでみてはいかがでしょうか? ではまた! 

Text by Uchida Masaki


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内田 正樹

内田 正樹

エディター、ライター、ディレクター。雑誌SWITCH編集長を経てフリーランスに。音楽をはじめファッション、映画、演劇ほか様々な分野におけるインタビュー、オフィシャルライティングや、パンフレットや宣伝制作の編集/テキスト/コピーライティングなどに携わる。不定期でテレビ/ラジオ出演や、イベント/web番組のMCも務めている。近年の主な執筆媒体は音楽ナタリー、Yahoo!ニュース特集、共同通信社(文化欄)、SWITCH、サンデー毎日、encoreほか。編著書に『東京事変 チャンネルガイド』、『椎名林檎 音楽家のカルテ』がある。

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