BRITISH MADE

ブリティッシュ“ライク” ヨーロッパ満喫日記 コッツウォルズ篇 2

2019.11.13

我々が宿泊したスワンホテルは、コルン川に面した静かなホテルだ。英国の10月はそれほど寒いと感じることはなかったが、バイブリーで迎える朝は冷え込んだ。ロビーの暖炉で温まってからバイブリーを散歩した。この界隈は1時間もあれば充分に見て回れる広さだ。有名なアーリントンロウは、14世紀に羊毛貯蔵庫として建てられた長屋で、現在も人々が生活を営んでいる。薄明がさし、段々とその姿を現すさまは神秘的で、およそ俗世間からかけ離れた特別な場所のように感じられた。かのウィリアム・モリスもコッツウォルズで一番美しいと称えた場所だ。バイブリーはコッツウォルズで人気が高いエリアだ。我々が村を去る頃には、大型の観光バスが列をなして停車し、次々に観光客が訪れていた。静閑な雰囲気を楽しみたい場合は村に宿泊し、賑わっていない早朝か夕方に訪れることを奨励する。 バイブリーを出発した一行は、昨日の往路をやや戻りボートン=オン=ザ=ウォーターを訪れた。この町は、ウインドラッシュ川に面した水郷で、コッツウォルズのベニスと呼ばれている。人を警戒することなく気ままに水遊びする野鳥を間近に鑑賞することができる。川沿いにはたくさんのカフェやパブが並んでおり、物見遊山にはうってつけの町だ。

この町で一際印象的だったのがコッツウォルドポタリーだ。ジョン&ジュード夫妻が営むこの窯元は、町の中心部から少しはずれた場所にある。バーナード・リーチや濱田庄司らに影響を受けたご主人と、モダンでアーティスティックなご夫人の作品が置かれている。夫婦の作風がまったく異なっているのが興味深い。ショールームで目に留まったのは天目のティーポットだ。無駄な装飾を排したシンプルな形と色合い、何より小ぶりなサイズが気に入った。ハンドルが持ちやすかったことも利点だったので、このティーポットを購入した。ところで、普段英国のレストランやカフェで目にするティーポットは、2〜3人用のサイズが多いように思われる。この1人用のサイズをあまり目にしたことがないので尋ねてみたところ、意外にも英国の家庭ではごく一般的なサイズなようである。
コッツウォルズの川 The Cotswold Pottery The Cotswold Pottery The Cotswold Pottery cotswoldpottery.co.uk
町のパブで簡単な食事を済ませ、いよいよウェールズへと舵を取る。とはいえ、目的地カーディフまでの距離はおよそ80マイル(約130km)。そこで、コッツウォルズ南部にあるテッドベリを休憩場所に選んだ。

テッドベリは、これまで訪れたコッツウォルズの中で最も賑やかな町だ。僕が憧憬の念を抱くチャールズ皇太子殿下の私邸もこの町にある。もしも道端で殿下に謁見する機会があれば、いつでも片膝をついて「Your Highness」とあいさつする準備をしていたが、ついぞそんな機会はなかった。さて、殿下がプロデュースされていらっしゃるハイグローヴには、ガーデニング用品、食品、食器、書籍、服など実に様々な品が並んでいる。店内を見渡していたら興味深い物を見つけた。何やら筒のようなもので、蓋を開けて見ると中に水筒が入っていた。その正体はストラップ付きの水筒のケースだった。無機質なステンレスの塊を生身で持ち運ぶのはあまりにも無粋だと考えたのだろうか。水筒を持ち運ぶためにわざわざケースを作ってしまうとはいかにも英国的ではないか。ケースの内面には別珍が施してあり、表面のツイードとレザーのコンビも気に入った。まさか殿下が企画なされた訳ではなかろうが、「殿下、天晴れでござりまする」と密かに呟いた。これは今回の旅一番の戦利品だ。
ハイグローブ ハイグローブの水筒
テッドベリを後にし、モーターウェイM4をまっすぐ走れば、英国で最も長いセヴァーン川が姿を現す。しとしと降っていた雨はいつのまにかどしゃ降りになっていた。この辺りはちょうどイングランドとウェールズの国境で、プリンス・オブ・ウェールズ橋を越えればいよいよウェールズに入国だ。しかし、入国といっても検問がある訳ではないので往来は自由である。さらに走ること40分、この日の目的地ニューハウスカントリーホテルに到着した時にはすっかり日も暮れていた。

Photo&Text by Shogo Hesaka


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部坂 尚吾

部坂 尚吾

1985年山口県宇部市生まれ、広島県東広島市育ち。松竹京都撮影所、テレビ朝日にて番組制作に携わった後、2011年よりスタイリストとして活動を始める。2015年江東衣裳を設立。映画、CM、雑誌、俳優・タレント・文化人のスタイリングを主に担い、各種媒体の企画、製作、ディレクション、執筆等も行っている。山下達郎と読売ジャイアンツの熱狂的なファン。
江東衣裳
http://www.koto-clothing.com

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