ロンドンのホテル選びの極意 | BRITISH MADE

極私的イギリス紀行 ロンドンのホテル選びの極意

2018.11.28

今月から、英国通の皆様の仲間に入れていただき、旅コラムを書くことになりました旅行ライター&エディターの木谷朋子です。イギリスやイギリス的なものが大好きだった小さい頃から、イギリスとの出会いは今から30年以上前ですが、以来ウン十年以上、取材やプライベートで定期的にイギリスを旅しています。毎回旅人の視点で、イギリスの魅力を伝えていきたいと思います。

じつは、今年5月のブリティッシュメイド 青山本店で開催されたブリティッシュ・コレクターズマーケットで、ライターの川合亮平さんと一緒に『とっておきのロンドンの過ごし方ベスト3』ということで、トークライブをさせていただきました。

初回は、多くの人によく尋ねられる「ロンドンのホテル選び」についてご紹介したいと思います。

ホテル選びは毎回試行錯誤

ユーストン駅。湖水地方やグラスゴーなど、北イングランドやスコットランドへ向かう際によく利用します。
毎回取材予算内で条件の良いホテルを選ぶのに苦労しています。ロンドンのホテルが高いわりに満足度が低いとはよく聞く話ですが、どのエリアのどんな場所にどんなタイプの宿をとるかで、旅の満足度はだいぶ変わってきます。

今までも、ホテルやAirbnb(民泊のマッチングサービス)、大学寮やB&B、YMCAやYWCAなど、ロンドン市内のさまざまな宿泊施設に泊まってきました。取材では、超高級ホテルを見せていただいたり、短期間は泊まったりもしますが、寝に帰るだけの長期の宿泊期間を節約して過ごすには、フラット(アパート)を借りたり、中級程度のホテルに泊まることが多くなります。

ホテル選びにはかなり時間をかけてきており、今までにもサイトで探すこと百数十軒近く。誰もが知る超高級ホテルなら予約は簡単ですが、条件が良くて値段がリーズナブルな場所を探すのは、やはり時間がかかります。でも探せばないことはありませんし、意外なお得物件もあるのがイマドキです。
イビスロンドン・ユーストンステーションホテル。今年に入って予約できなくなり、まさかのクローズ(改修中)?
昨年はユーストン駅近くと決め、徒歩1分のイビスロンドン・ユーストンステーションホテルヘ1週間ほど宿泊。駅へ徒歩1分な上、スーパー2軒、駅構内にお店もたくさんあり、レストランやカフェも充実とあまりにも便利だったので、「今年もここにしよう」と思っていました。

ところが、今年はなぜかどのホテルサイトを検索しても「予約可能な部屋がない」と出てしまい、クローズして改修中?かもしれないと、別のホテルを探し始めました。イビスはチェーンホテルですが、レセプションなしのカジュアルなスタイル。若い世代の人からファミリーまで世代を問わず宿泊しており、1階にはカフェがあり、人との待ち合わせにも来てもらいやすく気に入っていたのですが、ちょっと残念。そうそう、冷蔵庫があれば完璧でした。

ホテル選びの最低条件は5つ

最近の私のホテル選びの条件は、
① エリアを絞る
② 駅から近いこと(徒歩1~3分、遠くても5分以内)
③ ツイン18,000円以内、シングル15,000円以内
④ ホテルサイトで5段階の4.2以上の評価、あるいは10段階の8.5以上の評価であること
⑤ ゾーン3以内

この5つです。この中で一番難しいのは②③で絞ると、ゾーン5~6など、遠いエリア(ヒースロー空港近くやロンドンの東の端)のホテルになりがちなことです。ですので、大事なのはエリア決めの①。まず、自分が行きたい場所、行く場所にアクセスしやすいエリアに絞ります。それから、②③④⑤と絞っていくと、料金の目安がわかってきます。地図でホテルの位置を確認することも忘れずにしてください。

また、ホテルの料金は同じ部屋でも曜日によって違います。ロンドンのホテルは平日が高めで、日曜日が一番安いところが多いです。

③の料金の目安ですが、これはあくまでも目安。円安になればさらに高くなります。円高になれば目安金額を低く設定できるのでは?と思われるかもしれませんが、最近のロンドンのホテルは毎年価格が上昇していますので、高くなることはあっても、安くなるとは言えない状況下にあります。

条件は人それぞれ。人によってシャワーは嫌でバスタブがマスト。冷蔵庫や冷房なども必要な人もいるかと思います。そういった条件を付けていくと、ホテルの値段は相対的に上がります。
ホテルの部屋からの眺め。住宅街の中にあり周囲の環境もよくとても静か。

留学時代に住んでいた懐かしのエリアに投宿

今年は、大型ホテルにせず、50~60室前後の中規模ホテルに泊まってみることにしました。

今回選んだエリアは、北ロンドンのハムステッド周辺。ユーストン&セントパンクラス&キングスクロス駅周辺のホテルも合わせて探しました。

選び方①~⑤に沿ってホテルを絞っていきましたが、最初からエリアをかなり限定したこともあり、該当するホテルは少なめだったため、Airbnbなども見て値段や条件を比較し、最終的に、スイスコテージ駅から徒歩1分のベストウエスタン・スイスコテージホテルを予約しました。

じつは、スイスコテージ周辺は、留学時代に住んでいた懐かしのエリア。駅から1分でも住宅街にあるのでとても静かな環境です。住宅街になじむテラスド・ハウスの建物をホテルにしています。

本当は、値段的にも施設的にもAirbnbの方が割安で、洗濯機やキッチンも付いていて部屋も広くて良かったのですが、移動が多い後半の旅もあるため、ロンドンに戻ってくるまで、スーツケースを何回も預かってもらうためにはホテルがベストでした。口コミ評価が良かったことも決定打となりました。
ベストウエスタンホテル・スイスコテージ。住宅街になじんでいて看板と旗がなければホテルとは気づかないかも。
古い建物ではあるものの、部屋がとても清潔で掃除がきちんとされていることも好印象でした。リフト(エレベーター)が、今では見ることが稀な2人乗りだったのはちょっと驚きでしたが、逆に懐かしかったです。5階建てでリフトは4階まで。5階のときにスーツケースを運ぶ際は、スタッフが手伝ってくれます。

古いホテルや規模が小さいホテルの場合、リフトがあるかないかでも値段が違ってきますので、こちらも要チェックポイントです。

ホテルスタッフに聞いてみたところ、以前ロンドンのこの周辺に住んでいた人が泊まりに来るケースが多いようです。私と同じですね(笑)。

ちょうどリフトで乗り合わせたドイツ人のおじさんに、「なぜこのホテルにしたのですか?」と聞いたところ、「現役中、何年も毎週ロンドンに出張で来ていたのだけど、ロンドンを観光したことはなくてね。センターから少し離れた便利な場所のリーズナブルなホテルを探していたところ、このホテルに行きついたわけさ」と言っておられました。

ボンドストリート駅にも2駅ですし、市内中心部にある同じ値段のホテルよりも広く快適で、バスルームはバスタブ付きがほとんど。朝食も美味しく、これで洗濯機と冷蔵庫があれば完璧なのにと何度も思いました。
連泊したベストウエスタン・スイスコテージホテルの5階。アップグレードされ3人まで泊まれる広さのこちらの部屋になりました。
ホテルの建物裏手の外観。滞在した部屋は一番上のトップフロア。いわゆる屋根裏部屋ですが、窓が大きく日当たりもよく広めの部屋で快適。
古いけれど収納スペースやクローク広め。リモアの特大サイズもラクラク。
一つ気になる方がいるかもしれないので、部屋の音の問題の話をすると、最上階なら音はしませんが、それ以下の階では、上階の人の足音が朝はちょっと気になるかもしれません。ただロンドンの古い建物にはよくあることですので、音が気になる方は、古いホテルを選ばない方がいいでしょう。
こちらはスーペリアルーム。こちらも広めの部屋。古いけれど掃除がきちんとされ綺麗でした。天井は5階より高め。
また、ちょうど私が泊まった時期(6月下旬~7月上旬)は、イギリスに吹き荒れた熱波(Heat Wave)の影響で、連日30℃以上の熱さが続きました。ロンドンのホテルはまだまだ冷房のないホテルが多いですので、古いホテルを選ぶ際には、そういったことも考慮したセレクトが必要です。

今回の私のケースですが、このホテルにも冷房は完備されていませんでした。これはロンドンのホテルではごく普通なことです。部屋には3つしかボタンのない小さな扇風機しかなく、それを最大限まわしても、部屋には熱がこもり、暑くて大変でした。とはいえ例年なら、冷房は不要な時期。事実、私がロンドンを去った後、ロンドンの気温は普通に戻り、涼しくなったのです。
ホテルの朝食は典型的なイングリッシュブレックファスト。朝食付きにしなかったので、滞在中1回だけ使ったのですが、とても美味しくて、もっと利用すればよかったと後悔。
今回は1週間滞在したので、チェックアウトの時には、ホテルにいるスタッフのおじさんともおしゃべりするようになりました。「今度はいつ来るんだい?」と言われたので、「来年また来ますね」とは言ったのですが、仕事柄、いろいろな宿泊施設に泊まってみたいので、また別のホテルに泊まることになるかもしれません。

常連さんが多いことも、そのホテルの自慢の一つになります。こういうホテルを今後もまた地道に探してみたいと思います。

21世紀に蘇ったステーションホテル

最後に、好きなホテルを一つご紹介します。

それは、『ハレ旅ロンドン』(朝日新聞出版)にも掲載しているセントパンクラス・ルネッサンスホテル・ロンドン。19世紀を代表する建築家ジョージ・ギルバート・スコット卿の設計で、ヴィクトリアン・ゴシック(ネオゴシック)建築の傑作といわれている5つ星ホテルです。
セントパンクラス駅。ヴィクトリアン・ゴシック(ネオゴシック)建築の美しい外観で有名。
2011年5月5日にオープンした、まだ比較的新しいホテルですが、もともとセントパンクラス駅構内にあった1873年5月5日開業のミッドランド・グランドホテルが前身です。1868年に開業したセントパンクラス駅構内にあるステーションホテルでしたが、ホテルから鉄道会社の社屋になるなどの紆余曲折を経た後、1985年から20年ほど使われずに放置されていました。
セントパンクラス・ルネッサンスホテル・ロンドンの旧館の階段。宿泊者は見学も可能。
ところが、映画『バットマン』、『ブリジット・ジョーンズの日記』、『ハリーポッターと秘密の部屋』などの撮影に使われたのをきっかけに、その建築的価値が見直されます。さらにユーロスターの発着駅に決まったことで、大規模な改修予算が投入され、ホテルが再建されることになり、往時の姿を取り戻しました。
駅のブッキングオフィスだった場所が現在レストランに
ⒸSt Pancras Renaissance Hotel London
値段は部屋によって差があり、以前の部屋をリノベーションした旧館は高め。モダンでシンプルな新館は比較的お手頃です。2011年の開業以来、若い世代にも人気が高い5つ星ホテルですので、ロンドンの旅の記念にぜひとも泊まってみてください。
駅構内やユーロスターが見えるチェンバーズ・スイート
ⒸSt Pancras Renaissance Hotel London

■ 『ハレ旅ロンドン』の改訂版を3名の方にプレゼント!

木谷朋子さんが編集企画執筆した『ハレ旅ロンドン』の改訂版が11月7日に発売されたのを記念して、 3名様にこちらの本をプレゼントいたします。応募方法は以下の通りとなります。

1. BRITISH MADEのTwitterアカウントをフォロー⇒ https://twitter.com/britishmade_jp
2. 該当ツイートをRT(リツイート)
以上で応募完了です。締め切りは12月9日(日)23時59分。
当選者の方にはDMでお知らせいたします。

『ハレ旅 ロンドン』
[改訂]好評のハレ旅シリーズから「ロンドン」の最新改訂版が登場。ロンドンのグルメやショッピング情報のほか、湖水地方、コッツウォルズ、バースといった人気の郊外情報も充実。最新情報をアップデートしてリニューアル!


Photo&Text by 木谷朋子


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木谷 朋子

木谷 朋子

『留学ジャーナル』の編集者を経て2年間イギリスへ留学。帰国後はさまざまな国の文化や旅をテーマに、幅広い分野で取材・執筆・講演活動を行う。NHK文化センター横浜ランドマーク校で『大人のためのイギリス旅行』講座を通年で開講中。主な編著書:『ハレ旅ロンドン~湖水地方・コッツウォルズ』(朝日新聞出版)、『愛蔵版 パディントンベアの世界』(ジャパンタイムズ)、『I Love ピーターラビット』、『英語で楽しむピーターラビットの世界BOOK1、BOOK2』(ジャパンタイムズ)、『英国で一番美しい風景 湖水地方』(小学館)、『ロンドンと田舎町を訪ねるイギリス』(共著・トラベル・ジャーナル)、『イギリス留学』(三修社)ほか多数。

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